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貧民街には壁しかない。その壁沿いにほったて小屋を建てて、自分の寝床にしている。
家を持たない住民は、同じように自分の寝床を持っていた。
畳二帖ほどの狭い寝床だけど、俺にはこれで十分だ。
背負い袋を枕代わりに、盗まれないようしっかり掴んで眠る。
以前は荷物を盗もうと襲ってくる奴らもいたが、結局一度も盗られたことはない。
力に目覚めてから感覚が鋭くなったようで、敵意を剥き出しで誰かが近づくと、寝ていてもすぐ気づくようになった。
「とりあえずアレがなんなのかは、明日神父に聞くか」
実際にはもう今日だけど……。
「こりゃドレインリングだな」
「装備して誰かに触ると生命力を吸い取れるとか?」
目を覚まして飯を食ってから教会へ。
昨夜の戦利品を神父に預けるついでに、クリスタルイーターからゲットした指輪を見て貰った。
「しっかしクリスタルイーターをぶっ壊すとはなぁ。さすが掘削用ハンマーだぜ」
「な? ハンマー役に立つだろ」
「打撃があまり効果のないモンスターもいるし、なんともなぁ。ちなみにこのリングな、触れた者の生命力を手あたり次第吸収するって訳じゃねえ」
「え、そうなのか……残念だな」
「なぁに言ってやがる。手あたり次第だと、パーティー組んでるときに危ねえだろうが」
あぁ、そうだった。じゃあよかったと言うべきなのか。
「あったあった。リングの内側に、能力を解放するためのキーワードがあんだよ。『ドレイン』そう口にすれば能力発動だ」
「まんまだな。どうやって解除するんだろう?」
「ドレインの特性上、触れている対象の生命力を吸い取るだから、手──この場合にリングだろうが、それを対象から離せば効果が切れるだろう」
「うぅーん……」
生命力──つまり怪我をしていれば回復してくれるってことなんだろうけど。
正直いらねえな。滅多に怪我しねえし、してもゴミポーション何本も使って回復出来る。
「神父。これ売ったらいくらになる?」
「いくらって……マジックアイテムだぞ?」
「だから売る。だって俺、怪我とかしねーし」
「……あぁ、まぁそうだな……さて、いくらになるかねぇ。ギルドに持って行くよりは、買い手を探す方がいいなこりゃ」
探せるのかよ、こんな貧乏地下街で。
「知ってる奴に声掛けてみるわ」
「は? 神父の知り合いとかいんの!?」
「おいおい、俺は超絶イケメン有能神父だぜ? 俺を頼ってわざわざここまで下りてくる冒険者もいるんだ。知り合いのひとりや二人や百人ぐらい、いくらでもいるっての」
「……まぁ、そう言うなら任せるよ。さぁて、んじゃまた行くかな」
頼られているのかは分からないけど、俺が教会《ここ》にいた時にも、良い装備をした冒険者がたまに来ていたな。
なんか神父と談笑なんかしていたし、仲がいい雰囲気ではあった。
あんな人らが買ってくれるといいんだけどなぁ。
そしたら三日後には、
「よっリヴァ。リング売れたぞ」
「は?」
「金貨八枚だぜ」
「マジか!?」
え、クリスタルイーター、美味すぎじゃね?
その日からクリスタルイーターをブッ叩きまくたが、十日経っても一カ月過ぎても出なかった。
【マジックアイテム、滅多に出ない。滅多にっていうか出ないの当たり前】
「はい、『リ』からいってみようか」
「うぃいいぃぃぃーっ」
新月の夜、セシリアがやって来て分かり切ったことを文字にしやがる。
今日はみっちり発音の練習だ。
「いいか。俺の口をよーく見るんだ。リー」
「ぃ……いぃ」
「違う。リ……難しいのかな。じゃあ『ま』はどうだ?」
「ぅ、ん……んま」
「んはいらねえから」
ま行はわりと出やすいようだ。とりあえずそこから攻めていくか。
家を持たない住民は、同じように自分の寝床を持っていた。
畳二帖ほどの狭い寝床だけど、俺にはこれで十分だ。
背負い袋を枕代わりに、盗まれないようしっかり掴んで眠る。
以前は荷物を盗もうと襲ってくる奴らもいたが、結局一度も盗られたことはない。
力に目覚めてから感覚が鋭くなったようで、敵意を剥き出しで誰かが近づくと、寝ていてもすぐ気づくようになった。
「とりあえずアレがなんなのかは、明日神父に聞くか」
実際にはもう今日だけど……。
「こりゃドレインリングだな」
「装備して誰かに触ると生命力を吸い取れるとか?」
目を覚まして飯を食ってから教会へ。
昨夜の戦利品を神父に預けるついでに、クリスタルイーターからゲットした指輪を見て貰った。
「しっかしクリスタルイーターをぶっ壊すとはなぁ。さすが掘削用ハンマーだぜ」
「な? ハンマー役に立つだろ」
「打撃があまり効果のないモンスターもいるし、なんともなぁ。ちなみにこのリングな、触れた者の生命力を手あたり次第吸収するって訳じゃねえ」
「え、そうなのか……残念だな」
「なぁに言ってやがる。手あたり次第だと、パーティー組んでるときに危ねえだろうが」
あぁ、そうだった。じゃあよかったと言うべきなのか。
「あったあった。リングの内側に、能力を解放するためのキーワードがあんだよ。『ドレイン』そう口にすれば能力発動だ」
「まんまだな。どうやって解除するんだろう?」
「ドレインの特性上、触れている対象の生命力を吸い取るだから、手──この場合にリングだろうが、それを対象から離せば効果が切れるだろう」
「うぅーん……」
生命力──つまり怪我をしていれば回復してくれるってことなんだろうけど。
正直いらねえな。滅多に怪我しねえし、してもゴミポーション何本も使って回復出来る。
「神父。これ売ったらいくらになる?」
「いくらって……マジックアイテムだぞ?」
「だから売る。だって俺、怪我とかしねーし」
「……あぁ、まぁそうだな……さて、いくらになるかねぇ。ギルドに持って行くよりは、買い手を探す方がいいなこりゃ」
探せるのかよ、こんな貧乏地下街で。
「知ってる奴に声掛けてみるわ」
「は? 神父の知り合いとかいんの!?」
「おいおい、俺は超絶イケメン有能神父だぜ? 俺を頼ってわざわざここまで下りてくる冒険者もいるんだ。知り合いのひとりや二人や百人ぐらい、いくらでもいるっての」
「……まぁ、そう言うなら任せるよ。さぁて、んじゃまた行くかな」
頼られているのかは分からないけど、俺が教会《ここ》にいた時にも、良い装備をした冒険者がたまに来ていたな。
なんか神父と談笑なんかしていたし、仲がいい雰囲気ではあった。
あんな人らが買ってくれるといいんだけどなぁ。
そしたら三日後には、
「よっリヴァ。リング売れたぞ」
「は?」
「金貨八枚だぜ」
「マジか!?」
え、クリスタルイーター、美味すぎじゃね?
その日からクリスタルイーターをブッ叩きまくたが、十日経っても一カ月過ぎても出なかった。
【マジックアイテム、滅多に出ない。滅多にっていうか出ないの当たり前】
「はい、『リ』からいってみようか」
「うぃいいぃぃぃーっ」
新月の夜、セシリアがやって来て分かり切ったことを文字にしやがる。
今日はみっちり発音の練習だ。
「いいか。俺の口をよーく見るんだ。リー」
「ぃ……いぃ」
「違う。リ……難しいのかな。じゃあ『ま』はどうだ?」
「ぅ、ん……んま」
「んはいらねえから」
ま行はわりと出やすいようだ。とりあえずそこから攻めていくか。
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