異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

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「いいか。絶対にフードを外すなよ」
「ぁい」

 フード付きの外套をセシリアに着せ、俺たちはダンジョンへと向かった。
 こいつはここのダンジョンには入ったことが無いので、向かうのは六階だ──と思ったが、

「なんでお前、俺にぴったりくっついてんだ?」
「う? ここ、ここぉ」

 ここっていうのは魔法陣のことだ。
 いや、別にくっつかなくていいじゃん。

 セシリアは首を傾げ、それから地面に文字を書きだした。

【私魔法陣踏んでない。だからリヴァにくっつく】
「は? くっついたら使えるってのか?」

 と言ったところで、セシリアが「うふぅ」っとニヤける。
 ちっ。まぁたマウント取ろうとしてんな。

【魔法陣使ったことある人にぴったりくっつく】
【魔法陣にちゃんと入っていれば、一緒に使える】
【知らなかった?】

 ドヤ顔だ。
 クソ、知らなかったよ。
 けどそれなら──使える!

「十一階に下りてもいいか?」

 どうせなら魔力を強奪したい。
 彼女が頷くのを見てから魔法陣に乗った。
 セシリアがくっつく。

 こ、こいつ……まだお子様なのに胸が……くっ。

「あい」
「は? 魔石? あぁ、通行料か。悪いな」

 セシリアから受け取った魔石を足元に落とすと、魔法陣がぱぁーっと光った。
 目的地を示せという声が聞こえるので、地下十一階と答える。
 視界が真っ白になって、次には洞窟の中だ。

「ここは草原みたいな構造だ。そういうの知ってるかぁ?」

 意地悪で言ってみたんだが、セシリアはきょとんとした顔で俺を見返す。

「しらな……い?」
「ぁぐっ」

 ふ、ふふ。ふふふふふ。

「なぁーんだ、セシリアぁ。知らなかったのかぁ。そうかそうか、知らなかったんだなぁ」
「いぃぃぃーっ」
「はっはっは。誰だって最初は初めて・・・なんだ。そう恥じることはないって。とりあえず外に出る前に教えておくぞ」

 自分を中心に半径50メートルぐらいの距離にいる奴しか見えないこと。
 それはモンスターも同じ条件だってこと。
 ダンジョン内に洞窟があることを説明して、いざ外へと向かった。

 これで二度目だが、やっぱり不思議だよなぁ。
 明るいのに太陽が無いんだし、じゃあどこに光源があるのかというとさっぱり分からない。

「ぁ。にぅ」
「肉? どこだ──ってあれか!?」

 一目みて分かる。
 豚だ。いや猪? うぅん、やっぱ豚か。
 でも頭に角があったり、尻尾が犬のようにふさふさしているあたり、ただの豚じゃないのは分かる。

 豚までの距離は四十メートル程度。
 鼻をひくひくさせた豚は、すぐに俺たちに気づいた。

『プッギャアァァァッ』

 まだまだ、まだまだ、よぉし。止ま──

 ビュンっと、俺の横を風が抜けた。
 その風が、プギャーっと突進してくる豚をぶった切る。

「ひえっ」
「おぉー!」

 セ、セシリアの魔法なのか!?
 風の魔法が使えるとは聞いたが……一撃で真っ二つってエグくない!?

 豚はそのままどろりと溶けて……何も落とさなかった。

「うえぇぇ」
「まぁそうガッカリするな。ドロップ率は100%じゃないんだからさ」

 洞窟の入口に向かって歩きながら、二匹目の豚が現れた。

「むんっ」

 一時停止を使う間もなく、セシリアが魔法で真っ二つ。
 今度は魔石が落ちた。

「うえぇぇ」
「割と運がないみたいだな。とりあえず中入っていいか? クリスタルイーターからステータスを強奪したいからさ」
「ぁい……」

 石の入口から入ってすぐにクリスタルイーターを発見。
 ステータス強奪で魔力を選択すると、スキルは成功した。

「よし。本日分の強奪終わり」
「え?」
「あぁ、このスキルは一日一回しか使えないんだ。しかも盗み取れるステータスは1だけ」
「……おぉ」

 なんだ、その同情するような目は。塵も積もれば結構になるんだからな。

 再び外に出て暫く狩りまくったが、なかなか肉がドロップしない。
 豚以外のモンスターもいるしな。
 だけど魔石以外のドロップもあって、神父に換金して貰うのが楽しみだ。

「お、なんだありゃ。牛の顔に……鳥?」
「おぉ! にうっ、にうっ」
「おっしゃ! 俺がやるっ。セシリアは何もするなよっ」

 羽根が抜け落ちたような鶏がドタドタと駆けてくる。その頭は牛そのものだ。
 牛肉と鶏肉、どっちがドロップするんだ!?

「止まれえぇ!」

 強奪スキルは使ったので黄色いマークは出ない。
 ハンマーを振り上げ牛の眉間に叩きつけた。
 さすがに一発じゃ死なないよな。

 二発──三発──四発!!

 キィーンっと甲高い音が鳴り、一時停止から再生された鶏牛がどうっと倒れた。

「いよっしっ」

 シューっと音と共に鶏牛がどろりと溶ける。
 それが地面に吸い込まれた後には、何かの塊が落ちていた。

「にうぅー!」
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