異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

文字の大きさ
上 下
12 / 110

6-2

しおりを挟む
「人口が少ないとか?」
「んあ、まぁそうだな。元々子宝に恵まれない種族らしくて、数は少ないんだ。そのくせほら……金持ち連中は珍しい物好きだろ?」
「捕まえて奴隷にってことか」
「そんなところだ。その上三十年ぐらい前だったか、俺様が今のお前ぐらいのピチピチ美少年だった頃だ。とある国の王女様が、有翼人高額で買い取っててな」

 僅か十年ほどで、有翼人の数は激減したらしい。
 なんせ『生死を問わず』という条件だったから。

「俺様は時々思うのよ。この世界でもっとも恐ろしい生き物はドラゴンでも魔王でも邪神でもなく、人間なんだろうなって」

 そう呟く神父に、俺は心の中で同意した。

 もしかするとあの子は、奴隷狩りに遭遇したのかもしれない。
 そして逃げる間に家族とはぐれ、怪我もしたのだろう。
 怪我が原因で飛ぶのもままならず、空気穴から落ちた──ってとこだろうな。

 無事に家族と再会できればいいのだけれど。

 ま、何にしても二度と地下街には来ないだろう。念を押したからな。

「──そう思ったのに、なんでお前はここにいるんだ」
「ぁう……」

 十日ほど経ったある夜に、いつものお気に入りの場所に──

 有翼人の少女がいた。

「俺は言ったよな? ここは悪い大人が多いから来るなって」
「うぐ……ぁ、うぅ」

 もじもじしながら、少女は肩からブラ下げた鞄を俺に差し出した。

「鞄なんか、どうしろってんだ」
「あっ、あっ」

 鞄を指差して、開けろと言っているようだった。
 何が入ってんだ……まぁ開けろと言うなら開けてやるけど。

 巾着絞りになった鞄を開けると、そこには見たことのない──いや、前世では見たことのある物が!

「リ、リンゴ!? これ、リンゴか?」
「あぃっ」

 それだけじゃない。他にもブドウや茸と言った、秋の味覚っぽいものが鞄一杯に入っていた。

 見覚えがあっても、転生してこっち、見慣れたとは決して言えない物ばかりだ。むしろこの世界に来て一度も見たことないモノばかりとも言える。

 ごくり──。

 自然と唾が出て喉が鳴った。
 少女がリンゴを手に取って、俺に差し出す。

「く、食っていいのか?」
「ん」

 今度は鞄を押し当ててきた。
 つまりこれ全部──

「俺にくれるってこと?」
「ん」

 満面の笑みを浮かべて頷く。

「怪我の手当てをしてやったお礼ってことか」
「ぁい」

 もう一度微笑んだ。

「リンゴなんて十何年ぶり……いや、生まれて初めてだ」
「んん?」
「気にすんなって。ありがとうな。でも──」

 鞄の中の物を受け取って、俺の背負い袋へと押し込む。

「前にも言ったけど、ここは危険な場所だから二度と来るなって言っただろ? お前の事、少し聞いた。有翼人って言うんだろ?」
「……ぁい」
「なおさら悪い人間に見つかったらマズいじゃねえか。お礼はこれだけでいい。だから本当の本当にここへは来るな。な?」

 暫く俯いていた彼女だったが、最後には小さく頷いて──それから翼を広げて舞い上がった。

「気を付けて帰れよ」

 その言葉には返事をせず、彼女は一気に上昇して前回同様空気穴の直前で翼を消し、上に出てからまた翼を広げた。

「器用な飛び方をするもんだ」

 そんな風に思って……それから一カ月後。

「だから……なんでお前はまたここに来てんだ!?」
「ひうっ」

 俺のお気に入りの場所には、またあの有翼人の少女が来ていた。

 
しおりを挟む
感想 4

あなたにおすすめの小説

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

転生者は力を隠して荷役をしていたが、勇者パーティーに裏切られて生贄にされる。

克全
ファンタジー
第6回カクヨムWeb小説コンテスト中間選考通過作 「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門日間ランキング51位 2020年11月4日「カクヨム」異世界ファンタジー部門週間ランキング52位

少し冷めた村人少年の冒険記

mizuno sei
ファンタジー
 辺境の村に生まれた少年トーマ。実は日本でシステムエンジニアとして働き、過労死した三十前の男の生まれ変わりだった。  トーマの家は貧しい農家で、神から授かった能力も、村の人たちからは「はずれギフト」とさげすまれるわけの分からないものだった。  優しい家族のために、自分の食い扶持を減らそうと家を出る決心をしたトーマは、唯一無二の相棒、「心の声」である〈ナビ〉とともに、未知の世界へと旅立つのであった。

荷物持ちだけど最強です、空間魔法でラクラク発明

まったりー
ファンタジー
主人公はダンジョンに向かう冒険者の荷物を持つポーターと言う職業、その職業に必須の収納魔法を持っていないことで悲惨な毎日を過ごしていました。 そんなある時仕事中に前世の記憶がよみがえり、ステータスを確認するとユニークスキルを持っていました。 その中に前世で好きだったゲームに似た空間魔法があり街づくりを始めます、そしてそこから人生が思わぬ方向に変わります。

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

無能と呼ばれたレベル0の転生者は、効果がチートだったスキル限界突破の力で最強を目指す

紅月シン
ファンタジー
 七歳の誕生日を迎えたその日に、レオン・ハーヴェイの全ては一変することになった。  才能限界0。  それが、その日レオンという少年に下されたその身の価値であった。  レベルが存在するその世界で、才能限界とはレベルの成長限界を意味する。  つまりは、レベルが0のまま一生変わらない――未来永劫一般人であることが確定してしまったのだ。  だがそんなことは、レオンにはどうでもいいことでもあった。  その結果として実家の公爵家を追放されたことも。  同日に前世の記憶を思い出したことも。  一つの出会いに比べれば、全ては些事に過ぎなかったからだ。  その出会いの果てに誓いを立てた少年は、その世界で役立たずとされているものに目を付ける。  スキル。  そして、自らのスキルである限界突破。  やがてそのスキルの意味を理解した時、少年は誓いを果たすため、世界最強を目指すことを決意するのであった。 ※小説家になろう様にも投稿しています

生活魔法は万能です

浜柔
ファンタジー
 生活魔法は万能だ。何でもできる。だけど何にもできない。  それは何も特別なものではないから。人が歩いたり走ったりしても誰も不思議に思わないだろう。そんな魔法。  ――そしてそんな魔法が人より少し上手く使えるだけのぼくは今日、旅に出る。

知識スキルで異世界らいふ

チョッキリ
ファンタジー
他の異世界の神様のやらかしで死んだ俺は、その神様の紹介で別の異世界に転生する事になった。地球の神様からもらった知識スキルを駆使して、異世界ライフ

処理中です...