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「あの穴だ。外に出られるか?」
「ん」
翌朝になって少女が目を覚ますと、俺の膝枕で眠っている状況に多少は混乱したようだった。
あれからいろいろと考えたが、状況的に考えてあまりいい想像は出来ない。
軽傷とは言えないような怪我をし、家族という言葉に過剰なまでに反応する。
誰かに追われ、家族とはぐれた──が一番しっくりくるだろう。
このままひとりで返して、無事に家族と合流できるだろうか。
心配だが、だからといって地下街《ここ》には置いておけない。むしろここの方が別の意味で危険だろう。
この子は綺麗な子だ。
子供とはいえ、ここには平気で慰み者にするような大人も少なくはない。
「もう地下街なんかに落ちてくるなよ。ここにはロクでもない人間がわんさかいるんだ。そういう奴に見つかっていたら、今頃お前は……」
「ぁ……うぐっ」
「まぁとにかく、二度と落ちるんじゃないぞ。さ、もう行け」
少女はもじもじとしたあと、小さく頷いて羽ばたいた。
ふわりと風が舞う。
そういや地下街だと風も吹かないし……なんだか新鮮だな。
「気を付けて帰るんだぞ。悪い人間に見つかるなよ」
「ぁい」
ふわりと浮かぶと、彼女はペコリとお辞儀をして──それから一気に天井へと舞い上がった。
空気穴は直径二メートルもない。翼を広げたままでは当然、脱出することは出来ないだろう。
「翼をたため!」
そう叫んだが、彼女は違う方法を取った。
物凄い勢いで上昇したかと思うと、今度は突然翼が消えた。
だが上昇する勢いは失われず、彼女の体はそのまま弾丸のように穴の向こう側へと飛んだ。
見上げる俺の目には、再び翼を広げた彼女の姿が小さく映る。
「出し入れ自由か。便利だなぁ」
なんて言う種族だろう。
神父にそれとなく聞いてみるかな。
大空を舞う彼女は何度か旋回し、やがて飛び去った。
「エルフやドワーフの他の亜人だぁ?」
「そ、そう。他にはどんな亜人がいるのかなぁっと思って」
干し肉を手土産に教会へとやって来た俺は、さっそく神父にそれとなーく訊ねてみた。
「獣人族」
「あー、うん。この町にもいるし、知ってる」
「ハーフエルフ」
「エルフとそう変わんない」
「わがままな奴だなぁ」
なんでわがままなんだよ。
「他に亜人なぁ……あぁ、レアなところで有翼人だな」
有翼……それだ!
レアってことは、希少種なんだろうか。
「ん」
翌朝になって少女が目を覚ますと、俺の膝枕で眠っている状況に多少は混乱したようだった。
あれからいろいろと考えたが、状況的に考えてあまりいい想像は出来ない。
軽傷とは言えないような怪我をし、家族という言葉に過剰なまでに反応する。
誰かに追われ、家族とはぐれた──が一番しっくりくるだろう。
このままひとりで返して、無事に家族と合流できるだろうか。
心配だが、だからといって地下街《ここ》には置いておけない。むしろここの方が別の意味で危険だろう。
この子は綺麗な子だ。
子供とはいえ、ここには平気で慰み者にするような大人も少なくはない。
「もう地下街なんかに落ちてくるなよ。ここにはロクでもない人間がわんさかいるんだ。そういう奴に見つかっていたら、今頃お前は……」
「ぁ……うぐっ」
「まぁとにかく、二度と落ちるんじゃないぞ。さ、もう行け」
少女はもじもじとしたあと、小さく頷いて羽ばたいた。
ふわりと風が舞う。
そういや地下街だと風も吹かないし……なんだか新鮮だな。
「気を付けて帰るんだぞ。悪い人間に見つかるなよ」
「ぁい」
ふわりと浮かぶと、彼女はペコリとお辞儀をして──それから一気に天井へと舞い上がった。
空気穴は直径二メートルもない。翼を広げたままでは当然、脱出することは出来ないだろう。
「翼をたため!」
そう叫んだが、彼女は違う方法を取った。
物凄い勢いで上昇したかと思うと、今度は突然翼が消えた。
だが上昇する勢いは失われず、彼女の体はそのまま弾丸のように穴の向こう側へと飛んだ。
見上げる俺の目には、再び翼を広げた彼女の姿が小さく映る。
「出し入れ自由か。便利だなぁ」
なんて言う種族だろう。
神父にそれとなく聞いてみるかな。
大空を舞う彼女は何度か旋回し、やがて飛び去った。
「エルフやドワーフの他の亜人だぁ?」
「そ、そう。他にはどんな亜人がいるのかなぁっと思って」
干し肉を手土産に教会へとやって来た俺は、さっそく神父にそれとなーく訊ねてみた。
「獣人族」
「あー、うん。この町にもいるし、知ってる」
「ハーフエルフ」
「エルフとそう変わんない」
「わがままな奴だなぁ」
なんでわがままなんだよ。
「他に亜人なぁ……あぁ、レアなところで有翼人だな」
有翼……それだ!
レアってことは、希少種なんだろうか。
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