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 半年ほどすると地下七階まで自力で下りれるようになった。
 一度下りてしまえば次からは転送装置が使える。この装置は魔法陣を踏んだ者しか使えないが、一度踏めば以後は自由に行き来できる転移魔法陣だ。
 神父の話だと、十階まではタダで使えるが、そこから下は魔法陣を発動させるのにお金が必要とのこと。
 
 七階に下りれるようになったらさっそくスキルの強奪だ。
 だが二カ月もしないうちにスキルが失敗するようになった。

 強奪スキルの事も神父に話し相談すると、

「六階でモンスターぶっ殺している間に、自然にお前のステータスが上昇したんだろう。そもそも冒険者ってのはそうやってステータスを上げてきたんだからな。当たり前っちゃー当たり前なんだよ」
「そっか……でも今の自分のステータスが全然分かんないもんなぁ」
「お、分かるぜ。魔術師の魔法にな、モンスター情報っつーのがあってな。モンスター限定なんだが、ステータスを見ることが出来る魔法なんだ」

 ダンジョンの上層階に生息するモンスターのステータスは、だいたい把握されている。
 強奪できなくなったってことは、七階に生息するモンスターのステータスと同じになったってこと。
 五種類のモンスターが生息しているので、それぞれのステータスの一番高いのを見ればいい。

「今のお前のステータスは、筋力127、体力134、敏捷112、魔力75だろう」
「魔力が低いなぁ」
「それはしゃーねえだろう。けど次の階層には魔法を使ってくるモンスターがいる。そいつは100あるから頑張れや」

 それでも今の他三つより低いじゃん。
 まぁ魔力が高くても魔法が使えないんじゃ意味ねえんだけどさ。

 ステータスは分かった。ここからは八階を目指してハンマーでぶん殴りだ。
 今回は神父が地図をくれて、八階にたどり着くのに一カ月も掛からなかった。
 強奪スキルをどのモンスターの、どのステータスに使っても失敗するようになるのに三カ月とちょっと。

 同じように繰り返して地下十階に到着した時には、俺の年齢は十四になっていた。

「これでステータスは筋力192、体力201、敏捷177、魔力129か」

 十階から下のモンスターは、一部でステータスが把握されていない。
 ここから先は正確な数値を出せないかもなぁ。

 狩りから戻って来た俺は、いつものお気に入りの場所へとやって来た。
 天井には少し大きな空気穴がある。この穴は地上まで繋がっていて、少しだけ空を見ることが出来た。

 三年半前のスタンピードで、近くの壁と床が崩落。
 新しい階層に繋がっているんじゃないかとか、モンスターが這い出てくるんじゃないかとか噂されてて、誰もここには近づかない。
 静かに考え事をするには最適な場所だ。

「今日は星が見えそうだ」

 天井を見上げて満天の星空を期待する。
 月が見えると一番いいんだが、あいにく空気穴の上を月が通過することはないみたいだ。
 だけど星は見える。

 あれ? 見えな……いな。
 今日は曇っているのか。

 そう思っていると、 

「う……ぐぅ……」

 声がした。
 その声は天井から聞こえてくる。もっと詳しく言えば空気穴からだ。

「は?」

 首を傾げて天井を見上げていると、カラんっと音がして小石が落ちてきた。

「あぶなっ」

 思わず大きな声を上げると、「ひゃうっ」という小さな悲鳴が上がって、次の瞬間──

「はあぁーっ!? なんで女の子が降ってくるんだよ!?」

 お、親方なんてどこにもいないんだぞ。それなのに女の子が降ってくるのかよ!?
 慌てて手を広げたが、女の子なんてキャッチ出来るのか?
 むしろ下敷きになって死ぬんじゃ──

 そんなことが脳裏に浮かんだがもう遅い。
 空気穴から落ちてきた女の子は──だがしかし、俺に衝突する寸前で……翼を、広げた。
 
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