異世界転生はどん底人生の始まり~一時停止とステータス強奪で快適な人生を掴み取る!

夢・風魔

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 強奪スキルの検証を始めて一週間。
 このスキルは一日一回しか使えないことが判明した。

 更に一カ月──このスキルが失敗する条件が分かった。

[対象の筋力が術者の筋力を下回っているため、強奪に失敗しました]

 相手のステータスが俺より高くないと、強奪は出来ないらしい。
 しかも失敗も一日一回にカウントされ、この日は強奪スキルの使用が出来なかった。

 翌日、同じ相手に今度は『体力』の強奪を試みる。
 これは成功した。

 つまりステータス単位で成功判定があるんだな。
 しばたくは体力一本に絞って、失敗するようになったら敏捷の強奪、それから魔力だ。

 そうして三カ月も過ぎると、全ステータスの強奪が失敗するようになってしまった。
 平均すれば一つあたり30ぐらい増えたことになるはず。
 元々のステータスがどのくらいだったか分からないから、なんとも言えないなぁ。

 困ったときは生臭坊主だ。
 物心ついてから九歳になる頃まで、俺もあそこにいた。
 前世の記憶が蘇る前の俺は、ここでの食い扶持を減らすために自分から教会を出て行ったんだ。
 時々戻って来ては怪我を治して貰ったり、休んだりはしていたけどな。

「おーい、なま──神父」
「あぁ? わざわざ言い直しやがったなクソガキ」

 神父の癖に口が悪い。
 だけど俺が頼れる大人はこの人しかいないし、実際物知りなんで助かっている。

 知りたいのはこの世界の一般人の平均ステータスだ。
 冒険者はあれこれ突出しすぎていて当てにならない。

「神父。ステータスの平均値ってあるのか? こう……一般人の平均とかさ」
「まぁたステータスか。知ってどうするんだ? 冒険者カードや教会の鑑定水晶で見る訳でもないだろうに」
「鑑定水晶!? そ、そんなのあるのかよっ」
「でっけー教会にはない。もちろんここには──」

 小さい教会だしある訳ないか。

「あーあー、期待しねぇ。で、平均的な数値ってあるの?」
「まぁ……はぁ……この俺様が教えてやろう! なんせベテラン冒険者だからな」
「元だろ」
「だいたい魔力以外は40前後ぐらいだ。魔力は20ぐらいだな。お前ぐらいのガキで50以上あれば、将来魔術師になれる可能性もあるってぐらいだぞ」

 魔力は他のステータスより低いのが当たり前なのか。

「神父のステータスってどんくらいだっけ?」
「俺様かー? ふっふっふ、見たいんだな。輝かしい俺様のステータスを!」

 神父はポージングを決めて懐からカードを取り出すと、指先をガリっと噛んで血を滴らせた。
 カードは血によって反応するらしい。

 血のついたカードには、神父のステータスが浮かんだ。

 筋力:98 体力:397 敏捷:139 魔力:2018

「は? なんだよこのめちゃくちゃなステータス。魔力四桁って……。それ以外も一般人の平均を軽く超えてんだけど」
「ふっふっふ。まぁそれぐらいないと、冒険者なんかやってらんねえよ」

 普通に生きていく分には、さっき言った魔力以外は40前後、魔力も20ぐらいで不自由なく暮らせる。
 それ以上を必要としないなら、わざわざ体を鍛えたりはしない。

 ──と神父は言う。
 だけど一般人であっても、重い物を運ぶ仕事をしている人の筋力や体力はもう少し高い。
 足が速い──と言われる人も、普通よりは敏捷が高かったりする。
 これも神父の話だ。

「じゃあ……ゴロツキどもとかも?」
「んぁー、そうだなぁ。奴らも他の連中よりかは、少し高いだろうなぁ。ま、俺様程じゃあねーけどな」
「はいはい。ありがとうな、神父」

 話を聞いて教会を出た。
 一般人の平均が40前後……俺は子供だから半分だと仮定して……筋力、体力、敏捷は50前後ぐらいまで上がった……のかな?
 強奪していた相手がゴロツキばかりだし、他より少し数値が高いかもとしたらそんなもんだろう。

 ──長生きしろよ坊主。

 そう言われたんだ。絶対長生きして見せる。
 そうだな、差しあがって目標は──

「前世と今の年齢を合わせた二倍!!」

 えぇっと、前世が二十三歳で事故死して、今が十歳。
 合計三十三歳だな。
 その二倍ってことで──六十六歳。

 うん、ささやかな目標だな。
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