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セファイルの言い分。

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 現状、このテーブルには、
 ――セファイルからは、『国王』と『第一王女サーナ』と『ソロウ侯』が、
 ――フーマーからは、『第二使徒のケイレーン』と『第七使徒コーレン』と『第九使徒ミハルド』が、
 ――『ミルス王国』と『セア聖国』と、現在序列二位である大国『トーン共和国』からも、それぞれ、トップ三名の計18名……が集まっている。


 リーンは、自分の席に腰をかけると、まず、

「ワシの呼びかけに応えて頂き、感謝する」

 まずフーマーの使徒たちに頭を下げてから、
 次いで、他国のトップたちにも礼儀を示す。

 ゆっくりと頭をあげてから、

「皆さま方の時間を奪う気はない。前置きは抜きにして、さっそく緊急特別会をはじめたいと思う。ことの始まりは――」

 そこで、リーンは、勇者が魔王城にカチコミをかけてきたという事実を、たんたんと並べていく。

 サリエリが暴行を受けたこと。
 リーンが勇者と一騎打ちをしたこと。
 結果的に、ラムドが追い返した事。
 その際に、ラムドが損傷を受け、その結果として若返ったこと。

 ラムドの変化に、各国から『少しばかりの驚きの声』が上がったが、すぐに、『ラムドならば、何が起きても不思議ではない』という結論に落ち着いた。

 事実を全て聞き終えたフーマーの第二使徒ケイレーンが、

「ふむ。状況は理解した」

 非常に簡素な口調でそう言った。
 フーマーは、戦争に介入しない。
 それはすなわち、他国家の揉め事には干渉しないという事。

 フーマーの役目は、こうして、『場所』をつくるのみ。
 最低限度のラインを定め、それを超えてはいけませんよと睨みをきかせるのみ。
 あとは、それぞれ好きにやれ。
 その結果としてどうなるか、それを見てから、最終的な意見を述べる。

 それが常にフーマーが保つ立ち位置。
 カル大帝国との戦争でもそうだった。
 戦争には一切参加せず、全てが終わった後にチョロっと出てきて、大帝国の利権等を理不尽に奪取・分配し、勝手に魔王国を序列五位にした。

 『はい、戦争はここまでね。というわけで、帝国の負けぇ。連合のみなさん、おめでとー。帝国の今後は、こっち(フーマー)でどうにかしておくから、君らは休んでていいよー。ああ、いいの、いいの。面倒はこっちで片付けておくから。あん? こっちでやるっつってんじゃん。それとも、なに? ウチ(フーマー)のやることに、なにか文句でも? ない? あーよかった。じゃあ、そういうことで。あ、あと、魔王国は、この闘いでめっちゃ貢献していたから、これからの序列は五位ね』

 そんなムチャクチャな事を言われても、誰も文句は言えない。
 自由が許されるだけの『力』を持つから。
 そして、なんだかんだ、文句はあるけれど、フーマーという警察・裁判所がいてくれた方が、事実、もろもろありがたいから。
 敗戦した帝国の後処理で、次の戦争(帝国の解体方法、その利権の奪い合い)が始まるのは目に見えていた。
 フーマーが出てきて『政治』をしてくれたから、次の戦争は起こらずにすんだ。
 主戦派の連中は、『ふざけんな、クソハイエナ野郎、いつかぶっころしてやる』と憤っていたが、穏健派は、『フーマーが出てきてくれて良かった』と胸をなでおろした。

 もし、フーマーがいなければ、世界は、『終わりの見えないルール無用の戦国時代』の中で人類が滅亡するまで、無意味な血を流し続けなければいけない。
 その最悪が理解できないほど愚かな国はない。

「それで? 魔王国側の要求は?」

「ワシは、セファイルに事情を説明してもらいたいと思っている。なぜ、勇者が、あのようなマネをしたのか」

「ふむ。では、セファイル側の言い分を聞こうか」

 皆の視線がセファイル側の席にあつまる。

 すると、第二王女のサーナがスっと立ちあがり、

「……その前に、我が国が誇る勇者ハルス・レイアード・セファイルメトスのその後についてをお聞かせいただきたい」

「ラムドが追い返したと言ったはずだが?」

 リーンの言葉に対して、

「勇者は死んでいる」

「……は?」

「追い返した、などと言っているが、実際は殺したのだろう?」

「……なにを……」

「しらじらしい。私は勇者の生死が分かる。勇者は間違いなく死んでいる。我が国の最大戦力を、よくも殺してくれたわね」

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