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ひゃっほい

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「……詳細はともかく、だいたいは理解したわ。それで? 聞かせてもらいたいのだけれど、お前は本気で、私のコマとして――ラムドとして、働く気があるの?」

「そのつもりですが? そこにも、何か問題が?」

「特に縛りもない自由召喚されただけの者が、いきなり部下になると言ってきたのよ。疑いの目を向けない方がおかしいでしょう。ラムドならば、性格が理解できていたからコントロールするのは難しくなかった。だから、迷わず使う事ができた。けれど、お前はラムドではない」

 UV1は上の調査力を信頼している。
 ゆえに、『ラムドとはこういうリッチだ』『こうすれば操れる』という、上から与えられた報告書を信じていた。
 そして、実際、接触してみた感じ、『間違いなくそういう存在だ』と確信が持てた。

 これならば、間違いなくコントロールできるという自信があった。
 だが、現状、わけのわからない事故が起きて、こんな事になっている。

 つまりは、結局、コントロールできなかったという話だが、
 しかし、それは事故でしかないとUV1は判断する。

 なんでもかんでも一緒くたにして『制御不可能』という烙印を押していては、仕事など出来やしない。
 前に進むためには、マイナス的な意味ではない『妥協』が必要になる。
 わざわざ言うまでもない至極当然の話だが、人を使う仕事で、その人となりを百%理解していなければいけない訳ではない。

 ようするに、『ここまでは可能』という目安が必要なのだ。

 そういう意味で、UV1は、今の『彼』をあまりにもよく知らない。
 どう判断すべきか難しい。
 だが、なんでもかんでも上に御伺をたてればいいわけではない。
 UV1は、お人形さんではないのだ。


 ――そんなUV1の懸念が正確に理解できた訳ではないが、
 ゴートも、上と下を持つ社会人として生きてきた経験を持っている。

 ゆえに、

「言いたい事はわかりましたよ。じゃあ、こう言いましょうか。どうやら、ラムドが俺の中にいるせいか、召喚というものに対して、俺も、特別な感情を抱いていましてね。ぶっちゃけ、今も、すげぇ召喚がしたいんですよ。ここでなら、その欲求を存分に満たせる。だから、その代わり、そちらさんの仕事を手伝おうと言っている訳です。ギブアンドテイクでウィンウィン。合理的でしょう?」

「……」

「それに……」

「それに、なに?」

「せっかくの異世界転移……異世界転生かな? それを存分に楽しみたいんですよ。簡単に言うと、純粋に参加してみたくなりましてね。新しい神様を決める聖戦に、とりあえずは、あなたのコマとして。そんなの、なかなか経験できない体験だ。少なくとも、ただ黙々と害虫駆除をしていただけの『お巡りさん時代』よりは遥かに充実した日々をすごせるでしょう」


 ゴートは、理路整然と志望動機を語った。
 それが、UV1の中に、一定の目安を作らせた。

 それは、ようするに、『ラムド・セノワール』にしか出来ないミッションを、ゴートに任せるか否かの指標。

 だから、UV1は、『次』を思考する。
 ゴートを『ラムド・セノワール』として使う事に対する問題点。

「……今のお前は、先ほどまでのラムドと、見た目がかなり変わっているわ。面影はあるけれど、別人だと思う人の方が多いでしょう。その問題はどうするつもり?」

「特殊な若返り薬でも召喚したと言っておきますよ。リーンとサリエリは、俺――ラムドの事を、『使い勝手の悪いドラ○もん』のように思っているフシがありますからねぇ。とりあえず、困ったら『召喚の結果だ』と言っておきますよ。それだけでも、面倒を回避するのは難しくないでしょう。幸い、ラムドの記憶は、ほぼ完璧にありますので、齟齬や行き違いもおきないでしょうし」

「……」

「ああ、ちなみに、一つよろしいですか?」

「なに?」

「俺――ラムドの記憶が、途中で消えているんですが、これは、このタイミングで、あなた方に誘拐されたと考えていいのですか? それとも、単純に、俺と合体した事による弊害的な何かでしょうか?」

「ああ、その件については、たぶん……」

 そこで、UV1は、ふところから一枚の魔カードをとりだして、

「これで、色々と記憶を補完できるそうよ。まあ、もしかしたら、お前が心配しているように、弊害が生じていて、補間出来ない個所もあるかもしれないけれど」

「……用意がいいですねぇ」

 言いながら、ゴートは、魔カードを破った。

 すると、頭の中に、


「……へぇ……ふんふん……勇者がカチコミかけてきた時に、召喚術式を試していた俺ラムドを誘拐した後は……ゼノリカの『誰か』が、ラムドに化けて、勇者を撃退し、魔王国は、ことなきをえたと……ふむふむ……なるほど、で、ここから先は俺の役目ってことね。その時、召喚したのはスリーピースカースソルジャー。性能は……はは、流石、『ゼノリカの構成員』が召喚した化け物。この世界で最強の勇者を一蹴とは、かなり、ぶっちぎっている。ふんふん。よし、OK。完全に把握しましたよっと」

 言いながら、心の中で、

(最高に面白い状況だ……次世代の神様を決める聖戦。魔王国の宰相と、勇者の因縁。世界の裏を支配している、『本物の神』が複数在籍している超巨大宗教団体ゼノリカ。ふふ……ははは。クソみたいだった俺の人生が……ようやく輝きだした。流石に、大声でヒャッホイと叫べるほど若くはないが……しかし……)

 そうつぶやいて、

 ボソっと、

「……ひゃっほい」

 誰にも聞こえないくらいの声でそう言って、右手をグっとにぎりしめた。

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