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神を決める聖戦
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「当たり前。表のカスどもにバレるほど、ゼノリカは愚かではない」
「ふむふむ」
「光栄に思いなさい、ラムド・セノワール。どうやら、ゼノリカの上層部は、お前をかなり高く評価しているようよ」
「……上層部? しているよう? UV1様がトップではないのか?」
「私は、どちらかと言えば下の方ね」
(……これだけの力を持っていながら、下の方? アホか。ならば、上の方はどうなっとるというんじゃ……)
ラムドは、渋い顔をして、
(まあ、謙遜じゃろうな。ただ、完全な嘘でもなさそうじゃ。立場だけなら、自分よりも上の者がいる――おそらくは、そういう意味じゃろう。わしも、リーンを殺そうと思えば殺せるが、様々な事情があって、リーンの下についておった。別に、強さだけが上に立つ条件ではない)
『破滅の暴君』を目指すのであれば、武力だけでも最上階に立てるが、
意味のある支配と統治をも目的とするならば、武力だけでは足りない。
(ゼノリカ……世界の裏……秘密結社……おそらく、というか、確実に、フーマーの最上層部門じゃな……前々から、あの国は『なにか、ヤバいモノを抱えておる』と思っておったが……まさか、これほどのバケモノを抱えた組織だったとは……流石に、これほどのバケモノが『他に何人も』はおらんじゃろうが……二人か三人はおるかもしれんと思っておいた方が、のちのち、驚かされずにすむじゃろうな)
「今、ゼノリカでは、神を目指している三つの勢力が、限りある神の席を競い合っている。その聖戦のコマとして、私はお前を選んだ」
(ふむ。三つのう……どうやら、それなりに想像通りだったようじゃな。しかし、神々の闘いに巻き込まれるとは……なかなか厄介じゃのう)
とは思ったものの、すぐに、
(しかし、おそらく、わしは当たりの『神候補』を引いておる……他の二つの勢力がどのようなものか知らんが、流石に、この女より強いという事はあるまい。この女――ウルトラバイオレット001の強さは異常……)
「まあ、こんなところかしら。他に何か聞きたい事はある? 答えられる範囲で答えてあげるけれど?」
「ふむ……では、一応、確認がてら。その三つの勢力の中で、最も強い存在、神に最も近い御方は、やはり、新たなる我が主、UV1様で?」
「正面きっての殴り合いでどっちが強いかという話をすれば、三大勢力の一つである『楽連』の筆頭、『長強』の方が上ね」
「……む」
「まあ、なんでもありなら、私が勝つけれど」
(なるほど……その『長強』とやらは、戦士タイプ……で、おそらく、この女は魔法タイプ……)
正解は暗殺者タイプ。
「……三つ目の勢力『沙良想衆』の面々は、強さという点では大した事がない……だが、彼らの役目は武にあらず。彼らは行政担当。我らが法の手足とするなら、彼らは統治という概念そのものの中枢」
(百済と楽連は武官で、その沙良想衆とやらは文官か……ふむふむ……形態が見えてきたのう……)
「実際のところ、誰が『最も近い』かと言えば……まあ、私が最も近いという自負があるけれど……」
(やはり、のう。というか、そりゃそうじゃろう)
「ただ、これからはじまる聖戦の結果次第では、とび越えられる可能性もあるわ……お前の失態で、もし、私が神になれないという事態が起きたら……どうなるか、覚悟しておきなさい」
その発言を受けたラムドは、ピタっと手を止めて、
それまでとは少し質の違う冷めた目で、UV1を見て、
「わし程度がおこす失態で失脚するなら、それは、それだけの器でしかなかったということ。そもそも、神になどなれなかったというだけの話じゃな」
などという、意外な切り返しをしてきたラムドに、UV1はわずかに鼻白む。
「神を目指すなら『責任は全部とるから、失敗を恐れるな』くらい言ってほしいですなぁ。かつての上司、リーン・サクリファイス・ゾーンは、大きな戦争の前は、いつも、『何があろうと、責任は自分がとる』『だから、失敗をおそれるな』と叫んでおりましたぞ。責任などとれもせんくせに、失敗されたら困るくせに……ひひひひひ」
「ふむふむ」
「光栄に思いなさい、ラムド・セノワール。どうやら、ゼノリカの上層部は、お前をかなり高く評価しているようよ」
「……上層部? しているよう? UV1様がトップではないのか?」
「私は、どちらかと言えば下の方ね」
(……これだけの力を持っていながら、下の方? アホか。ならば、上の方はどうなっとるというんじゃ……)
ラムドは、渋い顔をして、
(まあ、謙遜じゃろうな。ただ、完全な嘘でもなさそうじゃ。立場だけなら、自分よりも上の者がいる――おそらくは、そういう意味じゃろう。わしも、リーンを殺そうと思えば殺せるが、様々な事情があって、リーンの下についておった。別に、強さだけが上に立つ条件ではない)
『破滅の暴君』を目指すのであれば、武力だけでも最上階に立てるが、
意味のある支配と統治をも目的とするならば、武力だけでは足りない。
(ゼノリカ……世界の裏……秘密結社……おそらく、というか、確実に、フーマーの最上層部門じゃな……前々から、あの国は『なにか、ヤバいモノを抱えておる』と思っておったが……まさか、これほどのバケモノを抱えた組織だったとは……流石に、これほどのバケモノが『他に何人も』はおらんじゃろうが……二人か三人はおるかもしれんと思っておいた方が、のちのち、驚かされずにすむじゃろうな)
「今、ゼノリカでは、神を目指している三つの勢力が、限りある神の席を競い合っている。その聖戦のコマとして、私はお前を選んだ」
(ふむ。三つのう……どうやら、それなりに想像通りだったようじゃな。しかし、神々の闘いに巻き込まれるとは……なかなか厄介じゃのう)
とは思ったものの、すぐに、
(しかし、おそらく、わしは当たりの『神候補』を引いておる……他の二つの勢力がどのようなものか知らんが、流石に、この女より強いという事はあるまい。この女――ウルトラバイオレット001の強さは異常……)
「まあ、こんなところかしら。他に何か聞きたい事はある? 答えられる範囲で答えてあげるけれど?」
「ふむ……では、一応、確認がてら。その三つの勢力の中で、最も強い存在、神に最も近い御方は、やはり、新たなる我が主、UV1様で?」
「正面きっての殴り合いでどっちが強いかという話をすれば、三大勢力の一つである『楽連』の筆頭、『長強』の方が上ね」
「……む」
「まあ、なんでもありなら、私が勝つけれど」
(なるほど……その『長強』とやらは、戦士タイプ……で、おそらく、この女は魔法タイプ……)
正解は暗殺者タイプ。
「……三つ目の勢力『沙良想衆』の面々は、強さという点では大した事がない……だが、彼らの役目は武にあらず。彼らは行政担当。我らが法の手足とするなら、彼らは統治という概念そのものの中枢」
(百済と楽連は武官で、その沙良想衆とやらは文官か……ふむふむ……形態が見えてきたのう……)
「実際のところ、誰が『最も近い』かと言えば……まあ、私が最も近いという自負があるけれど……」
(やはり、のう。というか、そりゃそうじゃろう)
「ただ、これからはじまる聖戦の結果次第では、とび越えられる可能性もあるわ……お前の失態で、もし、私が神になれないという事態が起きたら……どうなるか、覚悟しておきなさい」
その発言を受けたラムドは、ピタっと手を止めて、
それまでとは少し質の違う冷めた目で、UV1を見て、
「わし程度がおこす失態で失脚するなら、それは、それだけの器でしかなかったということ。そもそも、神になどなれなかったというだけの話じゃな」
などという、意外な切り返しをしてきたラムドに、UV1はわずかに鼻白む。
「神を目指すなら『責任は全部とるから、失敗を恐れるな』くらい言ってほしいですなぁ。かつての上司、リーン・サクリファイス・ゾーンは、大きな戦争の前は、いつも、『何があろうと、責任は自分がとる』『だから、失敗をおそれるな』と叫んでおりましたぞ。責任などとれもせんくせに、失敗されたら困るくせに……ひひひひひ」
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