上 下
204 / 380

酒神終理

しおりを挟む
「――と、まあ、こんなところだな。諸々、詳しい事は、順次、分かり次第、伝えていく」




 アダムから、今後についての諸々を聞かされた三至天帝は、




「秩序を乱さず、表を維持したまま、世界の裏を牛耳るとなると……かなりの処理能力がもとめられますね」

「総轄責任者の選別が重要じゃのう」

「誰にやらすの? 私は、バロールを押すわ」

「九華は副官において、一番上は、五聖命王から選んだほうが良いのではないか?」

「そうですね。後々まで見据えた場合、なかなか面倒な仕事になりそうですし」

「じゃあ……やっぱり『朝日』? あ、でも、こられないんだっけ? じゃあ、誰がいいかしら。『銃崎じゅうざき』?」

「……『異守こともり』の方がよいのではないか? 下の受けが最もよい」

「人気があるだけじゃダメでしょ。やっぱり、『銃崎』じゃない?」

「んー、銃崎には、いろいろとやってもらいたい事があるので、できれば、監督役には、他の誰かを置いてもらいたいのですが」

「じゃあ……『才藤さいとう』は? ちょっとヒネているけど、能力は確かよ」

「能力の高さで言えば、誰も劣ってはおらんじゃろう。というわけで、やはり、余は異守がいいと思うわけじゃが」

「随分と押すわね。男って、ほんと異守みたいなの好きよね」

「諸々が円滑に進むと思っただけなのに、まさかペド(ロリコン)あつかいされるとはのう。予想だにしておらんかった」

「幼女趣味呼ばわりを覚悟で言わせてもらえれば、ボクも、異守がいいのではないかと思いますけどね。ミシャさん、下のウケって大事ですよ?」

「んー……まあ、いいわよ。別に、異守がダメって訳じゃないし、才藤だと、問題ゼロのオールオッケーって訳でもないしね。というか、ぶっちゃけ、『アレ』でさえなければ、他の誰でもいいわ」

「そうですね。ボクも、『アレ』でさえなければ誰でも構いません」

「ふぁっふぁ。そんな事をいいだしたら、余も、『アレ』でさえなければ別に――」




 互いに顔を見合わせて、

 誰に『下のまとめ役』を任せようかという話し合いをしていた――その時、

 扉が、バーンっと開いて、
















「おまたせしまちたぁ!」
















 ボリューム満点の煌く金髪。キラッキラの鬼メイク。全身からアホを放出している、非常に頭が悪そうなキャバスーツの女(二十前後)が、ニタニタ笑いながら、謎のステップを踏みつつ近づいてくる。

 デカめのヘッドホンを首にかけており、

 左手の薬指には、質素なリングをはめている。




 そのハデな女は、ドカっと、イスではなく、円卓に腰をかけると、優雅に、そのスラリと長い足をくむ。

 超ミニスカのプリーツスーツ。ドンと開いた胸元にはキレッキレの谷間。

 この神聖な場にはまったく相応しくない、その美女は、




「おまちかね、みんなのヒロイン、究極超美少女にして全知全能を地でいく無敵の女神! おそらく、たぶん、五聖なんとかの一人、酒神終理、ただいま参上でちゅ! オイちゃんの輝きの前に平伏す許可を与えまちゅ。足はなめちゃダメでちゅよ? オイちゃんの足を舐めていいのは『お兄セン』だけでちゅから」




 などとイカれた事をほざいている酒神の背後から、一人の、シックなパンツスーツに身を包んだ知的な大人の雰囲気を醸し出している美女が、




「毎度のことながら、愚妹の非礼、まことに申し訳ございません」




 コメカミに怒りマークを浮かべながら、酒神を睨みつつ、三至天帝に向けて頭を下げた。




 ゆっくりと頭を上げてから、




「三至天帝の御三方は、おひさしぶりでございます」




 そう言ってから、アダムに視線を向けて、




「はじめまして。私は、五聖命王が一人、銃崎心理と申します」




 名乗りを受けて、アダムは、




「この上なく尊き主の側仕え『アダム』だ」




 サクっと自己紹介をしてから、




「答えろ。今日の会議に、五聖命王は呼ばれていないはず。なぜ、主の命に背いて、この場にきた?」




 ピリピリとしたオーラを発しながらそう尋ねた。




 すると、酒神が、




「お兄にいが言ったのは、『こなくてもいい』でちゅよね? だったら来てもいいって事でちゅよね? 命に背いたって事にはなりまちぇんよ」




「……貴様が酒神終理か……主上様から話は聞いている……どうやら、聞いていた以上に狂っているようだな」




「いやぁ、そんなに褒められると、テレちゃいまちゅねぇ」




 などとぬかす酒神を、アダムはジっとみつめ、










「……一応、確認しておこうか……私を前にしても、まだ、その口調を続けるのか?」










 グゥっと強めのオーラを出してそう問いかける。







 すると、酒神は、キョトン顔で、







「ん? 何か問題があるんでちゅかね? あれ? なんか怒っていまちゅか? んー、なんででちょう。オイちゃん、バカだから、ちょっとよくわかりまちぇん」




 のほほんとそう言ってから、ニィっと微笑みを強めて、アダムの目をジっと見つめ、




「しかし、お嬢ちゃん、御見事な強さでちゅねぇ。確か、名前はアダムちゃんでちたっけ? いやぁ、素晴らしいでちゅねぇ。アダムちゃん、かっこいいっ! ぱちぱちぃ」




 ニィっと笑いながらそんな事を言う酒神。




 アダムは、ギリっと奥歯をかみしめて、




「……ずいぶんと長く生きてきたが……赤子扱いされたのははじめてだな……」
















 赤ちゃん言葉は、赤子が使う言葉ではない。










 べろべろばぁ、かわいいでちゅねぇ










 ――赤ちゃんに対して使う言葉。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~

k33
ファンタジー
初めての小説です..! ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?

なぜハーレム勇者の俺がえっちな目に遭わされるんだ

たけきのこの山里
ファンタジー
女3 男1 のハーレムパーティのリーダー勇者。パラダイスな冒険の旅が始まるかと思いきや、なぜかえっちな目に遭うのは自分ばかり?CFNMや羞恥要素高めの一話完結、ちょいエロコメディです。

最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
 病弱な僕は病院で息を引き取った  お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった  そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した  魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る

異世界あるある 転生物語  たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?

よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する! 土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。 自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。 『あ、やべ!』 そして・・・・ 【あれ?ここは何処だ?】 気が付けば真っ白な世界。 気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ? ・・・・ ・・・ ・・ ・ 【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】 こうして剛史は新た生を異世界で受けた。 そして何も思い出す事なく10歳に。 そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。 スキルによって一生が決まるからだ。 最低1、最高でも10。平均すると概ね5。 そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。 しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。 そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。 追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。 だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。 『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』 不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。 そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。 その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。 前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。 但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。 転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。 これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな? 何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが? 俺は農家の4男だぞ?

NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~

ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。 城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。 速人は気づく。 この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ! この世界の攻略法を俺は知っている! そして自分のステータスを見て気づく。 そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ! こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。 一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。 そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。 順調に強くなっていく中速人は気づく。 俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。 更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。 強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。 『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』 カクヨムとアルファポリス同時掲載。

異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!

夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ) 安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると めちゃめちゃ強かった! 気軽に読めるので、暇つぶしに是非! 涙あり、笑いあり シリアスなおとぼけ冒険譚! 異世界ラブ冒険ファンタジー!

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました

初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。 ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。 冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。 のんびり書いていきたいと思います。 よければ感想等お願いします。

処理中です...