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異世界大戦編 後編

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本当は苦しくてたまらなかった。

 それでも笑ってみせた。

 全部演技だ。







 世界を守るヒーローなんていう、そんなクソしんどい面倒を!

 やりたくてやっていたと思うか!

 守りたいと思えるやつらのために、必死に頑張ってきただけだ!







 守りたいと思ったんだ!

 理屈なんかねぇ!

 絶対に死なせたくねぇ大勢のために!

 ヒーローになるしかなかった!




 どんな時でも不敵に笑ってみせたのは、

 そうするしかなかったからだ!

 そこに、本物なんて一ミリもねぇ!







 ほんとは、ずっと、逃げ出したかった。

 布団の奥にもぐりこんで、ブルブルと震えていたかった。

 『知った事じゃない』と投げだして、さっさと自殺でもして、

 戦争なんかしていない『他の世界』に転生して楽しくやろう。

 ――何度そう思っただろう。










 けれど、










『俺はここにいる!! 心配するな! 俺が連れていってやる! この戦争の向こう! この絶望の果て! バッドエンドをリアルだと思いこむ、その勘違いごと殺してやる! 『輝く明日』を想える『本物の今日』へ辿り着いてやる!』




 センは、投げなかった。

 詐欺師の仮面をかぶり続けて、

 中身のない大嘘を吐き続けた。




『だから……だから、もう少し……あと、ほんの少しでいい! もう、闘えとはいわない! もうお前らは充分闘った! だが、命令だ! 見届けろ! 俺が、まだ、ここに立っているという事! それだけは見届けろ!』




 血に濡れて、悪意に穢されて、押しつぶされそうになりながら、

 けれど、いつだって、なんとか、ギリギリのところで、必死に歯を食いしばって、

 バラバラになった魂のカケラを必死につなぎ合わせて、




『お前たちの先頭には、いつだって、必ず、俺がいる! 安心しろ! このバカは、絶対に折れない! 必ず、お前らの前に道をつくってやる! 俺は、本当の最後まで、お前たちの道標で在り続けると誓う! だから! もう、他は何もしなくていいから! 前を見る事だけはやめるな! 目をそらすな! 絶対に、俺の背中から目を離すんじゃねぇえええ!!』










 奇跡なんて起こらなかった。

 ただ、『必然』が在っただけ。




 闘い続け、闘い続け、闘い続け、

 闘い続け、闘い続け、闘い続け、




 受け取った『命のたすき』を、血で汚しながら、闇で穢しながら、

 腐った骸むくろで埋まる焼け野原で、

 独り、

 多くの想いを背負って、

 絶望と踊りながら、

 冷たい嘘に重たい嘘を重ねて、

 山ほどの業を飲み込んで、










 だから!




 センは、ついに、限界という壁を超えた。
















『見える! くだらねぇ檻(限界)の向こう! 俺は! ついに――』
















 自力で、存在値999の壁を超え、一気に階段を駆け上がったセンは、










『全部、背負ってやるよ。なにもかも全部。全ての絶望、希望、想い、願い、命、心、全部。俺はセンエース。お前たち全員の王だ』










 ――その神をも超えた力をもって、クソみたいな戦争を終結させた――




 ――絶対なる王の誕生は、『消えない希望』となり、

 存在そのものが、『見失ってしまっていた落とし所』となったのだ――







 『血の流し方』を忘れてからも、もちろん、山ほど問題は起きた。

 結局のところは、暴力で抑えつけただけ。

 ゆえに――




 独裁者の誕生。

 暴君の暴力による独裁のための支配体系。

 ディストピアの完成。




 心ない雑言の中で、




 『好きにほざけ。ただし覚悟しておけよ? 俺は全部と向き合うぞ。お前ら全部を背負うと決めた時から、何もかも全部を、完璧に遂行すいこうすると心に決めた。さあ、詠おう。詠おうじゃないか。覚悟の意味を教えてやる』




 センは『合理』を叫び続けた。

 その命の全てを、真なる世界平和のために費やした。




 セン一人では厳しかった。

 いくら神を超えた力を手にしたといっても、一人では、きっと不可能だった。

 だが、センは、










『師よ、ボクも、ここにいます。あなたは、一人ではない。

         もう二度と、あなたを独りにはさせない』










 一人ではなかった。

 全ての想いが繋がって、

 平和を実現するための『器』が出来た。

 まだ、名前はなかった。

 ただ、覚悟を決めた者達が集まっただけの器。




 センの意志ではなかった。

 ただ、




 その『器』が、センの『背中』を追い続けた者たちが、

 センの意志を『成立』させるためにつくり上げた組織であった事は事実。







 大英雄センエースという核を有するイデオロギー。

 どれほどの絶望を前にしても、最後の最後まで平和を謳い続けると誓ったイデア。







 のちに、センによって銘打たれる『その器』の名は、




 ゼノリカ。













 ――それは、まぎれもなく、

      『全てを包み込む光』だったんだ――




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