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意識の欠片

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 ちなみに、『リラ』とは、喝采や称賛など、神を讃える全てが含まれた言葉。




 // 実は、これも、センが、面白がって『ちょっと言ってみただけ』の、元々は特に意味のない言葉。

 軽い冗談のつもりだったが、もはや、冗談ではすまなくなった黒歴史の一つ。

 ちなみに、『リラ・リラ・ゼノリカ』は、翻訳すると

 『ああ、美しき、神の光。主よ、その御側に近づきたく存じます。叶わぬ夢と知りながら、しかし、常に、心血の魄が欲してしまうのです。ああ、神よ。この上なく美しい神よ。全てを照らす、その希望に触れたく存じます。もし、その威光に触れる事ができたなら、どれだけ――』

 と、この先もまだまだ続く、クソ長い聖歌であり、

 かつ、世界中(第2~第9)に様々な翻訳方法がある格式高い讃美歌。

 後々、センは、『リラという言葉が、そんな事になっている』と聞いた時、

 顔をサーっと青くして、

 『えぇ、この一行に、そんな長い意味をつけたの? 何してくれてんだよ。てか、これ、内容……きっつぅ……』

 と心底から嘆いたが、

 今では

 『もう、いいや、どうでも』という領域に至っている //

























 ――全員で、完璧に揃って、神前に跪拝きはいした直後の事。







 キィィンと、空間が研ぎ澄まされていくかのような、

 すべての『曇り』を削っていくかのような、鋭い音が響いた。

 窓からそそぐ光の質が少しだけ変化する。










 ――空気が平伏した。










 全員の心にビリリとした緊張が走る。

 特に『何か』をされた訳ではない。




 魔法などいらない。




 ただ、流るる。

 まるで『それこそが摂理である』と心の芯が認識しているかの如く、

 自身の内側から、『想い』が溢れ出てくる。
















 ――カツン――
















 足音が響いた。




 天上のリズム。
















 顕現したのは、強大な力を持つアバターラ。
















 『究極神の化身』は、地に降りると、一歩だけ前に歩を進め、

 用意された小さな太陽に体を預けた。







 その場にいる全員の全身に、強烈な緊張が走った。

 ビシリ……ビシ、リ……という、不定形の、名状しがたい、背中を這いまわっているような感情の暴走。

 冷たい汗だけが、全身を流れていく。







 アバターラは、頭を下げている皆を見渡すと、




「そのまま聞け。主の命を伝える」




 凛と、すずやかに、淡々と、




「これより、この地にて、ゾメガを頂点とした組織『超魔王軍ゼノリカ』をつくれ。貴様らは、『禁域』に接続された裏ダンジョン『ゼノリカ』を拠点として暗躍する秘密結社、『世界の闇を支配する無上の巨悪』となる」










 誰もが黙って耳を傾けている。

 「なぜ、そのような事を?」という疑問などは投げかけない。




 もちろん、『なぜ、悪?』という疑問を胸には抱くが、口にはしない。










 『主がそうしろ』と言ったのなら、

 いつだって『ただ実行するだけ』だから。







「貴様らには、ある程度の裁量権をあたえる。もちろん、踰越ゆえつ・濫用らんようは許さない。ゼノリカに、『主を不快にさせる愚か者』はいない。そう信じての決断である。諸々、留意せよ。……『それなりに自由』とは言ったが、当然、いくつかのルールは設定してある。これは絶対に守れ」




 一、これまで以上に、『ゼノリカ神法』を順守しろ。

 一、何よりも、己の腐敗を恐れろ。

 一、この世界の秩序を乱すな。

 一、表に出るな。

 一、常に、闇を愛し、裏に潜め。

 一、ゼノリカという『巨悪』を『認知できる』のは限られた者だけとする。

 一、強者(それなりの経験値)は殺すな。

 一、できるだけ弱者も殺すな。

 一、不快な悪事は禁じる。

 一、ただし、『巨悪』だと認識される演出は怠るな。

 一、ゼノリカ以上の『悪』を許すな。

 一、妨げにしかならぬ愚者は滅しても構わないが、アダムに相談・報告はしろ。




「以上だ。これは最低限。今後、確定で増える。そして、追加分は、アダムを通して伝える。主は忙しい。いちいち貴様らの質問に答えている暇などない。今後、もろもろの事は、アダムに聞け。必ず情報は共有しろ。言うまでもないが、ゼノリカ内での対立は絶対に禁じる。内輪モメは、主に対する最大の反逆である。決して、主に『貴様らの愚かさ』を数えさせるな。主は常に貴様らを見ている。……最後に、主の直接のメッセージだ。心を尽くして、耳を傾けろ」










 そう言った直後、アバターラに、










 偉大なる神の『意識の欠片』が宿る。

 そのフラグメントは、わずかな光でしかなかった。

 しかし、『場』は満たされていく。






















 ――神が顕現した――



















 この空間の圧力がグっと増す。

 ズンと重くなる。







 誰もが理解した。










 今、この瞬間における、全世界の中心は、




 他のどこでもなく、




 間違いなく、




 ――ここである――



















 この上なく尊い神帝陛下のカケラを宿すアバターラは、全員の頭を見渡してから、
















「……あげていい……」







 声の質が変わった。

 圧倒的強者の声音から、ゼノリカ(全てを包み込む光)の旋律に変わったのだ。




 それは、とても、美しかった。

 まるで、魂魄の芯を包み込むような――
















「これは命令だ。頭をあげろ」







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