160 / 380
天上天下唯我独尊
しおりを挟む
ゼンは、スゥっと息を吸ってから、ホルスドを睨みつけて、
「……仮の話だけど、俺が、ここから、空間魔法を使って逃げようとした場合、その成功率はどのくらいだ?」
「ランク8を超える空間魔法なら、対処方法を持っていないから、数時間は隠れられるかもしれないが……それ以下なら、干渉する魔法が使えるのでね。数分と持たないだろう。すぐに解析して侵入する。嘘だと思うなら試してみたらどうだ? 空間魔法などという超高位の魔法が、貴様に使えるとは思えないが」
「別に嘘だとは思っていないけど……あのさ、一つ、質問。なんで、色々と、ご親切に教えてくれるんだ? もしかして、なんか、アリア・ギアスでも使ってんの?」
「私が貴様を相手するのに、アリア・ギアスを使う必要があると本気で思うか?」
「……ねぇな」
「教えてやったのは、ただ、その方がより絶望できるだろうと思ったからだ。弱者にとって、『事実』よりも重たい絶望などない。くく……大サービスで、もうひとつ、教えてやろうか。貴様は、『我が主の興味をひいたイレギュラー』の眷属だけあって、異常なほど膨大な生命力を有しているようだ――が」
そこで、ホルスドは、右手に魔力を溜めていく。
「このぐらいかな……」
ある程度ためてから、そうつぶやくと、右手を、ゼンに向けて、
「これを受ければ、貴様は死ぬ。もしどうにか踏ん張って耐えても、すぐに二発目を撃つ。つまり、貴様は、今日、ここで、これから数秒以内に、確実に死ぬ」
「……そっか……最高だな……」
そこで、ゼンは、ニカァっと微笑んで、
「わが生涯には、全編にわたって『悔い』しか、無し。……はっ、爆笑だぜ。笑えねぇって点が何より可笑しくてたまらねぇ」
諦念を超えた感情の中で、そうつぶやいた。
そんなゼンに、ホルスドは尋ねた。
「一つ聞かせろ。貴様……なぜ、私の前に出てきた? この私には絶対に勝てない。そのぐらい、どれほどのアホウであろうと、流石に分かるはず。――なぜ……本当に、どうして、私の前に飛びだしてきた?」
「……」
「この戦闘は、偶然や事故で起きている訳ではない。お前は、自分の意志で、私の前に立った。貴様自身に命の危機があった訳でもないのに……どころか、他者が狙われていて逃げるチャンスだったはず。なのに、なぜだ? なぜ、貴様は私と闘っている。こんなもの、闘いでもなんでもないが……そういう質的な問題は、この際どうでもいい。答えろ。確定した死を飲み込んでまで私の前に立つ、その理由はなんだ? 自殺志願か?」
「絶対に違う。それだけは絶対に違う。自殺は最も忌むべき逃避だ。『俺以外の誰か』が『その道を選択する』のを止めはしないし非難をする気もないが……俺が実行する事だけは絶対にありえない。俺は、絶対に自殺だけはしない」
「では、いったい、何がしたかった?」
そこで、ゼンは間髪いれずに、
剣を上空に放り投げ、
そのまま、剣を放り投げた右手の人差し指を天に向け、
左手の人差し指を地に向けながら、
「決まってんだろ? かわいい女子の前でカッコつけたかったんだよ」
ハッキリと、シッカリと、ニィっと微笑んで、
「――どうだ? ハッピー(愉快)だろ?」
そう言った。
全身全霊でおどけるゼン。
とびっきりダサい、天上天下唯我独尊。
―― どうだ? 俺ほど尊い(バカな)やつは他にいねぇだろ? ――
「……」
ゼンが魅せた『最後の意地』を受けて、ホルスドは、眉間にシワをよせた。
「……ヨソでやれ。神の前でやる事ではない」
「仰る通りだよ」
言って、ゼンは、回転しながら落ちてきた剣を右手で掴み、構えなおす。
一瞬、掴み損ないそうになったが、それもまた一興!
――そして、言う。
「なんで、あの時、飛びだしたのか……この世で一番聞きたがっているのは、この俺自身だよ」
最後にそう言うと、ゼンは、最後の攻撃を開始した。
分かる。
理解できる。
死ぬ。
今日、死ぬ。
今、死ぬ。
「どうせ死ぬなら、せめて、髪の毛の一本くらいは切ってやらぁ!」
もちろん、そんな事をする意味はない。
髪の毛を切ったからなんだってんだ。
無意味。
クソ無意味。
そんなことは分かっている。
ゆえに、これは、意味どうこうを求めての行動ではない。
意地。
最後の抵抗。
――せめて――
「さらばだ、稀にみる愚か者よ。――光撃、ランク8!!」
ホルスドの魔法。
耀きが、ゼンを襲う。
死が見えた。
それでも、ゼンは止まらない。
――暴れて、果てて、死んでみせる!!
「……仮の話だけど、俺が、ここから、空間魔法を使って逃げようとした場合、その成功率はどのくらいだ?」
「ランク8を超える空間魔法なら、対処方法を持っていないから、数時間は隠れられるかもしれないが……それ以下なら、干渉する魔法が使えるのでね。数分と持たないだろう。すぐに解析して侵入する。嘘だと思うなら試してみたらどうだ? 空間魔法などという超高位の魔法が、貴様に使えるとは思えないが」
「別に嘘だとは思っていないけど……あのさ、一つ、質問。なんで、色々と、ご親切に教えてくれるんだ? もしかして、なんか、アリア・ギアスでも使ってんの?」
「私が貴様を相手するのに、アリア・ギアスを使う必要があると本気で思うか?」
「……ねぇな」
「教えてやったのは、ただ、その方がより絶望できるだろうと思ったからだ。弱者にとって、『事実』よりも重たい絶望などない。くく……大サービスで、もうひとつ、教えてやろうか。貴様は、『我が主の興味をひいたイレギュラー』の眷属だけあって、異常なほど膨大な生命力を有しているようだ――が」
そこで、ホルスドは、右手に魔力を溜めていく。
「このぐらいかな……」
ある程度ためてから、そうつぶやくと、右手を、ゼンに向けて、
「これを受ければ、貴様は死ぬ。もしどうにか踏ん張って耐えても、すぐに二発目を撃つ。つまり、貴様は、今日、ここで、これから数秒以内に、確実に死ぬ」
「……そっか……最高だな……」
そこで、ゼンは、ニカァっと微笑んで、
「わが生涯には、全編にわたって『悔い』しか、無し。……はっ、爆笑だぜ。笑えねぇって点が何より可笑しくてたまらねぇ」
諦念を超えた感情の中で、そうつぶやいた。
そんなゼンに、ホルスドは尋ねた。
「一つ聞かせろ。貴様……なぜ、私の前に出てきた? この私には絶対に勝てない。そのぐらい、どれほどのアホウであろうと、流石に分かるはず。――なぜ……本当に、どうして、私の前に飛びだしてきた?」
「……」
「この戦闘は、偶然や事故で起きている訳ではない。お前は、自分の意志で、私の前に立った。貴様自身に命の危機があった訳でもないのに……どころか、他者が狙われていて逃げるチャンスだったはず。なのに、なぜだ? なぜ、貴様は私と闘っている。こんなもの、闘いでもなんでもないが……そういう質的な問題は、この際どうでもいい。答えろ。確定した死を飲み込んでまで私の前に立つ、その理由はなんだ? 自殺志願か?」
「絶対に違う。それだけは絶対に違う。自殺は最も忌むべき逃避だ。『俺以外の誰か』が『その道を選択する』のを止めはしないし非難をする気もないが……俺が実行する事だけは絶対にありえない。俺は、絶対に自殺だけはしない」
「では、いったい、何がしたかった?」
そこで、ゼンは間髪いれずに、
剣を上空に放り投げ、
そのまま、剣を放り投げた右手の人差し指を天に向け、
左手の人差し指を地に向けながら、
「決まってんだろ? かわいい女子の前でカッコつけたかったんだよ」
ハッキリと、シッカリと、ニィっと微笑んで、
「――どうだ? ハッピー(愉快)だろ?」
そう言った。
全身全霊でおどけるゼン。
とびっきりダサい、天上天下唯我独尊。
―― どうだ? 俺ほど尊い(バカな)やつは他にいねぇだろ? ――
「……」
ゼンが魅せた『最後の意地』を受けて、ホルスドは、眉間にシワをよせた。
「……ヨソでやれ。神の前でやる事ではない」
「仰る通りだよ」
言って、ゼンは、回転しながら落ちてきた剣を右手で掴み、構えなおす。
一瞬、掴み損ないそうになったが、それもまた一興!
――そして、言う。
「なんで、あの時、飛びだしたのか……この世で一番聞きたがっているのは、この俺自身だよ」
最後にそう言うと、ゼンは、最後の攻撃を開始した。
分かる。
理解できる。
死ぬ。
今日、死ぬ。
今、死ぬ。
「どうせ死ぬなら、せめて、髪の毛の一本くらいは切ってやらぁ!」
もちろん、そんな事をする意味はない。
髪の毛を切ったからなんだってんだ。
無意味。
クソ無意味。
そんなことは分かっている。
ゆえに、これは、意味どうこうを求めての行動ではない。
意地。
最後の抵抗。
――せめて――
「さらばだ、稀にみる愚か者よ。――光撃、ランク8!!」
ホルスドの魔法。
耀きが、ゼンを襲う。
死が見えた。
それでも、ゼンは止まらない。
――暴れて、果てて、死んでみせる!!
0
お気に入りに追加
1,559
あなたにおすすめの小説
[完結]異世界転生したら幼女になったが 速攻で村を追い出された件について ~そしていずれ最強になる幼女~
k33
ファンタジー
初めての小説です..!
ある日 主人公 マサヤがトラックに引かれ幼女で異世界転生するのだが その先には 転生者は嫌われていると知る そして別の転生者と出会い この世界はゲームの世界と知る そして、そこから 魔法専門学校に入り Aまで目指すが 果たして上がれるのか!? そして 魔王城には立ち寄った者は一人もいないと別の転生者は言うが 果たして マサヤは 魔王城に入り 魔王を倒し無事に日本に帰れるのか!?
最強の赤ん坊! 異世界に来てしまったので帰ります!
カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
病弱な僕は病院で息を引き取った
お母さんに親孝行もできずに死んでしまった僕はそれが無念でたまらなかった
そんな僕は運がよかったのか、異世界に転生した
魔法の世界なら元の世界に戻ることが出来るはず、僕は絶対に地球に帰る
異世界あるある 転生物語 たった一つのスキルで無双する!え?【土魔法】じゃなくって【土】スキル?
よっしぃ
ファンタジー
農民が土魔法を使って何が悪い?異世界あるある?前世の謎知識で無双する!
土砂 剛史(どしゃ つよし)24歳、独身。自宅のパソコンでネットをしていた所、突然轟音がしたと思うと窓が破壊され何かがぶつかってきた。
自宅付近で高所作業車が電線付近を作業中、トラックが高所作業車に突っ込み運悪く剛史の部屋に高所作業車のアームの先端がぶつかり、そのまま窓から剛史に一直線。
『あ、やべ!』
そして・・・・
【あれ?ここは何処だ?】
気が付けば真っ白な世界。
気を失ったのか?だがなんか聞こえた気がしたんだが何だったんだ?
・・・・
・・・
・・
・
【ふう・・・・何とか間に合ったか。たった一つのスキルか・・・・しかもあ奴の元の名からすれば土関連になりそうじゃが。済まぬが異世界あるあるのチートはない。】
こうして剛史は新た生を異世界で受けた。
そして何も思い出す事なく10歳に。
そしてこの世界は10歳でスキルを確認する。
スキルによって一生が決まるからだ。
最低1、最高でも10。平均すると概ね5。
そんな中剛史はたった1しかスキルがなかった。
しかも土木魔法と揶揄される【土魔法】のみ、と思い込んでいたが【土魔法】ですらない【土】スキルと言う謎スキルだった。
そんな中頑張って開拓を手伝っていたらどうやら領主の意に添わなかったようで
ゴウツク領主によって領地を追放されてしまう。
追放先でも土魔法は土木魔法とバカにされる。
だがここで剛史は前世の記憶を徐々に取り戻す。
『土魔法を土木魔法ってバカにすんなよ?異世界あるあるな前世の謎知識で無双する!』
不屈の精神で土魔法を極めていく剛史。
そしてそんな剛史に同じような境遇の人々が集い、やがて大きなうねりとなってこの世界を席巻していく。
その中には同じく一つスキルしか得られず、公爵家や侯爵家を追放された令嬢も。
前世の記憶を活用しつつ、やがて土木魔法と揶揄されていた土魔法を世界一のスキルに押し上げていく。
但し剛史のスキルは【土魔法】ですらない【土】スキル。
転生時にチートはなかったと思われたが、努力の末にチートと言われるほどスキルを活用していく事になる。
これは所持スキルの少なさから世間から見放された人々が集い、ギルド『ワンチャンス』を結成、努力の末に世界一と言われる事となる物語・・・・だよな?
何故か追放された公爵令嬢や他の貴族の令嬢が集まってくるんだが?
俺は農家の4男だぞ?
NTRエロゲの世界に転移した俺、ヒロインの好感度は限界突破。レベルアップ出来ない俺はスキルを取得して無双する。~お前らNTRを狙いすぎだろ~
ぐうのすけ
ファンタジー
高校生で18才の【黒野 速人】はクラス転移で異世界に召喚される。
城に召喚され、ステータス確認で他の者はレア固有スキルを持つ中、速人の固有スキルは呪い扱いされ城を追い出された。
速人は気づく。
この世界、俺がやっていたエロゲ、プリンセストラップダンジョン学園・NTRと同じ世界だ!
この世界の攻略法を俺は知っている!
そして自分のステータスを見て気づく。
そうか、俺の固有スキルは大器晩成型の強スキルだ!
こうして速人は徐々に頭角を現し、ハーレムと大きな地位を築いていく。
一方速人を追放したクラスメートの勇者源氏朝陽はゲームの仕様を知らず、徐々に成長が止まり、落ちぶれていく。
そしてクラス1の美人【姫野 姫】にも逃げられ更に追い込まれる。
順調に強くなっていく中速人は気づく。
俺達が転移した事でゲームの歴史が変わっていく。
更にゲームオーバーを回避するためにヒロインを助けた事でヒロインの好感度が限界突破していく。
強くなり、ヒロインを救いつつ成り上がっていくお話。
『この物語は、法律・法令に反する行為を容認・推奨するものではありません』
カクヨムとアルファポリス同時掲載。
異世界で買った奴隷が強すぎるので説明求む!
夜間救急事務受付
ファンタジー
仕事中、気がつくと知らない世界にいた 佐藤 惣一郎(サトウ ソウイチロウ)
安く買った、視力の悪い奴隷の少女に、瓶の底の様な分厚いメガネを与えると
めちゃめちゃ強かった!
気軽に読めるので、暇つぶしに是非!
涙あり、笑いあり
シリアスなおとぼけ冒険譚!
異世界ラブ冒険ファンタジー!
蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる
フルーツパフェ
大衆娯楽
転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。
一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。
そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!
寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。
――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです
そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。
大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。
相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。
女子力の高い僕は異世界でお菓子屋さんになりました
初昔 茶ノ介
ファンタジー
昔から低身長、童顔、お料理上手、家がお菓子屋さん、etc.と女子力満載の高校2年の冬樹 幸(ふゆき ゆき)は男子なのに周りからのヒロインのような扱いに日々悩んでいた。
ある日、学校の帰りに道に悩んでいるおばあさんを助けると、そのおばあさんはただのおばあさんではなく女神様だった。
冗談半分で言ったことを叶えると言い出し、目が覚めた先は見覚えのない森の中で…。
のんびり書いていきたいと思います。
よければ感想等お願いします。
捨て子の僕が公爵家の跡取り⁉~喋る聖剣とモフモフに助けられて波乱の人生を生きてます~
伽羅
ファンタジー
物心がついた頃から孤児院で育った僕は高熱を出して寝込んだ後で自分が転生者だと思い出した。そして10歳の時に孤児院で火事に遭遇する。もう駄目だ! と思った時に助けてくれたのは、不思議な聖剣だった。その聖剣が言うにはどうやら僕は公爵家の跡取りらしい。孤児院を逃げ出した僕は聖剣とモフモフに助けられながら生家を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる