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命は完成などしない
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世界が震動した。
一瞬だったが、確かに揺れた。
「……ウ……ソ……」
ユンドラは瞠目した。
隣に立っている男から感じる力に畏怖を覚える。
同時に感じた、魂が喜ぶほどの温かさ。
全身が、甘い痺れで満たされる。
「まさ、か……ぁ、あなたも……『完成』していたなんて……」
センから感じる力は、サイケルよりも弱いが匹敵していた。
膨大な力の波動。
神の領域。
「命は完成などしない」
「……」
二の句が継げなくなったユンドラを残して、センは前に進む。
「御苦労さん、消えていいぞ」
センに声をかけられたセンBは、苦い顔をして、
「まだだ。俺はまだやれる。ようやく、勘が戻ってきたんだ。こんな所で終われるかよ」
「自我なんて与えるんじゃなかったな……めんどくせぇ……いいから、消えろ。後で鍛え直してやるから」
「……くぅ…………ちぃっ!!」
不満を爆発させた顔で、センBは、センを睨みながら、スゥっと揺らいで、センの体に戻っていった。
「さて……それじゃあ、本番を始めようか。もし、お疲れなら、休憩時間を取るけど、どうする?」
言われたサイケルは、ニっと微笑んで、
「なるほど……」
と、呟き、ゆっくりと、センとの距離を詰めた。
二人の距離が一メートルを切ったところで、
「まだ、途中だったのか……私は、まだ……」
サイケルは、
「ふ、ふふ……」
楽しそうに微笑み、
「高揚するじゃないか。……そうか、私は、この領域に至ってなお、まだ未完成か。ああ……血が沸いている。私は、どこまで高みに昇るのだろうか」
武者震い。
果てなき欲望が湧き上がる。
「教えてくれ、『この上なき贄にえ』よ……私に、『私の果て』を」
気血が潤って、
「さぁ」
厳かに整う。
「……一つになろう」
解析能力を使用して、
センを奪い取ろうとするサイケル。
だが、
「……ん?」
サイケルは、首をかしげる。
(なんだ? ……どうなっている? なぜ解析できない…………どうして――)
「不思議そうな顔をしているな。なぜ俺を解析できないか、教えてやろうか?」
「……」
「俺の存在値は大きすぎるから、お前の演算能力じゃ処理できねぇんだよ。そのスキルは、神相手では使えない。実行できないって意味じゃなく、時間がかかりすぎるから、使い物にならないって意味な」
「……愚かな事を……ハッタリも大げさ過ぎると意味がなくなるという見本だな。もし、仮に、貴様の高みが、私に解析できないほどの領域にあるのであれば、私はとっくに死んでいる」
サイケルは、バキバキと指を鳴らし、
「確かに貴様は強い。認めよう。しかし、私よりは弱い」
「確かに、ステータスならお前の方が上だな」
センのビルドは、覚醒ブースト特化。
覚醒時のパーセンテージを底上げする代わりに、素のステータスに制限がかかる構成。
という訳で、覚醒技を使っていない今の状態だと、サイケルの方が、ステータスは遥かに高い。
ちなみに、だいたい、こんな感じ。
【サイコウイング・ケルベロスゼロ・タナトス(決戦仕様・第三形態)】
「生命力」――――》》
「攻撃力」―――――――――――――》》
「防御力」――――――》》
「俊敏性」―――――――》》
「耐性力」―――――――――――》》
「魔法力」――――――――――》》
「正気度」――――》》
「精神力」――――――》》
【センエース】
「生命力」――》》
「攻撃力」――》》
「防御力」―――》》
「俊敏性」――》》
「耐性力」――――――――――》》
「魔法力」―――》》
「正気度」
「精神力」―――――――――――――――//――――――――――――》》
一瞬だったが、確かに揺れた。
「……ウ……ソ……」
ユンドラは瞠目した。
隣に立っている男から感じる力に畏怖を覚える。
同時に感じた、魂が喜ぶほどの温かさ。
全身が、甘い痺れで満たされる。
「まさ、か……ぁ、あなたも……『完成』していたなんて……」
センから感じる力は、サイケルよりも弱いが匹敵していた。
膨大な力の波動。
神の領域。
「命は完成などしない」
「……」
二の句が継げなくなったユンドラを残して、センは前に進む。
「御苦労さん、消えていいぞ」
センに声をかけられたセンBは、苦い顔をして、
「まだだ。俺はまだやれる。ようやく、勘が戻ってきたんだ。こんな所で終われるかよ」
「自我なんて与えるんじゃなかったな……めんどくせぇ……いいから、消えろ。後で鍛え直してやるから」
「……くぅ…………ちぃっ!!」
不満を爆発させた顔で、センBは、センを睨みながら、スゥっと揺らいで、センの体に戻っていった。
「さて……それじゃあ、本番を始めようか。もし、お疲れなら、休憩時間を取るけど、どうする?」
言われたサイケルは、ニっと微笑んで、
「なるほど……」
と、呟き、ゆっくりと、センとの距離を詰めた。
二人の距離が一メートルを切ったところで、
「まだ、途中だったのか……私は、まだ……」
サイケルは、
「ふ、ふふ……」
楽しそうに微笑み、
「高揚するじゃないか。……そうか、私は、この領域に至ってなお、まだ未完成か。ああ……血が沸いている。私は、どこまで高みに昇るのだろうか」
武者震い。
果てなき欲望が湧き上がる。
「教えてくれ、『この上なき贄にえ』よ……私に、『私の果て』を」
気血が潤って、
「さぁ」
厳かに整う。
「……一つになろう」
解析能力を使用して、
センを奪い取ろうとするサイケル。
だが、
「……ん?」
サイケルは、首をかしげる。
(なんだ? ……どうなっている? なぜ解析できない…………どうして――)
「不思議そうな顔をしているな。なぜ俺を解析できないか、教えてやろうか?」
「……」
「俺の存在値は大きすぎるから、お前の演算能力じゃ処理できねぇんだよ。そのスキルは、神相手では使えない。実行できないって意味じゃなく、時間がかかりすぎるから、使い物にならないって意味な」
「……愚かな事を……ハッタリも大げさ過ぎると意味がなくなるという見本だな。もし、仮に、貴様の高みが、私に解析できないほどの領域にあるのであれば、私はとっくに死んでいる」
サイケルは、バキバキと指を鳴らし、
「確かに貴様は強い。認めよう。しかし、私よりは弱い」
「確かに、ステータスならお前の方が上だな」
センのビルドは、覚醒ブースト特化。
覚醒時のパーセンテージを底上げする代わりに、素のステータスに制限がかかる構成。
という訳で、覚醒技を使っていない今の状態だと、サイケルの方が、ステータスは遥かに高い。
ちなみに、だいたい、こんな感じ。
【サイコウイング・ケルベロスゼロ・タナトス(決戦仕様・第三形態)】
「生命力」――――》》
「攻撃力」―――――――――――――》》
「防御力」――――――》》
「俊敏性」―――――――》》
「耐性力」―――――――――――》》
「魔法力」――――――――――》》
「正気度」――――》》
「精神力」――――――》》
【センエース】
「生命力」――》》
「攻撃力」――》》
「防御力」―――》》
「俊敏性」――》》
「耐性力」――――――――――》》
「魔法力」―――》》
「正気度」
「精神力」―――――――――――――――//――――――――――――》》
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