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スリーピース・カースソルジャー
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「……は、はは」
勇者は、薄い笑みを浮かべながら、ゆっくりと地に降りてきた。
「勝ったぁ……勝ったぞぉ……」
歓喜に打ち震えている。
初めての経験かもしれない。
持てる全てを駆使して、全力で闘い、巨大な敵に打ち勝つ。
なんという高揚感。
なんという清々しさ。
「俺の勝ちだぁああああ! ふはははははははぁぁ!!」
横たわっているカースソルジャーを見下ろし、指をさして叫ぶ。
口から、おツユを飛ばし、目を剥き出しにして、全身で喜びを表現する。
「ひゃはははははは! ざまぁみやがれ、くそがぁああ! 殺せると思ったか、この俺を! ボケがぁ! ありえねぇんだよぉおおお! ははははははは……はっ……ぁ……」
そこで、勇者は、周囲から注がれている視線に気づいた。
魔王の配下たちは、一様に、全身で、絶望を表現していた。
『ラムドの切り札ならば、あるいは』という期待が潰えて、消沈している。
だが、そんな彼らの心情は無視して、勇者は、自分の失態だけを繕おうと、
「ん、んー……ははっ、ちっとばかし、みっともねぇ姿を見せちまったが、まあ、忘れてくれや」
コホンと息をついて、
「まあ、なんだ、その……感謝するぜ」
勇者はラムドの目をジっとみつめる。
確かな敬意がそこにはあった。
「楽しい時間を貰った。その、せめてもの礼だ。一瞬で消してやるよ。痛みはねぇ」
締めくくるようにそう言って、右手の掌をラムドに向ける勇者。
ラムドは、そんな勇者に言う。
「見事じゃ、勇者よ」
うんうんと首を縦にふりながら、
「実に、素晴らしい」
拍手。
パチパチパチッ
乾いた音が、静まり返った魔王城に響き渡る。
「随分と時間がかかったとはいえ、カースソルジャーを倒すとは、アッパレ!」
「……嬉しいぜ。素直になぁ。強ぇ兵士だった。本当に、凄まじく強い兵士だったよ。剣の腕前は、ちぃとばかしお粗末だったが、ハンパねぇ膂力に、イカれた俊敏性、死を全く恐れない勇敢さ……震えたぜ」
「うむうむ、カースソルジャーは、動きまわってナンボのモンスターじゃから、スピードは他のステータスよりもかなり高い。しかし、そんなカースソルジャーの速度にも、ぬしはついてきておった。本当に素晴らしい」
「……はっ。もういいよ。流石に食傷気味だ。さっさと締めて終わろうぜ。流石に疲れた。帰って寝てぇ。テメェらも、いい加減、終わりてぇだろ。すぐに消してやるさ、灰も残らずな」
「は? 何を言っておる? 休むには、まだはやすぎるじゃろ」
「……ぇ?」
「まだ、何も終わっておらんと言っておる」
「アホか。確かに、相当消耗したが、テメェら全員を消す力くらい残っているっつぅの。俺をナメんじゃねぇぞ」
そこで、勇者は、魔王を睨みつける。
(随分と回復させちまったが……まあ、でも………………ヨユー)
カースソルジャーを削りきるのに、かなりの時間がかかってしまった。
そのため、魔王の傷は、七割ほど回復してしまっている。
けれど、行ける。
この高揚感。
溢れ出るアドレナリン。
指先が少し震えていて、グワっと芯が熱い。
行けるさ。
俺は、まだ行ける。
なんなら、もう一歩、高く――
「疑うなら、全員でかかってきな。見せてやるよ。俺の高みを」
「のう、勇者」
「なんだよ、ラムド」
「わしが、カースソルジャーを召喚した時、なんと言っておったか、覚えておるか?」
「あん? なんだ、急に……召喚の詠唱なんざ、一々覚えて……」
そうでもない。
相当なインパクトだったから。
「いや、待てよ。覚えてっぞ。確か」
記憶に潜る。
言葉がスゥっと脳に浮かんだ。
「確か、なんだっけな……ああ、そうだ。……すりー……」
そこで、ブワァアっと、勇者の額に水滴が浮かぶ。
冷や汗がビッシリと溢れ出る。
(い、い、いや、ありえねぇ……そういう種族名ってだけだ。絶対にそうだ。ありえねぇ。そんな訳ねぇ。絶対に違う! そんなムチャクチャは、あっていいはずがないんだ!)
「1回戦、突破。実にお見事」
とても、とても、いい笑顔で、ラムドは言う。
「では、続けて、2回戦と行こうか」
紫のジオメトリが、怪しく輝き、
そして、
「カースソルジャー2号。さあ、勇者がお待ちだ。お相手をしてさしあげなさい。どうやら、まだまだモノ足りないようだから、1号よりも長く闘ってさしあげろ。いうまでもないが、殺してはいかんぞ。3号にも勇者と遊ばせてやりたいからのう」
元気いっぱいのカースソルジャー2号が、コクっと頷いた。
勇者は、薄い笑みを浮かべながら、ゆっくりと地に降りてきた。
「勝ったぁ……勝ったぞぉ……」
歓喜に打ち震えている。
初めての経験かもしれない。
持てる全てを駆使して、全力で闘い、巨大な敵に打ち勝つ。
なんという高揚感。
なんという清々しさ。
「俺の勝ちだぁああああ! ふはははははははぁぁ!!」
横たわっているカースソルジャーを見下ろし、指をさして叫ぶ。
口から、おツユを飛ばし、目を剥き出しにして、全身で喜びを表現する。
「ひゃはははははは! ざまぁみやがれ、くそがぁああ! 殺せると思ったか、この俺を! ボケがぁ! ありえねぇんだよぉおおお! ははははははは……はっ……ぁ……」
そこで、勇者は、周囲から注がれている視線に気づいた。
魔王の配下たちは、一様に、全身で、絶望を表現していた。
『ラムドの切り札ならば、あるいは』という期待が潰えて、消沈している。
だが、そんな彼らの心情は無視して、勇者は、自分の失態だけを繕おうと、
「ん、んー……ははっ、ちっとばかし、みっともねぇ姿を見せちまったが、まあ、忘れてくれや」
コホンと息をついて、
「まあ、なんだ、その……感謝するぜ」
勇者はラムドの目をジっとみつめる。
確かな敬意がそこにはあった。
「楽しい時間を貰った。その、せめてもの礼だ。一瞬で消してやるよ。痛みはねぇ」
締めくくるようにそう言って、右手の掌をラムドに向ける勇者。
ラムドは、そんな勇者に言う。
「見事じゃ、勇者よ」
うんうんと首を縦にふりながら、
「実に、素晴らしい」
拍手。
パチパチパチッ
乾いた音が、静まり返った魔王城に響き渡る。
「随分と時間がかかったとはいえ、カースソルジャーを倒すとは、アッパレ!」
「……嬉しいぜ。素直になぁ。強ぇ兵士だった。本当に、凄まじく強い兵士だったよ。剣の腕前は、ちぃとばかしお粗末だったが、ハンパねぇ膂力に、イカれた俊敏性、死を全く恐れない勇敢さ……震えたぜ」
「うむうむ、カースソルジャーは、動きまわってナンボのモンスターじゃから、スピードは他のステータスよりもかなり高い。しかし、そんなカースソルジャーの速度にも、ぬしはついてきておった。本当に素晴らしい」
「……はっ。もういいよ。流石に食傷気味だ。さっさと締めて終わろうぜ。流石に疲れた。帰って寝てぇ。テメェらも、いい加減、終わりてぇだろ。すぐに消してやるさ、灰も残らずな」
「は? 何を言っておる? 休むには、まだはやすぎるじゃろ」
「……ぇ?」
「まだ、何も終わっておらんと言っておる」
「アホか。確かに、相当消耗したが、テメェら全員を消す力くらい残っているっつぅの。俺をナメんじゃねぇぞ」
そこで、勇者は、魔王を睨みつける。
(随分と回復させちまったが……まあ、でも………………ヨユー)
カースソルジャーを削りきるのに、かなりの時間がかかってしまった。
そのため、魔王の傷は、七割ほど回復してしまっている。
けれど、行ける。
この高揚感。
溢れ出るアドレナリン。
指先が少し震えていて、グワっと芯が熱い。
行けるさ。
俺は、まだ行ける。
なんなら、もう一歩、高く――
「疑うなら、全員でかかってきな。見せてやるよ。俺の高みを」
「のう、勇者」
「なんだよ、ラムド」
「わしが、カースソルジャーを召喚した時、なんと言っておったか、覚えておるか?」
「あん? なんだ、急に……召喚の詠唱なんざ、一々覚えて……」
そうでもない。
相当なインパクトだったから。
「いや、待てよ。覚えてっぞ。確か」
記憶に潜る。
言葉がスゥっと脳に浮かんだ。
「確か、なんだっけな……ああ、そうだ。……すりー……」
そこで、ブワァアっと、勇者の額に水滴が浮かぶ。
冷や汗がビッシリと溢れ出る。
(い、い、いや、ありえねぇ……そういう種族名ってだけだ。絶対にそうだ。ありえねぇ。そんな訳ねぇ。絶対に違う! そんなムチャクチャは、あっていいはずがないんだ!)
「1回戦、突破。実にお見事」
とても、とても、いい笑顔で、ラムドは言う。
「では、続けて、2回戦と行こうか」
紫のジオメトリが、怪しく輝き、
そして、
「カースソルジャー2号。さあ、勇者がお待ちだ。お相手をしてさしあげなさい。どうやら、まだまだモノ足りないようだから、1号よりも長く闘ってさしあげろ。いうまでもないが、殺してはいかんぞ。3号にも勇者と遊ばせてやりたいからのう」
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