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お前を甲子園に連れていく
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さらにいくつか諸々、彼らの『設定』について聞いた後、トウシに、練習試合のDVDとスコアと記録ノートを渡して、古宮はグラウンドを後にした。
彼女の姿が完全に見えなくなってから、
「信じましたかね? 僕らのバックボーン」
若干不安そうな顔を浮かべているツカムに、
「矛盾もスキもない。所々で違和感が匂う背景やけど、異常さを覚えるほどでは絶対にない。少なくとも、絶対に秩序は乱れへん。問題無い」
「だといいのですが」
「ぴよぴよ(160キロ超えの球をなんなく捕るツカムくんの身体設定に関しては、あの説明だと、正直、微妙な気が……)」
「ふかし扱いされるんは別にかまわん。証拠を提出せなあかん訳やないしな。ツカムの捕球能力かて、所詮は捕るだけなんやから、称賛はされても、異常視はされへん。二百キロ・三百キロならともかく、たかが160キロくらいやったら、練習しだいで誰でも捕れるようになる。そもそも、ワシ、設定的に、試合で128キロ以上の球を投げるつもりないしな」
「ぴよぴよ(本当にその球速で投げ続けるつもり? さすがに、遅すぎると思うのだけれど)」
「たかが高校生相手やで。コントロールと変化球だけで十分余裕やて。一応、球種は五つ投げられる事にしとるしな」
「カーブ、シュート、スライダー、スプリット、ナックル……でしたっけ?」
「ぴよぴよ(高校生がナックルなんて投げて秩序的に問題はないの?)」
「コントロールがつかん上、不完全やから滅多に揺れんというマイナスポイントをつける。それなら、いかにも高校生が投げそうな、ほとんどチェンジアップの意味しか持たんクソ微妙ナックルという評価を受けるはずや」
そこまで話したところで、
「ん?」
トウシは、グラウンドに入ってくる人影を見つけて口を閉じた。
(樹理亜? こっちに向かってきとる。何の用や?)
いぶかしい目を浮かべたまま、
「ふたりとも、今日はもう帰ってええ。ほなな」
「え、あ、はい」
「ぴよぴよ(ん? あ、ああ……あの変な女がこっちに来ているからね。あなたも大変ね)」
「もう慣れた」
★
「で、何の用や?」
「今日、一緒に行動してみてハッキリとわかったけど、あの女、異常」
「そんなん知っとる。せやから監視を頼んでんねん。それ言いにきただけか? ほな、ワシ帰るけど」
「あともう一つ」
「なんやねん」
「あんた、まさか、本気で勝つつもりじゃないよね?」
「あ?」
「西教の選手を目の当たりにして、ハッキリとわかった。あそこは強い。この学校は弱い」
「で?」
「三分は悪くない投手だけど、決して最高の投手じゃない。最高クラスの選手ばかりの高校には歯が立たない」
「せやろな」
「じゃあ、どうして、西教の偵察なんて行かせた? 無意味だろ」
「おまえを……」
「え、なに?」
「甲子園に連れていく」
「……」
「そのためや」
彼女の姿が完全に見えなくなってから、
「信じましたかね? 僕らのバックボーン」
若干不安そうな顔を浮かべているツカムに、
「矛盾もスキもない。所々で違和感が匂う背景やけど、異常さを覚えるほどでは絶対にない。少なくとも、絶対に秩序は乱れへん。問題無い」
「だといいのですが」
「ぴよぴよ(160キロ超えの球をなんなく捕るツカムくんの身体設定に関しては、あの説明だと、正直、微妙な気が……)」
「ふかし扱いされるんは別にかまわん。証拠を提出せなあかん訳やないしな。ツカムの捕球能力かて、所詮は捕るだけなんやから、称賛はされても、異常視はされへん。二百キロ・三百キロならともかく、たかが160キロくらいやったら、練習しだいで誰でも捕れるようになる。そもそも、ワシ、設定的に、試合で128キロ以上の球を投げるつもりないしな」
「ぴよぴよ(本当にその球速で投げ続けるつもり? さすがに、遅すぎると思うのだけれど)」
「たかが高校生相手やで。コントロールと変化球だけで十分余裕やて。一応、球種は五つ投げられる事にしとるしな」
「カーブ、シュート、スライダー、スプリット、ナックル……でしたっけ?」
「ぴよぴよ(高校生がナックルなんて投げて秩序的に問題はないの?)」
「コントロールがつかん上、不完全やから滅多に揺れんというマイナスポイントをつける。それなら、いかにも高校生が投げそうな、ほとんどチェンジアップの意味しか持たんクソ微妙ナックルという評価を受けるはずや」
そこまで話したところで、
「ん?」
トウシは、グラウンドに入ってくる人影を見つけて口を閉じた。
(樹理亜? こっちに向かってきとる。何の用や?)
いぶかしい目を浮かべたまま、
「ふたりとも、今日はもう帰ってええ。ほなな」
「え、あ、はい」
「ぴよぴよ(ん? あ、ああ……あの変な女がこっちに来ているからね。あなたも大変ね)」
「もう慣れた」
★
「で、何の用や?」
「今日、一緒に行動してみてハッキリとわかったけど、あの女、異常」
「そんなん知っとる。せやから監視を頼んでんねん。それ言いにきただけか? ほな、ワシ帰るけど」
「あともう一つ」
「なんやねん」
「あんた、まさか、本気で勝つつもりじゃないよね?」
「あ?」
「西教の選手を目の当たりにして、ハッキリとわかった。あそこは強い。この学校は弱い」
「で?」
「三分は悪くない投手だけど、決して最高の投手じゃない。最高クラスの選手ばかりの高校には歯が立たない」
「せやろな」
「じゃあ、どうして、西教の偵察なんて行かせた? 無意味だろ」
「おまえを……」
「え、なに?」
「甲子園に連れていく」
「……」
「そのためや」
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