異世界帰りの彼は、1500キロのストレートが投げられるようになった野球魔人。どうやら甲子園5連覇をめざすようです。

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女子だからねw

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「女子に野球のレベルを正確に測れというのはムチャな話だから、失笑モノの的外れ極まりない愚かな侮辱を受けたところで文句を言うつもりなんかないけど、でも、これだけは言わせて。僕たち二人は、間違いなく天才なんだ。血反吐はくほどの努力だってしている。そして、日本一レベルの高い野球部で、毎日、身を削るようにして切磋琢磨している。言っても分からないだろうけど、次元が違うんだよ。君たちの所とは、やっている野球の」

「大方、その田中なんとかってやつは、かなりのイケメンなんだろ? このレベルの女を落とし狂わせるほどの男……よっぽどなんだろうな。うらやましいねぇ。で、そこそこ、速い球も投げられると見た。120……後半ってところか? まあ、女子の目から見れば、それでも十分すごい球だろうぜ。けどなぁ」

 そこで、清宮は、ニヤァっと笑みを浮かべて、

「話になんねぇんだよ。根本の話、アカに行ったヤツなんざ」

「そっちの黒髪の君も、こっちの彼女と同じ意見なのかな?」

「いや……今日の試合を見させてもらって確信した。正直、ウチの高校があんたらの高校に勝てる可能性はゼロ。投手としてのレベルも……ハッキリとは知らないから断定はできないけど、運動神経でいえば中の上がいいところのトウシが、あんた……桑宮だっけ? あんたに勝てるとは、正直、思えない」

「ジュリアさん、あなた、中学が同じなのに、彼の実力を知らないの?」

「知らん。あいつ、中学で野球なんかやってなかったから。野球関係の本とかは、腐るほど読んでいたけれど」

「はっ、ははは……聞いたか、桑宮。その、とーし君ってやつ、高校まで野球やってなかったんだってよ。くはは……ここまできたら、もはや笑うしかねぇな」
「どうやら、こっちの彼女は、完全にヤラれちゃっているようだね。噂に聞く、恋の病とかいうやつかな?」

「……ふん」

 そこで、古宮は鼻で笑い、

「恋? 私が、『彼の未来』に抱いた夢は、そんな幼稚で低次元な錯覚なんかじゃない。ふふ、なんというか、無知というのは残酷ね。宣言しておくわ。あなたたちは、今日、無知故に愚かしくもバカにすることしか出来なかった投手に何度も完敗し、彼がたやすく五連覇を果たす神々しい姿を、日影で、指をくわえて見ていることになる」

「えっと……この女、マジ大丈夫か?」

 清崎に、すがるような目を向けられ、ジュリアは、ため息をつきながら、

「見ればわかるだろ。大丈夫な個所がない」

「君の方はまともみたいだね。どう? 番号交換しない?」

「このあたしが、お前みたいな低能を相手にするわけないだろ、クソが。一人で一生、バカみたいに球遊びやってろ」

「……」

「どうやら、そっちの女も、まともじゃないみたいだな。おい、行こうぜ」

「そ、そうだね」

 危ない人を見る視線を残して逃げるように去っていく二人を意識からはずすと同時に、古宮が、

「あなた、本当に、田中くんがどういう投手か知らないの? それとも、情報を隠したの?」
「……あんた、マジで、あいつがすごい投手だと思ってんの? あいつの運動神経、マジで中の上なんだけど。高校に入った後、グラウンドで投げているところを二・三回見たことある程度だから、あいつが試合で実際に発揮できる投手力みたいなものは分からないけれど、球速は120そこそこで、変化球も微妙。どこにでもいる普通の一年生でしかない」

「ふふ……彼のすごいところはね。本気で、その、二割くらいの球だけで全国制覇しようとしているところよ。彼が本気で投げてしまったら、全試合が三振パーフェクトで終わってしまう。それじゃあ、彼は成長できない。甲子園大会という絶好の成長ツールは、できるだけ有効活用すべき。まったく……彼の意識の高さにはおそれいるわ。ちょっとやりすぎな面はあるけれど、そうでもなければ、神に投げ勝つなんて、とてもじゃないけどできないけどね」

(そうか、なるほど……この女、本当の本当にイカれているのか。これは、マジでガードしないと。いつ刃物を抜くか分からない)

「さて、今度こそ帰りましょうか。あ、そうだ。一応、田中くんに試合の感想だけでも伝えておきましょう」

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