異世界帰りの彼は、1500キロのストレートが投げられるようになった野球魔人。どうやら甲子園5連覇をめざすようです。

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復讐

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「ええ」

「なぜ? 一応、チームメイトなわけだから、理由を教えておいてほしいのだけれど。言いたくなければ別にいいけど」

「隠すようなことじゃない。非常に単純。あいつは、私の復讐を邪魔した」

(復讐?)

「それだけじゃない。あいつはあたしの命まで救いやがった。絶対に許さない。許せるものか」

(なぜ、この女は、エリートサイヤ人みたいな事を言っているのかしら? わけがわからないわ)

「あたしは死にたかった。私を玩具にした連中に復讐を果たして死ぬ。それだけが私のすべてだった。あいつは、私のすべてを奪った。絶対に許さない」

(おもちゃ? 性的虐待? それともイジメ? 彼女に降りかかっていた何かしらの面倒事を、彼が処理したって解釈でいいのかしら? どう推測しても、彼女にとって、田中くんは恩人としか思えないけれど……人間って、わけわからないわね。まあ、そこが面白いから、神は人間の不具合にパッチをあてようとしないのでしょうけれど)


「こんにちわー」
「どうも」


 帰り支度をしている二人に声をかけてきた二人の高校球児。
 その二人の男は非常に有名なので、ジュリアも古宮も、一瞬で頭に名前を思い浮かべた。

「いやー、君たち、マジでかわいいね。いや、ほんと……ちょっとマジで、なかなかないレベルだ。誰の応援? もしかして俺? てか、俺だよね? 少なくとも、俺か、こいつか、どっちかだよね?」

「清崎くん、僕に決まっているだろ。投手が一番モテるんだから」

「わからねぇだろ、なっ、どっち? さっきの練習試合見てたよね? 俺の豪快な打撃に目を奪われちゃったでしょ? な、な」

「……確かに、そこそこいいバッティング技術だったわ。まあ、まだまだ荒いけれど」

「おっとっと、厳しい評価をもらっちゃったな。なに、君たち、野球オタク? いいねー、美人のオタクは大歓迎だよ。で、どっちのファン? おれ? 桑宮?」

「悪いけれど、私が夢を抱いた男は一人だけ。あなたたちは、確かにまれな実力者だけれど、所詮は高校レベル。巨人で指名一位の契約金一億が精々。お金だけではなく、実力でも、スケールの大きさでも、あなたたちは、田中くんの足もとにも及ばない」

「田中? マーくん? 君ら、結構ミーハー系? てか、メジャーリーガーと高二の俺を比べないでくれよ」

「言っておくけど、僕の場合は、球速だけだと、既にトントンだよ。九キロくらいしか差はないからね」

「絶望的な差じゃねぇか」

「最後の冬に、しこたま走りこんでウエイトを詰めば、差は五キロほどに縮まる。というか、縮ませる」

「勘違いしないでくれる? ウチの高校のエース、田中東志の事を言っているのよ」

「田中とーし……桑宮、知ってる?」

「いや、聞いたことないね」

「それ、だれ? てか、君ら、どこの高校?」

「赤松学園」

「アカコー? ふっ……ははっ」

「清崎くん。人の高校を笑ってはいけないと思うよ」

「いや、だって……アカコーって、稀少フリーパス券のことだろ? いや、頭はいいぜ? ぶっちぎりだ。学力で競えば、こっちが初回コールドをくらうだろうぜ。けど、野球部のレベルは底の底じゃねぇか。そんな所のエースって……ぷっ」

「まあ、清崎くんのいうように、噴飯ものだというのも確かだけどね。……君たち、実は野球について、そんなに詳しくないみたいだね」
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