異世界帰りの彼は、1500キロのストレートが投げられるようになった野球魔人。どうやら甲子園5連覇をめざすようです。

もち

文字の大きさ
上 下
27 / 65

修羅場

しおりを挟む


 トウシは愕然とした表情で肩を落として頭を抱える。

(ワシの狂言を、全部信じたんや……こいつ、どんだけ、頭お花畑やねん)

「あなたは人類の代表、究極の高みへと駆け上がる事を宿命づけられた人類史上最も偉大な男……そんな男が……15歳の春という、体作りで、い、一番、だ、大事なぁああ、この時期にぃいいい、ふざけたものを食べてんじゃないわよぉお! 食事も鍛錬の一つなのよぉおお!」

「……」

「というわけで、今後は、私が作ったものだけを口にするように。今後は、摂取するものを、すべて、私に任せてくれていいわ。食に関して、私は、オリンピックのチーフ管理栄養士にも負けないだけの知識を有しているから」

「……」

「ああ、安心して。食事だけではなく、水分管理もバッチリやらせてもらうわ。サプリメントにプロテインも、もちろん、最上級のものを常時的確に用意して――」

「あの……」

「なに?」

「やらんでええねんけど……なんにも」

「ははは! 遠慮も心配もしなくていいわ。あなたは、投げることだけを考えていればいいの。私は、必ず、あなたを、完全な状態に仕上げてみせる。今日から、あなたと私は一心同体。……腕が鳴るわ。私、目標が困難であればあるほど燃えるタチなの。今まで以上に、私の心は熱く燃えたぎっているわ」

 暑苦しくギラギラと煌く、野望に満ち満ちた目。 
 その瞳に、ゴクリと息をのむトウシ。

(うわ、どうしよ……だるぅ)

 トウシが、目の前にいる狂った女の対処法を考えていると、





 バン!





「この男は、あたしの獲物」

 冷たい眼をした女が、トウシの机に勢いよく右手を叩きつけながら、古宮を睨みつて、

「わけの分からんちょっかいをだすのは、やめてもらえる?」

 そう言った。

「……えもの? えっと……ぁの、田中くん?」

 突如登場した女――暁樹理亜の不可思議な言動を受けて首をかしげる古宮に視線を向けられ、トウシは、ため息をつきながら、ジュリアの目を睨み、

「樹理亜。頼むから、黙っといてくれ。ただでさえややこしい事になってんから、これ以上――」

「黙れ、ウジ虫。あたしに声をかけるな」

「空気を読めぇ言うてんねん。ウジ虫でもわかることが、なんでお前には、わからへんねん」

「はぁ? 空気ぃ? はっ。空気の読めなさに関しては世界一といっても過言ではないあんたが、どの口で偉そうに――」

「ワシが空気読めてへんからって、お前の愚行を止めたらあかん理由にはならんやろ。アホか、お前」

 睨みあう二人を交互に見た後、古宮は、トウシに、

「この子、だれ?」

「同じ中学だったヤツ」

「言動から察するに、ずいぶんと恨まれているようだけれど、どういう関係? まさか、変な事をしたわけじゃ――」

「ふざけんな、クソが。理由なんか無いに等しい。単純に嫌われとるだけや」

「嫌っているのではないわ。殺意を抱いているの。勘違いしないでくれる?」

「はいはい、ごめんなさい。これでええやろ。もういい加減、マジで黙ってくれ。しんどぉてしゃーない」

「トウシぃ……さっきから、あたしに対して、ナメた態度ばっかり取って――」

「樹理亜」

 そこで、トウシは、眉間にしわをよせて、ジュリアを睨みつけ、

「ちょっと黙れ。ちょっとでええ。ちょっと考え事する。邪魔すな」

「……」

 以後、十五秒間、暁は、殺意のこもった眼で目の前の男を睨みつけはするものの、しかし、決して音をたてなかった。
しおりを挟む
感想 2

あなたにおすすめの小説

婚約破棄されて辺境へ追放されました。でもステータスがほぼMAXだったので平気です!スローライフを楽しむぞっ♪

naturalsoft
恋愛
シオン・スカーレット公爵令嬢は転生者であった。夢だった剣と魔法の世界に転生し、剣の鍛錬と魔法の鍛錬と勉強をずっとしており、攻略者の好感度を上げなかったため、婚約破棄されました。 「あれ?ここって乙女ゲーの世界だったの?」 まっ、いいかっ! 持ち前の能天気さとポジティブ思考で、辺境へ追放されても元気に頑張って生きてます!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

異世界の貴族に転生できたのに、2歳で父親が殺されました。

克全
ファンタジー
アルファポリスオンリー:ファンタジー世界の仮想戦記です、試し読みとお気に入り登録お願いします。

Re:Monster(リモンスター)――怪物転生鬼――

金斬 児狐
ファンタジー
 ある日、優秀だけど肝心な所が抜けている主人公は同僚と飲みに行った。酔っぱらった同僚を仕方無く家に運び、自分は飲みたらない酒を買い求めに行ったその帰り道、街灯の下に静かに佇む妹的存在兼ストーカーな少女と出逢い、そして、満月の夜に主人公は殺される事となった。どうしようもないバッド・エンドだ。  しかしこの話はそこから始まりを告げる。殺された主人公がなんと、ゴブリンに転生してしまったのだ。普通ならパニックになる所だろうがしかし切り替えが非常に早い主人公はそれでも生きていく事を決意。そして何故か持ち越してしまった能力と知識を駆使し、弱肉強食な世界で力強く生きていくのであった。  しかし彼はまだ知らない。全てはとある存在によって監視されているという事を……。  ◆ ◆ ◆  今回は召喚から転生モノに挑戦。普通とはちょっと違った物語を目指します。主人公の能力は基本チート性能ですが、前作程では無いと思われます。  あと日記帳風? で気楽に書かせてもらうので、説明不足な所も多々あるでしょうが納得して下さい。  不定期更新、更新遅進です。  話数は少ないですが、その割には文量が多いので暇なら読んでやって下さい。    ※ダイジェ禁止に伴いなろうでは本編を削除し、外伝を掲載しています。

婚約破棄?一体何のお話ですか?

リヴァルナ
ファンタジー
なんだかざまぁ(?)系が書きたかったので書いてみました。 エルバルド学園卒業記念パーティー。 それも終わりに近付いた頃、ある事件が起こる… ※エブリスタさんでも投稿しています

不遇職とバカにされましたが、実際はそれほど悪くありません?

カタナヅキ
ファンタジー
現実世界で普通の高校生として過ごしていた「白崎レナ」は謎の空間の亀裂に飲み込まれ、狭間の世界と呼ばれる空間に移動していた。彼はそこで世界の「管理者」と名乗る女性と出会い、彼女と何時でも交信できる能力を授かり、異世界に転生される。 次に彼が意識を取り戻した時には見知らぬ女性と男性が激しく口論しており、会話の内容から自分達から誕生した赤子は呪われた子供であり、王位を継ぐ権利はないと男性が怒鳴り散らしている事を知る。そして子供というのが自分自身である事にレナは気付き、彼は母親と供に追い出された。 時は流れ、成長したレナは自分がこの世界では不遇職として扱われている「支援魔術師」と「錬金術師」の職業を習得している事が判明し、更に彼は一般的には扱われていないスキルばかり習得してしまう。多くの人間から見下され、実の姉弟からも馬鹿にされてしまうが、彼は決して挫けずに自分の能力を信じて生き抜く―― ――後にレナは自分の得た職業とスキルの真の力を「世界の管理者」を名乗る女性のアイリスに伝えられ、自分を見下していた人間から逆に見上げられる立場になる事を彼は知らない。 ※タイトルを変更しました。(旧題:不遇職に役立たずスキルと馬鹿にされましたが、実際はそれほど悪くはありません)。書籍化に伴い、一部の話を取り下げました。また、近い内に大幅な取り下げが行われます。 ※11月22日に第一巻が発売されます!!また、書籍版では主人公の名前が「レナ」→「レイト」に変更しています。

間違い召喚! 追い出されたけど上位互換スキルでらくらく生活

カムイイムカ(神威異夢華)
ファンタジー
僕は20歳独身、名は小日向 連(こひなた れん)うだつの上がらないダメ男だ ひょんなことから異世界に召喚されてしまいました。 間違いで召喚された為にステータスは最初見えない状態だったけどネットのネタバレ防止のように背景をぼかせば見えるようになりました。 多分不具合だとおもう。 召喚した女と王様っぽいのは何も持っていないと言って僕をポイ捨て、なんて世界だ。それも元の世界には戻せないらしい、というか戻さないみたいだ。 そんな僕はこの世界で苦労すると思ったら大間違い、王シリーズのスキルでウハウハ、製作で人助け生活していきます ◇ 四巻が販売されました! 今日から四巻の範囲がレンタルとなります 書籍化に伴い一部ウェブ版と違う箇所がございます 追加場面もあります よろしくお願いします! 一応191話で終わりとなります 最後まで見ていただきありがとうございました コミカライズもスタートしています 毎月最初の金曜日に更新です お楽しみください!

【本編完結】転生したら第6皇子冷遇されながらも力をつける

そう
ファンタジー
転生したら帝国の第6皇子だったけど周りの人たちに冷遇されながらも生きて行く話です

処理中です...