異世界帰りの彼は、1500キロのストレートが投げられるようになった野球魔人。どうやら甲子園5連覇をめざすようです。

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暁 樹理亜(あかつき じゅりあ)

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「コントロールだけちょっといいとか、むしろ、男の評価的にはマイナスだな。マジで、あいつ、なんかいいところあんの?」

「一生童貞どころか、この先、女子にわずかな好感をもたれることさえありえなさそうなんですけど、マジで超ウケる」

「一人でいること自体は別にいいんだけど、あいつは、なんか、違うんだよなぁ。ほら、このクラスでも、暁樹理亜とか、いっつも一人だけど、あいつは孤高の美人って感じで、なんか、むしろ一人でいてこそ映えるって感じで良いじゃん」

「あいつなぁ、いいよなぁ。めっちゃ近寄りがたいけど、そこがいいみたいな?」

「確かに美人だよねー、でも性格悪そー」

「でたよ、女の嫉妬」

「ちょっ、嫉妬とかじゃねーから。変なイメージつけんなし」

「ははっ。まあ、確かに、暁さんは、雰囲気が独特でいいですよね。はかなげな感じとでも言うのでしょうか。まあ、容姿だけでいうと、古宮さんの方が上かもしれませんが」

「は? 古宮より、暁の方が上じゃね?」

「おめーは、黒髪ロングで目が切れ長だったら誰でもいいんだろ」

「それだけじゃねぇよ! 手足の長さだってかなり重視してっから!」

「なにを自慢してんだよ」

「容姿だけでいうと、一組の鈴木宝馬(ホウマ)って子もよくね? めっちゃスタイルいいし、顔も整ってた」

「ああ、あの子ですか。野球部のマネージャーになったので、よく知っていますよ」

「マジ?」

「ぶっちゃけ、かなりヤバい子なので、近づかない方がいいですよ」

「ああ、聞いたことあるな。確か、肌がまだらで、常に白目剥いてんだろ?」

「なにそれ、ガチでヤバくない? てかウケんだけど」

「バカ、そのミステリアスなところがいいんじゃねぇか」

「あなたの性癖もなかなかですね」

「うっせぇよ」

「まあ、でも、ウチの高校の容姿トップ3は、確かに、鈴木さん、暁さん、古宮さんでしょうね。マイナス面が少ないことを考えると、古宮さんが頭一つ抜け――」

 ガララッ

「ん? おっと……噂していたところに登場しましたよ。古宮さんです。三組の彼女が、ウチのクラスに、いったい、何の用でしょう。なにか、大きな荷物を持っているようですが……」

「おいおい、佐藤。決まってんだろ。俺にコクりにきたんだよ。いやー、モテる男はつらいわー」

「あはっ。ないない。百パーないから」

「てめぇ、陽子、ふざけんなよ」

 ヌルくジャレている一軍連中になど見向きもしないで、古宮は、一直線に、目的の男のところまで歩き、


「ふざけたもの食べてんじゃないわよ!」


 周りの目など全く無視して、大声で、トウシを怒鳴りつけた。

「……はぁ?」

「そんな、添加物MAXな、クソ以下のモノを食べて、いったいどういうつもり?! ふざけんじゃないわよ!」

「なんで、焼そばパン食うとるだけで、そんなに怒られにゃならんねん」

「今すぐ吐き捨てて、さっさと、これを胃袋に押し込みなさい」

 言いながら、トウシの机に、ドンと風呂敷包みの荷物を置いた。

「なんや、これ?」

「一番上の段が昼食で、二段目が夕ご飯。一番下は明日の朝の御飯よ」

 彼女が風呂敷をとくと、そこに、どでかい三段の重箱が現れた。

「昨日のあなたの宣言……震えたわ。確かに、あなたの夢と比べれば、数百億どうこうなんて、クソみたいなものね。どうやら私、知らず知らずのうちに、常識という毒に犯されていたみたい。なんで、あんなくだらないことに固執していたのか、今となっては不思議なくらいよ」

(……えぇ……うそぉ……こいつ、まさか……)

「だから、私は決めたの。今後は、あなたの夢が、私の夢。あなたを、万全の状態で神々との試合に送り出すことが、私の夢」

(間違いない………うわぁ……)

「もちろん、あなたの勝利を、あなたのパートナーとして、一番近くで見ることこそが、叶えたい夢の最上位よ。最終目的を見誤ったりはしていないわ」



(こいつ、ほんまもんの……アホの子や……見誤った……)




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