異世界帰りの彼は、1500キロのストレートが投げられるようになった野球魔人。どうやら甲子園5連覇をめざすようです。

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古宮 麗華(こみや うららか)

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「よっしゃ。ほな、次はもうちょい……ん? なんや?」

 自分の方に向かって、ゆっくりと歩いてくる女の存在にようやく気付いた田中。

 その田中の元に、ツカムがかけよってきて、

「ヤバくないですか? たぶん、見られたんですよ。あ、しかも、あいつ、古宮麗華ですよ。マズいです。あいつ、交友関係が尋常じゃなくて、噂では、どこぞの企業の社長やマスコミ関係の偉いさんともつながりがあるとか……あ、あ……ど、どうしましょう」

「落ち着け。女子高生に球の速さの程度なんかわからへん。100キロ以上の球は、全部、『かなり速い球』としか思わへんわ。問題ない」

「そ、そうですか。トウシくんがそういうのなら間違いは――」

「ちょっといいかしら」

「な、なんや?」

「このスピードガンで計らせてもらったのだけれど、あなた、すごい球を投げるわね。素晴らしいわ。ほんとうに」

「と、と、トウシくん。女子高生ってスピードガンを持ち歩いているもんでしたっけ?」

「な訳ないやろ」

 冷静に返事をしているが、心の中では、

(この女、もしかして、ごく稀におる、野球オタクか? ……最悪にもほどがある。よりによって、そんなヤツに、試合用にスピードを調節しとるシーンを見られるとは……というか、どっから見られてたんや? 序盤の、二百キロ以上の球を投げとったシーンも見られとったら、マジで終わりや……)

「まさか、100マイルの弾丸を投げる男がウチの高校にいたなんてね。驚きだわ」

(100マイル? ……160キロ、ね。なるほど。ふむ、ふむ。驚きはあるが、現実的な範疇での反応……まちがいない。こいつ、最後の160キロの球しか見てへん。よかった、それなら、まだ何とかなる……まあ、しんどいことに変わりはないけど)

「名前を聞かせてもらえる?」

「ワタシ、ニホンゴ、ワカリマセーン。ニワトリノアシ、キモチワルイネー」

「……名前を聞かせてもらえるかしら」

(マジか、こいつ。ワシの必殺技『ヤバい奴やから関わらんようにしよう大作戦』をたやすくスルーしやがった)

 田中は、ため息をひとつ挟み、露骨に不機嫌そうな表情で、

「ちっ……田中やけど、なんか用?」

「はじめまして、私は古宮麗華。あなたを導く女よ」

(……こいつ、なに言うてんねやろ……分からんワシがおかしいんかな……)

「私の夢は、メジャーの代理人。私にすべて任せて。悪いようにはしないわ」

(代理人?)
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