異世界帰りの彼は、1500キロのストレートが投げられるようになった野球魔人。どうやら甲子園5連覇をめざすようです。

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 そこで、トウシは、

「ええか、クソ八流投手。お前、今まで、ステップ、ここやったけど、それよりもうちょい前の、ここから投げぇ。あと、リリースの瞬間は、腹の底から声出せぇ。叫んでなかったらノーカンやからな」

「……おい、ちょっといいか」

「あん? なんやねん」

「おまえ、態度酷すぎるぞ、ぉい」

 巻き舌で言いながら、三分は、トウシから受け取ったグラブを、トウシに向かって思いっきり投げつけた。

 その思いきり投げつけられたグラブを、

「はん」

「!!」

 片手であっさりとキャッチして、

「肩、肘、大事にするため、高校では投げません……ね。グラブみたいな、それも、普通よりちょっと重い、この鉛入りのグラブを、感情のまま、それも他人に投げつけておいて、よぉ言うわ。お前、結局、全部口だけやな」

「……あ? つぅか、鉛入りってなんだ、お前。いいかげん――」

「ええかげんにせぇ」

 言いながら、トウシは、三分の股間を蹴りあげる。

「くぁああ!」

 力加減を絶妙に調整し、数秒だけうずくまる程度の金的。

「おまえ、さっきから態度悪いんじゃ、ボケェ。ワシ、キャプテンで監督やぞ。高校野球ナメるんも大概にせぇや。あほんだらぁ」

「……ぅうう……てめぇ……」

「なんや、その目。お前が言うたんやろ。監督やろうが、キャプテンやろうが、好きにせぇって。高校野球では監督が一番で二番がキャプテンや。お前が認めたんやろうが。イヤやったら、その場で言わなアカンねん。抗議でも、デモでも、勝負でも何でもして、とにかく行動せな、他人に好きなようにやられんねん。それが人間のルールなんじゃ、ボケ。そんで、監督は絶対いうんが、高校野球のルールじゃ。それやのに、とことんナメくさりやがって。つーか、そもそも、お前がプロ? なめとんのか。なれるわけないやろ。こんなクソみたいな高校きといて」

「……」

「おら、はよ立てや。命令じゃ。いつまでも痛いフリしくさりやがって。そんな強ぉ蹴ってへんわ。ヘタレやのぉ、お前、ほんま。断言したるわ。お前一人やったら、絶対にプロになれへん」

「……俺が勝ったら、奴隷になるんだったな」

「あ? ああ、そうや」

「なにをされても文句ないんだな?」

「まあのう」

「……あと一球、全力で投げてやる」


 言いながら、三分は、トウシの手からグラブを奪い取りながら、

「ただし、球速は関係ない。お前が打て」

「ん?」

「おまえが打てたら、それが何キロだろうが、お前の勝ちだ」

「ほー」

「ただし、打てなかったら、本当にお前は俺の奴隷だ。いいな。球数は――」

「千球」

「なに?」

「千球投げぇ。一球でも打ちそこなったらお前の勝ちでええわ」
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