94 / 96
95.九尾さんと天力さんの大舞台
しおりを挟む
私は九尾さんの要望を通した。
その後は、良かった。
あまり待たせずにすんだよ。
ゲコンツ星の部隊が堤防を上がっていく。
リッチーさんも一緒に。
(それは、気になるよね)
そのコウモリ傘が、おびえてる様子はない。
堤防の上なら、崩れ果てた百万山市がしっかり見える。
夜に包まれてるけど、満月は明るい。
雨の後だから、空気もすんでる。
MCOで作られた、銀色のボルケーナ女神像も。
(しっかり、覚えておいてよね)
並ぶ黒い背中にお願いする。
燃やされた所は、まだ赤くくすぶって見えた。
「ネットワークから。
今、戦闘の終了を報告」
安菜が報告してくれた。
「それ以外の動きはないみたい。
これで一人残らずか・・・・・・」
その時、堤防に向かって2つのカーキ色のポンチョを着た影がぴゅーっとおりてきた。
パーフェクト朱墨のイヤリングだった(?)陰司宮A小隊の2人だった。
さあ。
あの堤防が、2人の大舞台なんだ。
『はじめまして。
私は九尾 九尾。
こっちは天力 狼万』
ビデオ撮影は、してる。
九尾さんの声は、拡声器を使ったみたいに大きかった。
どんな異能力を使ったんだろう。
その声を聴いたとたん、隊列が動揺して、ゆれた。
おもしろいように後ずさった人もいる。
『あなたたちが、異能力者をどれほど恨んでいるかは、わかります』
九尾さんも天力さんも、隊列をとがめることはしなかった。
『それは私たちも同じです。
私たちの世界に攻め込まれたのだから』
その言葉が震えてる。
怒りがにじんでる。
『ですが、そのまま帰っていただくのでは、
さらに不安です。
私たち異能力者は、あなた方を助けることもできる。
そのことを、示したいと思います』
九尾さんの説明の間、天力さんはスマホを操作していた。
そのスマホを、九尾さんに見せる。
何をする気なんだろう。
『あれをご覧ください』
九尾さんが指差した。
MCO女神像を。
『あの像には、私のあつかえる異能力のもとになる力をたくわえてます』
その女神像から白いものがふきだした。
『ここ、百万山に力を満たすもの。
水の力、雨の力です』
白いものは霧なんだ!
霧は、街をおおっていく。
そのなかで、火事が消えていく。
それどころか、くずれたガレキの中からなにかが立ち上がった。
いいえ、なにかじゃない。
ガレキのもとになった、家や道路、その物だよ!
直る範囲は、ドンドン広がっていく。
山を越えて、街の向こうまで。
『このように壊れた街を直すこともできます。
ですが、どんなダメージでも直せるわけではありません。
こん棒エンジェルスが攻撃に使ったのは、魔法炎。
私たちの世界には本来ありえない力です。
その魔法炎で、私たちの世界に破壊を上書きしたのです。
私がやったのは、その上書きされた破壊をはぎ取るだけのこと。
ですから』
そう言って、なんか、私の方を指差した。
『私たちの世界で作られたものによる破壊は、直せないのです』
九尾さんが指さした場所。
『あっ、あの、うさぎちゃんたちのことを責めてるんじゃないのよ』
申し訳なさそうに言われた。
指さされた先は、私が黒い大型巨人と戦った、川辺やそばの街だった。
「いえ、あの街をつぶしたのは私たちです。
事実ですから」
安菜も申しでる。
「申し訳ありません。
その時、管制をしていたのは私、安菜 デ トラムクール トロワグロです」
はーちゃんも。
「その際のオペレーション・システムの破滅の鎧です。
責任なら自分にもあります」
『仲がいいのね』
ほめられた、と素直に思えた。
九尾さんは、ふたたびゲコンツ星の部隊に向き合った。
『もうひとつ、力を見せましょう』
そう言うと、天力さんのスマホに手をかざした。
同時に、あの人たちの頭上に霧がやってきた。
霧は四角く、濃く固まっていく。
その表面で、模様が動き始めた。
カラーだった。
そうか。
スマホの画面の拡大なんだ。
そこには、私が知らない戦いが写しだされていた。
その後は、良かった。
あまり待たせずにすんだよ。
ゲコンツ星の部隊が堤防を上がっていく。
リッチーさんも一緒に。
(それは、気になるよね)
そのコウモリ傘が、おびえてる様子はない。
堤防の上なら、崩れ果てた百万山市がしっかり見える。
夜に包まれてるけど、満月は明るい。
雨の後だから、空気もすんでる。
MCOで作られた、銀色のボルケーナ女神像も。
(しっかり、覚えておいてよね)
並ぶ黒い背中にお願いする。
燃やされた所は、まだ赤くくすぶって見えた。
「ネットワークから。
今、戦闘の終了を報告」
安菜が報告してくれた。
「それ以外の動きはないみたい。
これで一人残らずか・・・・・・」
その時、堤防に向かって2つのカーキ色のポンチョを着た影がぴゅーっとおりてきた。
パーフェクト朱墨のイヤリングだった(?)陰司宮A小隊の2人だった。
さあ。
あの堤防が、2人の大舞台なんだ。
『はじめまして。
私は九尾 九尾。
こっちは天力 狼万』
ビデオ撮影は、してる。
九尾さんの声は、拡声器を使ったみたいに大きかった。
どんな異能力を使ったんだろう。
その声を聴いたとたん、隊列が動揺して、ゆれた。
おもしろいように後ずさった人もいる。
『あなたたちが、異能力者をどれほど恨んでいるかは、わかります』
九尾さんも天力さんも、隊列をとがめることはしなかった。
『それは私たちも同じです。
私たちの世界に攻め込まれたのだから』
その言葉が震えてる。
怒りがにじんでる。
『ですが、そのまま帰っていただくのでは、
さらに不安です。
私たち異能力者は、あなた方を助けることもできる。
そのことを、示したいと思います』
九尾さんの説明の間、天力さんはスマホを操作していた。
そのスマホを、九尾さんに見せる。
何をする気なんだろう。
『あれをご覧ください』
九尾さんが指差した。
MCO女神像を。
『あの像には、私のあつかえる異能力のもとになる力をたくわえてます』
その女神像から白いものがふきだした。
『ここ、百万山に力を満たすもの。
水の力、雨の力です』
白いものは霧なんだ!
霧は、街をおおっていく。
そのなかで、火事が消えていく。
それどころか、くずれたガレキの中からなにかが立ち上がった。
いいえ、なにかじゃない。
ガレキのもとになった、家や道路、その物だよ!
直る範囲は、ドンドン広がっていく。
山を越えて、街の向こうまで。
『このように壊れた街を直すこともできます。
ですが、どんなダメージでも直せるわけではありません。
こん棒エンジェルスが攻撃に使ったのは、魔法炎。
私たちの世界には本来ありえない力です。
その魔法炎で、私たちの世界に破壊を上書きしたのです。
私がやったのは、その上書きされた破壊をはぎ取るだけのこと。
ですから』
そう言って、なんか、私の方を指差した。
『私たちの世界で作られたものによる破壊は、直せないのです』
九尾さんが指さした場所。
『あっ、あの、うさぎちゃんたちのことを責めてるんじゃないのよ』
申し訳なさそうに言われた。
指さされた先は、私が黒い大型巨人と戦った、川辺やそばの街だった。
「いえ、あの街をつぶしたのは私たちです。
事実ですから」
安菜も申しでる。
「申し訳ありません。
その時、管制をしていたのは私、安菜 デ トラムクール トロワグロです」
はーちゃんも。
「その際のオペレーション・システムの破滅の鎧です。
責任なら自分にもあります」
『仲がいいのね』
ほめられた、と素直に思えた。
九尾さんは、ふたたびゲコンツ星の部隊に向き合った。
『もうひとつ、力を見せましょう』
そう言うと、天力さんのスマホに手をかざした。
同時に、あの人たちの頭上に霧がやってきた。
霧は四角く、濃く固まっていく。
その表面で、模様が動き始めた。
カラーだった。
そうか。
スマホの画面の拡大なんだ。
そこには、私が知らない戦いが写しだされていた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説
ワイルド・ソルジャー
アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。
世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。
主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。
旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。
ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。
世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。
他の小説サイトにも投稿しています。
小さなことから〜露出〜えみ〜
サイコロ
恋愛
私の露出…
毎日更新していこうと思います
よろしくおねがいします
感想等お待ちしております
取り入れて欲しい内容なども
書いてくださいね
よりみなさんにお近く
考えやすく
MMS ~メタル・モンキー・サーガ~
千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』
洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。
その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。
突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。
その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!!
機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
暗闇ロボ 暗黒鉄
ヱヰキング
SF
ここは地球、美しく平和な星。しかし2年前、暗闇星人と名乗る謎の宇宙人が宣戦布告をしてきた。暗闇星人は、大量の量産型ロボットで地球に攻めてきた。世界は国同士の争いを一度すべて中断し、暗闇星人の攻撃から耐え続けていた。ある者は犠牲になり、ある者は捕虜として捕らえられていた。そしてこの日、暗闇星人は自らの星の技術で生み出した暗闇獣を送ってきた。暗闇獣はこれまで通用していた兵器を使っても全く歯が立たない。一瞬にして崩壊する大都市。もうだめかと思われたその時、敵の量産型ロボットに似たロボットが現れた。実は、このロボットに乗っていたものは、かつて暗闇星人との争いの中で捕虜となった京極 明星だったのだ!彼は敵のロボットを奪い暗闇星から生還したのだ!地球に帰ってきた明星はロボットに暗黒鉄と名付け暗闇獣と戦っていくのだ。果たして明星の、そして地球運命は!?
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる