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88.知らない刃

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 向こうの山で、巨大な銀色がうごいた。
 ポルタから流れでる海水をせき止めていたダムのMCOが。
 再びボルケーナ先輩の姿にかわっていく。
 手のひらでポルタをすくいあげて、山をおりてくる。
 もう海水は流れでなかった。

「パーフェクト朱墨は、装備を取りに行ってる。
 ブロッサム・ニンジャは、捕まえたこん棒エンジェルスをつれてくるって」
 目の前の崩れ、焼かれた街と引き換えにして、ね。
 ブロッサムが歩いてくる。
 ときどきしゃがみながら、道路をふさぐガレキをずらしながら。

「ハンターキラーの大砲は、完全に戦場を射程に入れたって。
 スゴいや。
 百万山の森から、射程60キロ」

 今日、事件がおきて、唯一良かったことだよ。
「今日みたいな立ち上がりは、普段なら奇跡だよね。
 今日の訓練のために、みんなスケジュールを合わせてくれたし。
 ここに来なくても、それぞれのエリアで集まったり機材のチェックしたり、してたからね」
 その通り。
 運が良かっただけなんだ。

 目の前には、新たな問題がある。
 ブロッサムの後ろに続く人たち。
 ハンターキラーたちがエニシング・キュア・キャプチャーを運んでくる。
 解決しないと。
「安菜も見てよ」
 ボンボニエールのような人型ロボットは、抱えてくる。
 もう少し大きなキャプチャーを抱えるのは、オーバオックスって言う人型だよ。
 見たらわかる軍用、装甲車もあるけど。
 中にキャンプ用品を詰め込んだ、普通と言うには、ちょっとたくましい車、SUVも多いね。
 これらの車は、キャプチャーを屋根に「ネチョッ」と張り付けて運んでた!
 おどろいた。
 ああいう使い方もあるんだ。 
 車列は、まだまだ続くよ。

「ああー!!! 」

 巨人の叫びが、引き伸ばされる。
 低く太く変えられる。
 遠くへ高速で運ばれてるからだ。
「ああああっあー! 」
 あっちは海だ。
 光の刃たちに包まれて、なす術もなく。

 光を持たない機影。
 残された七星が、おりてきた。
 両足と背中から、ジェットを吹きだして。
 私たちの横の駐車場に。
 その姿は、少しだけ、人の形からはなれていた。
 だけど、部分によっては見慣れていた。
 地球の戦闘機が、よく使う兵器だから。
 両腕には機関砲ポット。
 羽にはミサイルが並ぶ。
 さらに巨大なミサイルを、なんと背負ってるのもいた。
 戦闘機よりさらに大きな爆撃機が積むような、巡航ミサイルだよ!

 その一人が、黒い大きな玉状のエネルギーを抱えていた。
 表示によると、ポルタ社の社長の応隆さんだ。
「社長。それ、海に落ちたポルタですか? 」
 指差して聴いてみた。
『そうだよ』
 その声は、間違いなかった。
『ここに、こん棒エンジェルスを帰すための、ポルタを設置する! 』
 駐車場に、下ろした。

 続いておりてきたのは。
「え? なんで?」
 ボルケーナ先輩だ。
 その表情は、納得いかないようにも、おこってるようにも見えた。

 あの、さっきまで戦ってた巨人は? 
「とられちゃった。
 リッチー副団長に」
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