上 下
79 / 96

79.うつろう牢獄

しおりを挟む
 無防備になったウイークエンダーの頭部。
 赤く、うしろに長い逆3角形。
 両目を模したカメラがついている。
 そのオデコに当たる部分から、黒い炎をほとばしらせる!

 私たちのメガ・エニシング・キュア・キャプチャーは、ツヤのある黒い魔法炎でできている。
 宝石みたい。
 対して巨人のは、ツヤのない、何かカサカサした黒。
 巨人が胸を張って立つ。
 「どんな攻撃でも来い! 」とばかりに。
 そこめがけて!
 ドン! と、打撃音。
 巨人の足が、ググっと下がった。
 高熱も襲ってるはず。
 みるみるうちに雨や川が蒸発する。
 これにも耐えた。
 でも、もう動けない。
 エニシング・キュア・キャプチャーの不思議な性質、その1。
 固まるんだ。
 しかも、重さを変えれる。
 今は、できるだけ重くしたから!
 そう言えば、あのすぐ固まる性質、ウレタンのスプレーみたい。
 ビニールのテントの内がわに吹き付けると、固まるし断熱効果もある。
 すばやく建つ仮設住宅に使われるんだよ。
 
 魔法炎の最初の射線は、巨人から私たちへ延びる1本の線になって固まった。
 その重さに耐えれず、巨人の上半身が下がっていく。
 次に私がねらったのは、足回り。
 動けないスキに、周りをぐるりと回る。
 炎がドンドンたまって、ドーム状になる。
 もう動けないよ!

「さあ、キックだよ! 」
 私たちは、ふたたびキックの構えをとる。
「目標! 巨人の足! 最初の射線の下を通る! 」
「了解! 」
 あの鋭い衝撃をもう一回やったら、機体が完全にどうにかなりそう。
 それでも!
「「行けぇ!! 」」
「え? 何をです? 」
 はーちゃんだけ置き去りにして。

 エニシング・キュア・キャプチャーの不思議な性質、その2。
 しかけた本人は、キャプチャーの中で自由に動ける!

 巨人が、私たちへ拳を振り下ろす。
 だけど、黒い炎はポヨンポヨンと跳ね返してくれた。
 その炎の中にすりぬけて、ねらい道理のキックを!
 また足がしなるほどの、衝撃!
 跳ね返された!
 だけど、うまく着地できた!
「おのれぇ!! 」
 巨人がおってくる。
 しまった!
 炎からでちゃった!
 巨人は、こん棒をもって振りかぶっていた。
 必死になってる。
 いつの間に?!
 ああ、最初の射線を引きちぎったんだ。
 それに、自分のツヤのない炎をまとわせて、振り下ろす!
 走らなきゃ!
 足からギシギシとか、キーとか変な音がする。
 それでも、キャプチャーの中に入れた!
「「ウワー! 」」
 ウイークエンダーより大きな足に、殴りかかった!
 相手は動けない。
 殴りつづける。
 できるだけダメージをあたえないと!
 頭上では、巨人こん棒が何度も振り下ろしてる。
 その度に、キャプチャーがちぎれて、減っていく。
 殴りながら、ひたいから炎をはなつと、キャプチャーが内側からふくらんだ。
「エネルギーみるみる減ってる! 」
 安菜の言うとおり。
 一応、無限炉心は機能してる。
 けど、使うエネルギーが多すぎるんだ。
 エネルギーをため込んだ分を使いきれば、フルパワーはだせない。
 
「意見具申、よろしいですか? 」
 はーちゃん、なに?
「メガ・エニシング・キュア・キャプチャーのいるあいだは攻撃されません。
 なら無理に殴らなくても良いのではないですか? 」
 それもそうか。
 私は、なぐるのをやめて、後ろに回り込んだ。
 そしてレスリングや相撲の要領で!
 相手の腰に突進! 
「しがみつけ! 」
「任せて! 得意分野! 」
 安菜のハグは、攻撃に使える?
 腕の出力が一気に上がってる?
 装甲がメキメキと曲がりはじめた。
 その分、巨人にめり込んでいく。
 ベアーハグってヤツなんだ。
 よーし、このままーー。
 
 いきなり、頭の上から打撃音がした。
 見上げたら、巨人がこん棒を振り下ろしてた。
 足は前を向いたまま、上半身だけを後ろに向けて。
 そうだ。
 相手の体はエネルギーなんだ。
 形を自在に変えれるんだ。
 またキャプチャーをえぐられていく!
 
 巨人の後ろから、新しい打撃音がして、何か黒いものが飛びちった。 
 巨人の動きが止まる。
 黒いものは人の形をしていて、次々と飛んでくる。
 あれって、まさか。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

アンチ・ラプラス

朝田勝
SF
確率を操る力「アンチ・ラプラス」に目覚めた青年・反町蒼佑。普段は平凡な気象観測士として働く彼だが、ある日、極端に低い確率の奇跡や偶然を意図的に引き起こす力を得る。しかし、その力の代償は大きく、現実に「歪み」を生じさせる危険なものだった。暴走する力、迫る脅威、巻き込まれる仲間たち――。自分の力の重さに苦悩しながらも、蒼佑は「確率の奇跡」を操り、己の道を切り開こうとする。日常と非日常が交錯する、確率操作サスペンス・アクション開幕!

MMS ~メタル・モンキー・サーガ~

千両文士
SF
エネルギー問題、環境問題、経済格差、疫病、収まらぬ紛争に戦争、少子高齢化・・・人類が直面するありとあらゆる問題を科学の力で解決すべく世界政府が協力して始まった『プロジェクト・エデン』 洋上に建造された大型研究施設人工島『エデン』に招致された若き大天才学者ミクラ・フトウは自身のサポートメカとしてその人格と知能を完全電子化複製した人工知能『ミクラ・ブレイン』を建造。 その迅速で的確な技術開発力と問題解決能力で矢継ぎ早に改善されていく世界で人類はバラ色の未来が確約されていた・・・はずだった。 突如人類に牙を剥き、暴走したミクラ・ブレインによる『人類救済計画』。 その指揮下で人類を滅ぼさんとする軍事戦闘用アンドロイドと直属配下の上位管理者アンドロイド6体を倒すべく人工島エデンに乗り込むのは・・・宿命に導かれた天才学者ミクラ・フトウの愛娘にしてレジスタンス軍特殊エージェント科学者、サン・フトウ博士とその相棒の戦闘用人型アンドロイドのモンキーマンであった!! 機械と人間のSF西遊記、ここに開幕!!

ワイルド・ソルジャー

アサシン工房
SF
時は199X年。世界各地で戦争が行われ、終戦を迎えようとしていた。 世界は荒廃し、辺りは無法者で溢れかえっていた。 主人公のマティアス・マッカーサーは、かつては裕福な家庭で育ったが、戦争に巻き込まれて両親と弟を失い、その後傭兵となって生きてきた。 旅の途中、人間離れした強さを持つ大柄な軍人ハンニバル・クルーガーにスカウトされ、マティアスは軍人として活動することになる。 ハンニバルと共に任務をこなしていくうちに、冷徹で利己主義だったマティアスは利害を超えた友情を覚えていく。 世紀末の荒廃したアメリカを舞台にしたバトルファンタジー。 他の小説サイトにも投稿しています。

入れ替われるイメクラ

廣瀬純一
SF
男女の体が入れ替わるイメクラの話

INNER NAUTS(インナーノーツ) 〜精神と異界の航海者〜

SunYoh
SF
ーー22世紀半ばーー 魂の源とされる精神世界「インナースペース」……その次元から無尽蔵のエネルギーを得ることを可能にした代償に、さまざまな災害や心身への未知の脅威が発生していた。 「インナーノーツ」は、時空を超越する船<アマテラス>を駆り、脅威の解消に「インナースペース」へ挑む。 <第一章 「誘い」> 粗筋 余剰次元活動艇<アマテラス>の最終試験となった有人起動試験は、原因不明のトラブルに見舞われ、中断を余儀なくされたが、同じ頃、「インナーノーツ」が所属する研究機関で保護していた少女「亜夢」にもまた異変が起こっていた……5年もの間、眠り続けていた彼女の深層無意識の中で何かが目覚めようとしている。 「インナースペース」のエネルギーを解放する特異な能力を秘めた亜夢の目覚めは、即ち、「インナースペース」のみならず、物質世界である「現象界(この世)」にも甚大な被害をもたらす可能性がある。 ーー亜夢が目覚める前に、この脅威を解消するーー 「インナーノーツ」は、この使命を胸に<アマテラス>を駆り、未知なる世界「インナースペース」へと旅立つ! そこで彼らを待ち受けていたものとは…… ※この物語はフィクションです。実際の国や団体などとは関係ありません。 ※SFジャンルですが殆ど空想科学です。 ※セルフレイティングに関して、若干抵触する可能性がある表現が含まれます。 ※「小説家になろう」、「ノベルアップ+」でも連載中 ※スピリチュアル系の内容を含みますが、特定の宗教団体等とは一切関係無く、布教、勧誘等を目的とした作品ではありません。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

暗闇ロボ 暗黒鉄

ヱヰキング
SF
ここは地球、美しく平和な星。しかし2年前、暗闇星人と名乗る謎の宇宙人が宣戦布告をしてきた。暗闇星人は、大量の量産型ロボットで地球に攻めてきた。世界は国同士の争いを一度すべて中断し、暗闇星人の攻撃から耐え続けていた。ある者は犠牲になり、ある者は捕虜として捕らえられていた。そしてこの日、暗闇星人は自らの星の技術で生み出した暗闇獣を送ってきた。暗闇獣はこれまで通用していた兵器を使っても全く歯が立たない。一瞬にして崩壊する大都市。もうだめかと思われたその時、敵の量産型ロボットに似たロボットが現れた。実は、このロボットに乗っていたものは、かつて暗闇星人との争いの中で捕虜となった京極 明星だったのだ!彼は敵のロボットを奪い暗闇星から生還したのだ!地球に帰ってきた明星はロボットに暗黒鉄と名付け暗闇獣と戦っていくのだ。果たして明星の、そして地球運命は!?

怪獣特殊処理班ミナモト

kamin0
SF
隕石の飛来とともに突如として現れた敵性巨大生物、『怪獣』の脅威と、加速する砂漠化によって、大きく生活圏が縮小された近未来の地球。日本では、地球防衛省を設立するなどして怪獣の駆除に尽力していた。そんな中、元自衛官の源王城(みなもとおうじ)はその才能を買われて、怪獣の事後処理を専門とする衛生環境省処理科、特殊処理班に配属される。なんとそこは、怪獣の力の源であるコアの除去だけを専門とした特殊部隊だった。源は特殊処理班の癖のある班員達と交流しながら、怪獣の正体とその本質、そして自分の過去と向き合っていく。

処理中です...