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76.見るしかできない、戦い
しおりを挟む目標は、目の前にせまる、街!
「受け身をとるよ。気を付けて! 」
キックの姿勢のまま、翼の推力だけで街からはなれる!
川の上まできたら、翼をたたむ!
腹ばいの格好にはなれた。
あとは、両手両足でショックを吸収さて!
勢いがつきすぎた。
これはきっと、安菜の気合いのせいてスピードがですぎたんだ。
後の事を考えないから。
「ごめんなさーい! 」
あやまられた。
水は勢いを吸収してくれない。
「「ギャー!!」」
2つの悲鳴が重なった。
転がって川底の石にけずられつづけて、ようやく止まった。
「グゲッ。はっ! 」
視界に大きくヒビが走ってる。
頭のメインカメラをおおう、キューポラの防弾ガラスがわれたんだ。
水がはいって、視界がゆがむ。
外そう。
機体が小刻みなゆれを続けてる。
手足が、ゆっくりとしか動かない。
ビリビリ機体がゆれてるのは、なんでだろう?
大分ムチャさせたかな。
「私は無事だよ。安菜、無事? 」
「ええ、無事だと思う。
モニターは? ノイズだらけね」
振り返って見た。
相変わらず、タフだね。
「自己診断機能?
これは働いてるみたい」
・・・・・・模範的なパイロットぶりだよ。
でも、パイロットじゃない。
今ここで、緊急脱出機能を作動させて、逃がしたくなった。
私たちの座席は、レバー1つでロケットに火がつく。
外に放りだしてくれる。
そのあとはパラシュートが開いて地上に下りれる。
だけど、その後どうなるか考えたら、できるわけない。
脱出させた後で、狙われない保証は?
回収してくれる、装甲車かヘリコプターはどこ?
きっと、ここに乗ってる方が安全。
そんなハッキリした、私にのし掛かる責任、不安。
心臓が痛いほど脈をうつ。
汗が止まらない。
まず、役立たずになったキューポラを引き抜こう。
普段なら支える鉄棒を固定するボルトを自動で外せるけど、今は使えなかった。
だから、なんとか手でネジ切ろう。
ギチギチ、嫌な音。
ボルトがおれて、外れた。
「でた! イケメン顔! 」
メインカメラが乗ってる頭部のこと。
たしかに、アゴがシュツと細くなってる。
メインカメラは人間的に2つならんでるし、(カメラ自体はほかにもある)防弾窓は切れ長の目に見える。
「安菜は、この顔好きだもんね」
あと、隠し武器もある。
視界はクリアになった。
よかった。カメラは無事だよ。
急いで全周囲撮影。
辺りをしらべる。
機体がずっとふるえてる。
これも、気になる。
雨は、やんでない。
夕方が近づいたから、空が暗くなってきた。
「まずは、ディメンション・フルムーンを見るよ」
見えたのは川の上流をおおう、霧?
そうじゃない。
でも、雨を蒸発させてるのは間違いない。
あまりに湯気が、激しくでてくるんだ。
ナイアガラの滝を、上下逆さまにしたように見える。
その奥に、赤くて巨大なものが見えた。
マグマみたい。
マグマと言えば。
「ボルケーナ先輩、何かしてくれてるの? 」
私もそう思ったよ。
でも、「違う」
赤いすき間から突きだす白い装甲を見まちがえるわけがない。
赤いのは、こん棒エンジェルスの魔法炎が熱エネルギーを放出する姿だよ!
ルルディ騎士たちもそうだった。
ディメンション・フルムーン。
「みつきだよ。しがみつかれてるんだ!」
それにしても、異常なほどの水蒸気がでてる。
すぐにわかった。
川に入って、放射能塵洗浄装置を作動させてるんだ。
放射能塵洗浄装置は、核戦争になった時に機体に付いた放射性物質を、洗い流すためのもの。
機体全体に仕込まれたシャワーでね。
今は、川に海水が混じって増えた。
こん棒エンジェルスの囲みを、内側から水を吹きかけて、水蒸気の爆発を起こして弾き飛ばしてるんだ!
だけどその爆発は、ディメンションも傷つけるはず。
わずかな救いは、白い装甲、腕が赤い炎をはぎ取っていくから。
「敵のポルタも見るよ」
助けにいきたい。
でも、動こうにも機体の様子すらわからない。
つらいけど、目を離すの。
見ることだって戦いだって、自分に言い聞かせながら。
カメラはまわる。
向かいの山、朱墨ちゃんの学校が麓にある山。
滝があった。
その水は、山肌を、つづいて街を押し流してる!
あれは高い大きな山だけど、それを無視するような大量の水が、噴き出してる!
機体をずっとビリビリ揺らしてたのは、あの滝の音だったんだ。
ポルタが、滝になっていた。
「あれ、海水だよ!」
安菜が怒りだす。
「まさか、海に沈んだポルタからきたの!? 」
「そう! このままじゃ、筋金の田んぼみたいになる! 」
私たちは知ってる。
サークル仲間の筋金くんのお家は、田んぼを作ってる。
それが海のそばにあるんだけど、大波で海水がかぶったことがあるの。
このままでは稲が枯れる、そう言って、すごく落ち込んでた。
そのときは、たくさん水を流して海水を追いだしたらしいけど。
今、流れ落ちる海水は、街を横切って川に注ぎ込んでる。
この下流には、平地がつづく限り田んぼがつづく。
畑もある。花壇も、林も。
そこに海水の害がでたら、どのくらいになるの?!
その時、銀色の巨大な者が滝に近づいた。
あのボルケーナ女神像だったよ。
その表情は、怒りで険しくなっていた。
表示される。
コントロール責任者はパーフェクト朱墨?!
朱墨ちゃんは通常人なのに?!
でも、サポートがついてる。
九尾 九尾。
朱墨ちゃんのおばさんだね。
MCO像は、山をよじ登る。
滝の水量をものともしない。
「あれ、この前に達美先輩が使ったMCOの3倍はあるよ」
さすが九尾 九尾さん。
女神像がポルタにしがみつく。
尻尾も翼も丸めて使って。
まるで、この川の上流にあるダムみたいに、海水をせき止めた。
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