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60.アマリメカニズム

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 道は一車線しかない。
 しかも雨ですべりやすい。
 左右には家。
 シンチョウに進む。
 次は電線と家をまたぐ。
 で、細い川をさかのぼる。
 さかのぼった先で道路をまたいで、ようやく太い川にはいった。
 増水していても、巨大ロボットなら平気だよ。

 ゴロゴロ

 とは言いきれない。
 足にどんなセンサーがついていても、にごって勢いの強い水はこわい。
 石だらけの足元も、歩きにくい。
 この石だらけの川が石川県の名前のもとになったのは、本当なんだ。
 すぐに歩道橋が横切ってる。
 ディメイションが腹ばいでくぐった橋を、ウイークエンダーでしゃがんでくぐる。
 橋にと一緒に作られた、青い水道管を吊って支えるアーチがリッパだね。
 その時、まぶしい!
「危ない!」
 オレンジ色の光!
 ジェットエンジンの光だ!
 まわりを回っている。
「ああっ、ロボットじゃない?
 あの朱墨ちゃんの」
 朱墨ちゃんの?
 ああ、セカンド・ボンボニエールだね。
 50メートル級のウイークエンダーの回りに4メートル級が飛んでいるのは、まとわりついていると言って良いかも。
 安菜も知ってるんだ。
「でも、違うよ。
 朱墨ちゃんたちのロボットは、新しい持ち主に引き取られたはずだよ」
 そう、グロリオススメから帰るときに聴いたの。
「決まりましたよ。うちのボンボニエールの引き取り先が」って。
 お礼のつもりかな。
 こい緑色の機体が手をふってる。
 橋をくぐって上へ、またくぐる。
 なかなかハデな動きだね。
 ムダな通信は禁止されてるから、私からも手をふってあげる。
「送り先は、ウイット・・・・・・おっと、そこは自分で調べてちょうだい」
 安菜は少しムッとするかも。
 でもすぐ気づくでしょう。

「そうか、テストテスト」
 
 カチ

 アイツの分厚くて固い手袋には1本づつジョイスティックがある。
 その中の1つのボタンを押して、しゃべれば。
「はーちゃん。今、私たちの回りを回ってるロボットについて教えて」
 はーちゃん、とあだ名をつけられた破滅の鎧が、答えてくれる。
「セカンド・ボンボニエールです。
 乗り込むウィットネス・ディパーチャーは、富山県を代表するハンターキラーです」
 これが、安菜の仕事。
 ウイークエンダーの動きから、破滅の鎧が着る人を守ってくれるか。
 着たままどんな活動ができるか、確かめること。
  
 これは、あの脅威研究室で魂呼さんたちも交えて決めたことなんだ。
 はーちゃんは安菜のような異能力をもたない貴族(名乗れるだけだけど)としか仕事をしない。
 私たちとしては、そもそも条件を考えたのは、あの悪名高い閻魔 文華。
 したがう理由なんて、ない気がするけど。
 安菜はそれに答えた。
「破滅の鎧の制作者は、鎧にこんな仕事ができると信じて送りだしたんだ。
 それができないとなると、不安になります。
 製作者にどんな迷惑がかかるか、わからないでしょう」
 それでみんなで考えたのが、この働き方なの。 
 
 その後、破滅の鎧はアップデートされた。
 昴さんの生まれた世界ルルディの技術で作られてるから、うまくできた。
「意表をつく動きで相手をほんろうし、
 スキを見つけると、頭部の25ミリ機関砲でメッタ撃ちにします」
 ああ、そうか。
 空港であったときには、頭にでっかい連装レーザー砲をのせてたけど、今は細長い銃身がのびてる。
 まあ、効果は同じでしょう。
 それにしても破滅の鎧さん。
 であった時より、言葉がききとりやすくなったね。
 呼び名も安菜がつけたはーちゃんになった。
 
 ウィットネス・ディパーチャーは満足したのか、去っていった。
 多くのハンターキラーがならんで目指す道路に。
 戻ったとたんに、赤黒いボンボニエールに殴られた。
 ・・・・・・いとこのガン・ウィットネスだね。 

 私も、はーちゃんに聴いてみよう。
「はーちゃん。ウィットネス・ディパーチャーの評判をおしえて」
「質問の意味が不明瞭です。
 ハンターキラーとしての成績でしょうか?
 社会的な評価でしょうか?」
「うーん。ハンターキラーとしての腕前は、今の機動で十分わかる。
 度胸がないなら、そもそもここに来ないだろうから、社会的な評価について教えて」
「ウィットネス・ディパーチャーの社会的評価。
 彼個人に対する評価は、今のところありません。
 ここ最近デビューしたハンターキラーと同じく、典型的なアマリメカニズムの結果ととらえられています」
「はーちゃん、アマリメカニズムについて教えて」
 安菜が聴いた。
「アマリメカニズムとは、ハンターキラーにまつわる、あつれき問題です。
 主に日本の北陸地方で起こる、機械兵器のあまる状態。
 それによるハンターキラーの武装の増加。
 それを過剰であるととらえる人々との問題です」
「なーるほど」
 安菜、知らなかったんだ。
 ・・・・・・そんなものかな。

 それにしてもはーちゃん、私たちと明るく会話する気はないのかな。
 ボルケーナ先輩との時は、あんなに笑ってたのに。
 あれが、ショックだったのかな。
 閻魔 文華が詐欺師だってこと。
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