ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~

リューガ

文字の大きさ
上 下
53 / 102

53.天の横ヤリ

しおりを挟む
「そこから先は、みなさんご存じではないですか?」
 アーリンくんの質問は、当然だね。
 だけど。
「私、存じない!」
 アーリンくん、朱墨ちゃんのことをあきれないであげてね。
 私たちのライフスタイルにはいろんな障害があるの。
「どんなに情報がネットにでてたてって、それをみる時間は少ないんだよ」
 素晴らしい晩ごはん、テレビのユウワク。
 そして、かなしき宿題。
「じゃあ、私が言おうか?」
 達美さん。
 そうですね。
 当事者なら、確実ですね。
「じゃ、見て」
 緞帳が、石川県から大陸につながる海の図になる。
 能登半島の大陸側から青い点がひとつ。
 まずは、ここの海。
 ポルタ社本社の目の前の海。
 青はそこからすぐ大陸付近に現れた。
 ポルタで瞬間移動したんだ。
 そこから海沿いに青線になってのびる。
 これはポルタ社の強襲揚陸艦。
「青い線がペネトの動き」
 つづいて、半島の付け根の山奥から緑の線がのびた。
 まっすぐ、ペネトを追いかける。
「緑の線が、パーフェクト朱墨」
 スゴいスピードだとわかる。
 日本海には、黄色い線が4本走ってる。
 黄色と緑の線が、からまった。
「ココで、航空自衛隊の足止めを食らう。
 スゴいね。
 1発も打たずに振り切った」
 たしかにそのとうり。
 黄色と緑の線は、どちらもすばやく、鋭い軌道を描く。
 けど、緑の線が勝った。
 これでアーリンくんは、反逆者になった。
 百万山の百万比咩神社で戦いをつかさどる、陰司宮。
 そのロボット部隊である、B小隊ホクシン・フォクシスの管理下から勝手に離れて、止めようとした戦闘機部隊を振り切ったからだ。
 ここへ来る途中、車で見た戦闘機部隊は、その時のだろう。
「さて、私たちと戦ったのはここですが」
 画面が、青と緑の線が合わさる所を拡大する。

 ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー ウー

 けたたましいサイレン音!
 ビクッとなった!

『ポルタ警報。ポルタ警報。
 こちらは、ポルタ社航空管制室です――』

 けたたましい放送が、私たちの時間を引き裂いた。

『現在、ポルタ社本社上空に原因不明のポルタが発生しています。
 何が出てくるか、または吸い込まれるかわかりません。
 至急、建物などの丈夫な場所に隠れてください!』

 う~ん。と達美さんがうなった。
「さっき朱墨ちゃんを呼びだした時、大量のMCOを使ったでしょ」
 あまり、深刻そうな感じはない。
「MCOが派手に使われると、まだ暗号世界をさまよってるMCOを持つナニモノかがそれを感知して、この辺にやってくるの」
 そう言って、歩きだす。
 建物に隠れてくださいという放送に逆らって外へ、庭園コーナーへ行く。
「あんたたちも来なさい。店長も!」
 その姿に恐れはない。
「いいですけ、私もうさぎさんも異能力ありませんよ? 店長は知らないけど」
 朱墨ちゃんに言われて。
「僕にもありませんよ」
 でも、これからすることには関係ないみたい。
「こういうのは、ノリなの。共感が大事なの」
 庭園にでて、両手を空に大きく広げた。
「Welcome to 妖菓子鬼茶天 time!」

 赤い髪や肌が液体金属ボルケーニウムの形質をあらわす。
 その波にのって、機械式の骨格から、様々な機能が解放される。
 背中にはジェットエンジンと、鳥のような羽が。
 さらに2本の新しい腕が生える。
 全身は大ぶりな装甲で、服ごとおおわれる。
 顔は、あのかわいい顔が銀色のガイコツじみた機械を見せる。
 そこに、胴体からとびだしたヘルメットがおおう。
 すべての機械が定まると、ボルケーニウムが赤い表面塗料としておおう。
 左手で、ひたいに円錐形のツノを取り付ける。
 右手は獅子の口に鞘に入った脇差しをくわえさせる。
 場所限定とはいえ、レイドリフト・ドラゴンメイドの最強形態。
 凛々しい狩人である、姫獅子。
 その後ろを、私たちはついていった。
 私が感じてるのは……。
 その後ろ姿に安心感と、これから起こることへの好奇心?
 怖がりの私には、とてつもなく珍しいことだよ!


 空には星も月もなかった。
 それでもポルタ社の活動する光が、渦巻く黒い雲をうつしだしてる。
 自然の雲じゃないね。
 高さは200メートルほど?
 ビルや港の明かりでしっかり見えてる。
 その港のほうが、騒がしい。
 野太いエンジン音や、金属が擦れ合う音が重なる。
 ペネトを緊急発進させるのかな。
 たしかに、ミサイルや大砲が効く相手ならそれでいいね。
 でも、相手は申請のなくポルタを開けてくるんだよ。
 渦巻は加速を続けて、今は竜巻のよう。
 中心には白い光が。
 小さかったのが一気に眩いものになる!

「私の後で、同じように叫んでね」
 そう、一度ふりむいた。
 そして、口にくわえた刀を、引き抜いた。
「私たちは落下する何かを止めたい!」
 その短い刀を、天に向ける。
 光をまとって。
 その光は、私たちも包み込む。
 さっき、朱墨ちゃんが「まあ、ママみたいな神さま気分が味わえたのはよかったよ」といった意味が、少しわかった気がした。
「エニシング・キュア・キャプチャー!!」

しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

クラスメイトの美少女と無人島に流された件

桜井正宗
青春
 修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。  高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。  どうやら、漂流して流されていたようだった。  帰ろうにも島は『無人島』。  しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。  男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?

メトロポリス社へようこそ! ~「役立たずだ」とクビにされたおっさんの就職先は大企業の宇宙船を守る護衛官でした~

アンジェロ岩井
SF
「えっ、クビですか?」 中企業アナハイニム社の事務課に勤める大津修也(おおつしゅうや)は会社の都合によってクビを切られてしまう。 ろくなスキルも身に付けていない修也にとって再転職は絶望的だと思われたが、大企業『メトロポリス』からの使者が現れた。 『メトロポリス』からの使者によれば自身の商品を宇宙の植民星に運ぶ際に宇宙生物に襲われるという事態が幾度も発生しており、そのための護衛役として会社の顧問役である人工頭脳『マリア』が護衛役を務める適任者として選び出したのだという。 宇宙生物との戦いに用いるロトワングというパワードスーツには適性があり、その適性が見出されたのが大津修也だ。 大津にとっては他に就職の選択肢がなかったので『メトロポリス』からの選択肢を受けざるを得なかった。 『メトロポリス』の宇宙船に乗り込み、宇宙生物との戦いに明け暮れる中で、彼は護衛アンドロイドであるシュウジとサヤカと共に過ごし、絆を育んでいくうちに地球上にてアンドロイドが使用人としての扱いしか受けていないことを思い出す。 修也は戦いの中でアンドロイドと人間が対等な関係を築き、共存を行うことができればいいと考えたが、『メトロポリス』では修也とは対照的に人類との共存ではなく支配という名目で動き出そうとしていた。

【VRMMO】イースターエッグ・オンライン【RPG】

一樹
SF
ちょっと色々あって、オンラインゲームを始めることとなった主人公。 しかし、オンラインゲームのことなんてほとんど知らない主人公は、スレ立てをしてオススメのオンラインゲームを、スレ民に聞くのだった。 ゲーム初心者の活字中毒高校生が、オンラインゲームをする話です。 以前投稿した短編 【緩募】ゲーム初心者にもオススメのオンラインゲーム教えて の連載版です。 連載するにあたり、短編は削除しました。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武

潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

処理中です...