ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~

リューガ

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47.優しさか? 忖度か?

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「おーい」
 その時、ビルから呼ばれた。
 有村さんから。
 だけど、遠くて続くことばが聞き取れない。
「有村店長からです」
 誰か、聞こえた人が伝えてくれた。
「話し合いするなら、店でしてくださいって。
 蚊に食われますよって」
 なるほど。
 それはもっともだ。
 そう思ってビルに目を向けたら。
 うわっ。
 ビルの前に、銃を構えた人たちがズラリと並んでた!
 窓からも!
 ロケット砲を担いだ人もたくさんいる!
 ビルの守備部隊だよ。
 まあ、当然の対応だよね。
 そして、その一人が有村さんのことばを伝えてくれたんだ。
「店に、戻ろうか」
 歩きながら達美さんが呼ぶ。
「そうですね」
 みんな、一時の興奮は冷えたみたいだ。
 みんな、落ち着くの早いね。
「あっ!」
 守備部隊から驚きの声がかさなった。
 滑走路を見て。
 私たちも向くと。
 ボンボニエールたちは、音もなく消えていた。
「あんまりお腹空いてないけど、・・・・・・ナポリタン、好きだったね」
 アーリンくんが聴かれた。
 朱墨ちゃんから。
「僕はもういただきました。
 あなたは、カレーライスでしたね。
 甘口の」
 私は教えることにした。
「カレーライス、あるよ」
 私も、夕飯はまだだ。
 帰るまでまちきれない。
 ここで食べちゃおう。
 朱墨ちゃんとアーリンくんは、好きな料理があるのに、うれしそうにはみえない。
 無表情のままだった。
 でも、話し合うことを認めあったんだ。
 それは素晴らしいことなんだ。
 だったらいいな。
「あっ!」
 そう言えば!
「すっかり忘れてた!
 私たちの動画、今日できあがったの!
 朱墨ちゃんたちのお陰だよ。
 ありがとう」
 私からのお礼を聴くと、朱墨ちゃんは今日初めての笑顔を見せてくれた。
「こちらこそ、いい訓練になりました」
 この子の巫女装束も、ボンボニエールと同じように消えていた。
 今は、白に青の横縞が入ったTシャツ。
 それにブルーグリーンの、すそが広いパンツ。
 するんと入りそうな、柔らかシューズ。
 涼しげな普段着だね。
「また、やりたいです」
 うれしくなるほど、ニコニコ顔で言われた。
 う~ん。
 それには予算がちょっと、その・・・・・・。
 その時、私のお腹の虫がグ~となった。
 
――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――


 私たちはグロリオススメに戻った。
 改めて見ても、素晴らしい量のお菓子!
 グ~
 腹の虫が、無心してくる。
 そう言えば、おなかがすいた時は、胃が強く縮むんだ。
 縮むけど、ねじれる動きもあるらしい。
 その動きが、胃の中の空気や液体などを腸へ押し出す。
 それが、この音なんだそうだよ。
 グ~ グ~グ~ 
「・・・・・・まずは、食べようか」
「そうですね」
 朱墨ちゃんがさそうと、アーリンくんが続く。
 泣けてくる。
 小学生にかばわれた。
「やっぱり、甘口のカレーをいただきます」
「ぼくも、今度は小さい牛丼をください」
 かばわれたからには?
 答えてもいいよね。
 席について、目の前のサンドイッチをパクッ!
 おいしい!
 テーブルにはまだまだ、美味が待ってる。
 キャラメルのロール、包まれたクリームの甘さがうれしい。
 ロールケーキ。
 もちろん、長さをたもったままの。
 ギュッと濃密なクリームチーズ。
 コクがあってお得感たっぷりの、チーズケーキ。
 しっとりフンワリなココア生地。
 それを包む艶やかで厚いチョコレート。
 食べると重圧な甘さをたっぷり楽しめる、チョコレートケーキ。
 地元の小豆を使った、どら焼きも忘れてはいけない。
 大きめで艶のあるこの小豆。
 そこから作ったアンコがたっぷり。
 
 ハア。
 至福の時間だ。
「あの、うさぎ?」
 達美さんに止められた。
 そのとき感じたのは、うらみ!
 それまでこの人から感じたこともないほどの。
 でもすぐ、自分への恐ろしさにとってかわられた。
 これから、しなきゃいけないことがあるのに。
 私、いつのまにか忖度されるのが当たり前になったのかな。
「アーリンくん。まず、さっき気づいたことから、話してくれますか」
 お箸は不得意なのか、スプーンで食べ終えたミニ牛丼は、空だった。
「・・・・・・はい」 
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