46 / 102
46.なんで重いの?
しおりを挟む
動かないボンボニエールが、1機だけあった。
朱墨ちゃんのファントム・ショットゲーマー専用機が。
そこから朱墨ちゃんが下りてくる。
スルスルと、手足を装甲の曲がった部分において。
馴れた様子で、巫女装束を引っかけることもなく。
履いているのは白足袋に草履だよ。
滑ることはなさそう。
「やめなさーい!」
私とならんで同じように手を振って止める。
ジャラジャラ、たくさんの鈴がなってる。
朱墨ちゃんが、ふところから金色の鈴を取りだしてふっていた。
私と同じように、少しでも目立つように振ているんだろう。
名前は忘れたけど。
そういえば、これが「鈴なり」の言葉の元になったらしい。
ウィーン ウィーン
再びモーター音が響きわたった。
目の前に突き付けられた、レーザー砲が、引っ込んだ。
マチェットも。
無数のボンボニエールたちは、こっちに向けた武器をことごとくそらしていく。
このボンボニエールの群れ、最初は圧倒されるばかりだった。
今は、うらやましいとも思えない。
「こいつら、MCOだよ」
達美さんだ。
「大部分、30パーセントが滅んだ文明の物だね。
ものすごーく怒ってる。
けど、今生きてる人のもあるみたい。
こっちは、装備の事を怒ってる。
生き霊ってやつだね」
これだけの相手を前に、構えもせず、近づいていく!
「装甲に耳を当ててごらん。
その神楽鈴ににた音が聞こえるから」
そう言って、朱墨ちゃんの鈴を指さした。
思いだした。
神楽は、神を祭る舞。
それでふる鈴だから、神楽鈴。
「聴かせてね」
達美さんがそう言って髪をかきあげると、人間的な耳がでる。
それを、ボンボニエールの足につけた。
この人の目や耳は特別なんだ。
各種センサーとネコの感覚を組み合わせて、隠された世界を見る。
当然、鼻や皮膚や舌も。
「へえ。僕にも聴かせてください」
真っ先に耳をつけたのは、やっぱり武志さん。
あの人はいつもそう。
私たちも、それにならった。
昼間の熱さがぬけ切ってない、人肌よりは高い温度の鉄板。
その奥から、音がする。
金属的な音。
鈴のようにも聞こえる。
マリンバや鉄琴みたいな、もう少し大きな金属の音もある。
さらに大きな、金属の動く音も。
こすれてる音。
ひねってる音。
でもそれは、中の駆動系とか、それを支える小さな機械の音じゃない。
コンピューターを冷やすファン、みたいな音じゃない。
例えるなら。
「この音? 今動いてる機械じゃなくて、もっと細かい?
木に耳をつけたときに聞こえる、あの音?
水を吸う音とか、木の葉が風に揺れてそれが聞こえる、とか言う、アレに似てる気がします」
我ながら、変な回答だ。
でも私のカンはこういうときに当たる。
「正解!」
達美さん。当たったんですか?
「MCOが、生き物の細胞みたいなものになって、このボンボニエールを形作ってる。
本物のボンボニエールに取り憑たら、どうなるんだろ・・・・・・」
「あ、あの」
朱墨ちゃんが耳を当ててたのは、あの大きなレーザー砲を積んだ機体だ。
そこから、目を見開いて聴いてきた。
「この機体は、何なんですか。
これは実機が存在するわけがないんです」
胴体うえの、いかにもバランスの悪そうな装備を指差して。
「あのレーザー、試作品があるだけです。
E部門でしか使う人いないんです!」
「あの、E部門、て?」
おずおずとした質問はアーリンくん。
「Eは、エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)のことです」
武志さんが答えた。
「コンピューターゲームで、たくさんの人がインターネットでつながって対戦します。
E部門は、そこから発生したヒーローのことです」
「それに、この服!」
朱墨ちゃんに起こった謎はまだある。
「ここへ呼び出されたら、急に着てたんです。
柄も、持ってる服とは違います。
こんなお仕着せ? みたいなこと、何で起こるんですか?」
それは・・・・・・分からないけど。
敵対するものでは? 無いよね。
「あの皆さん、意見があります・・・・・・」
おずおずとアーリンくんが手を上げた。
朱墨ちゃんのファントム・ショットゲーマー専用機が。
そこから朱墨ちゃんが下りてくる。
スルスルと、手足を装甲の曲がった部分において。
馴れた様子で、巫女装束を引っかけることもなく。
履いているのは白足袋に草履だよ。
滑ることはなさそう。
「やめなさーい!」
私とならんで同じように手を振って止める。
ジャラジャラ、たくさんの鈴がなってる。
朱墨ちゃんが、ふところから金色の鈴を取りだしてふっていた。
私と同じように、少しでも目立つように振ているんだろう。
名前は忘れたけど。
そういえば、これが「鈴なり」の言葉の元になったらしい。
ウィーン ウィーン
再びモーター音が響きわたった。
目の前に突き付けられた、レーザー砲が、引っ込んだ。
マチェットも。
無数のボンボニエールたちは、こっちに向けた武器をことごとくそらしていく。
このボンボニエールの群れ、最初は圧倒されるばかりだった。
今は、うらやましいとも思えない。
「こいつら、MCOだよ」
達美さんだ。
「大部分、30パーセントが滅んだ文明の物だね。
ものすごーく怒ってる。
けど、今生きてる人のもあるみたい。
こっちは、装備の事を怒ってる。
生き霊ってやつだね」
これだけの相手を前に、構えもせず、近づいていく!
「装甲に耳を当ててごらん。
その神楽鈴ににた音が聞こえるから」
そう言って、朱墨ちゃんの鈴を指さした。
思いだした。
神楽は、神を祭る舞。
それでふる鈴だから、神楽鈴。
「聴かせてね」
達美さんがそう言って髪をかきあげると、人間的な耳がでる。
それを、ボンボニエールの足につけた。
この人の目や耳は特別なんだ。
各種センサーとネコの感覚を組み合わせて、隠された世界を見る。
当然、鼻や皮膚や舌も。
「へえ。僕にも聴かせてください」
真っ先に耳をつけたのは、やっぱり武志さん。
あの人はいつもそう。
私たちも、それにならった。
昼間の熱さがぬけ切ってない、人肌よりは高い温度の鉄板。
その奥から、音がする。
金属的な音。
鈴のようにも聞こえる。
マリンバや鉄琴みたいな、もう少し大きな金属の音もある。
さらに大きな、金属の動く音も。
こすれてる音。
ひねってる音。
でもそれは、中の駆動系とか、それを支える小さな機械の音じゃない。
コンピューターを冷やすファン、みたいな音じゃない。
例えるなら。
「この音? 今動いてる機械じゃなくて、もっと細かい?
木に耳をつけたときに聞こえる、あの音?
水を吸う音とか、木の葉が風に揺れてそれが聞こえる、とか言う、アレに似てる気がします」
我ながら、変な回答だ。
でも私のカンはこういうときに当たる。
「正解!」
達美さん。当たったんですか?
「MCOが、生き物の細胞みたいなものになって、このボンボニエールを形作ってる。
本物のボンボニエールに取り憑たら、どうなるんだろ・・・・・・」
「あ、あの」
朱墨ちゃんが耳を当ててたのは、あの大きなレーザー砲を積んだ機体だ。
そこから、目を見開いて聴いてきた。
「この機体は、何なんですか。
これは実機が存在するわけがないんです」
胴体うえの、いかにもバランスの悪そうな装備を指差して。
「あのレーザー、試作品があるだけです。
E部門でしか使う人いないんです!」
「あの、E部門、て?」
おずおずとした質問はアーリンくん。
「Eは、エレクトロニック・スポーツ(electronic sports)のことです」
武志さんが答えた。
「コンピューターゲームで、たくさんの人がインターネットでつながって対戦します。
E部門は、そこから発生したヒーローのことです」
「それに、この服!」
朱墨ちゃんに起こった謎はまだある。
「ここへ呼び出されたら、急に着てたんです。
柄も、持ってる服とは違います。
こんなお仕着せ? みたいなこと、何で起こるんですか?」
それは・・・・・・分からないけど。
敵対するものでは? 無いよね。
「あの皆さん、意見があります・・・・・・」
おずおずとアーリンくんが手を上げた。
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
銀河戦国記ノヴァルナ 第3章:銀河布武
潮崎 晶
SF
最大の宿敵であるスルガルム/トーミ宙域星大名、ギィゲルト・ジヴ=イマーガラを討ち果たしたノヴァルナ・ダン=ウォーダは、いよいよシグシーマ銀河系の覇権獲得へ動き出す。だがその先に待ち受けるは数々の敵対勢力。果たしてノヴァルナの運命は?

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?
サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由
フルーツパフェ
大衆娯楽
クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。
トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。
いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。
考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。
赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。
言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。
たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。
No One's Glory -もうひとりの物語-
はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `)
よろしくお願い申し上げます
男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。
医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。
男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく……
手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。
採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。
各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した……
申し訳ございませんm(_ _)m
不定期投稿になります。
本業多忙のため、しばらく連載休止します。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる