39 / 102
39.殿様気分カフェ・グロリオススメ
しおりを挟む
私!
真っ直ぐ立つ!
お腹とアゴを引っ込める!
胸を上げて肩を落として!
ツムジから天井へ糸がピーンと引っ張るイメージ!!
……もう少し、ふんぞり返ってみよう。
大きな鏡の中の私は、おおっ悪役令嬢っぽい。
あっハハハ。カッコいい?
『それ、話を聞く対象の前ではやめなさいよ』
着付けを手伝ってくれた、お母さんが冷たく突っ込んだ。
「こんなの、勢いづけだよ」
『なら、いいけど』
今の私は、鮮やかなブルー。
市松模様の振り袖。
首元の襟に、白いレース。黒い蝶リボンをつけて。
シミ一つない麦わら帽子には、黒いリボンと白い大きな花。
髪は一房残して、まとめて帽子の中へ。
帽子をとるとサラ~と流れ落ちるように。
黒に流れるような白模様の帯を締めて。
日傘っと。全体にレースをあしらった白。
バッグも、同じような華やかさ。
和洋折衷の昭和初期ロマン風が、我が家のスタイルなんだ。
ゲタを履いたら。
「行ってきます!」
運転手さんに言った準備時間は、5分オーバーした。
ごめんなさい。
薄暗い峠をいそいで下りて、西側の海へ。
そして海沿いをはしる。
湾になってる東側とちがい、広い日本海をわたった波が、激しく打ち寄せる。
風も強い。
天候が激しくて道が封鎖になるなんて、しょっちゅうだよ。
そう言えば、冬には波の花が舞う。
波の花ってのは?
え~と、海中には植物プランクトンが、小さな植物がいるのね。
それが冬の荒波にもまれて潰されて、ネバネバの液をだす。
それが海水と混じって泡になり、風に舞うの。
全国的には、珍しい冬の風物詩だけど、汚くて臭いだけに思えるよ。
カプチーノみたい、とよく言われるけど、美味しそうに見えないよ。
・・・・・・また、そう言えば、がでた!
それだけ緊張してるのかな。
グネグネの道を猛スピードで進んでるのも、あるかな。
道がグネグネなのは、真っ直ぐ通せなかったから。
鋭くきりたった崖や岩場だらけの海岸線だからだよ。
荒々しい波風に、何万年も削られてきたからだよ。
所々の平地に、家々がぎゅうぎゅうづめになって町を作ってる。
窓からの灯りが目立つようになった。
でも、すぐ抜けて闇にはいる。
もう夜だ。
崖の向こうに、ひときわ明るい場所が見え隠れしてきた。
隣の市の中心部、じゃない。
港があって、停泊するペネトの灯りがみえる。
そして陸には、ペネトに負けないくらい目立つ建物があるの。
高さと幅は60メートル、長さは200メートルはある。
あの灰色の建物がポルタ社本社。
もとはプロウォカトルの整備工場だったのを、売ったの。
今でも、ウイークエンダーたちの整備はあそこでやってる。
裏山には戦闘機やヘリコプターのための空港もある。
きりたった崖をもつ、平らな山の上に。
私が向かうのは、そっち。
空港のターミナルビル。その最上階。
殿様気分カフェ、グロリオススメ。
ラテン語の輝かしい、グロリオサスと、日本語のオススメを合わせた造語だよ。
ポルタ社って、ボルケーナ先輩はいるし、武器は強いし。
私たちへのコネは強いし。
暗号世界の人には怖がられる対象なんだ。
そんなポルタ社を殿様気分で見てもらおう。そうすれば気分よくなってもらえるだろう。と言うのが、あのカフェなの。
華やかに飾られた空間で、美味しいお菓子とお茶、コーヒー。
そして崖の上、ビルの上からポルタ社本社を見下ろす。
ショーステージもある、シャイニー☆シャウツのコンセプトカフェ、コンカフェでもあるの。
良かった。
約束の時間どうりについた。
と思ったら、自動ドアが開いた。
私に関係なく。
「待ってたよ」
そこにいたのは、赤い瞳の女の子。
制服の赤い着物に白い帯をしめて。
左肩に、房に小さな花を並べた藤の花穂を、白く刺繍している。
短く刈りこんだ髪も赤い。
そして、頭からネコの耳がピンと立っている。はずなのに。
「少しだけ、話を聞いてちょうだい」
今日の耳は、ペタンと下りている。
飛行機の羽みたい。
ネコが不機嫌なときに見せる習慣だよ。
手をつかまれた。
薄い皮膚と脂肪の感覚。
それを支える骨と間接は、固い金属の感覚。
見た目どうりじゃない、破壊力を秘めたサイボーグ。
生き物と、この場合ネコと機械が合わさった存在。
真脇 達美さん。
私たちシャイニー☆シャウツのリーダーで、グロリオススメのオーナー。
幼なじみと言っていい、長い付き合いの先輩。
「プロウォカトルの仕事は、ハンターキラーの監督でしょ」
達美さんは、真剣な表情。
「そうですが。
あの、アーリンくんが、どうかしたんですか?」
私たちは近くのベンチに座った。
「今、店にいるの。
とんでもなく落ち込んでる」
そのとき、ハタと気がついた。
長い付き合いになるけど、こんな頼まれ方は始めて。
未知なる状況に、震えが走る。
どドッ、どうか、恐ろしいことが起こりませんように!
真っ直ぐ立つ!
お腹とアゴを引っ込める!
胸を上げて肩を落として!
ツムジから天井へ糸がピーンと引っ張るイメージ!!
……もう少し、ふんぞり返ってみよう。
大きな鏡の中の私は、おおっ悪役令嬢っぽい。
あっハハハ。カッコいい?
『それ、話を聞く対象の前ではやめなさいよ』
着付けを手伝ってくれた、お母さんが冷たく突っ込んだ。
「こんなの、勢いづけだよ」
『なら、いいけど』
今の私は、鮮やかなブルー。
市松模様の振り袖。
首元の襟に、白いレース。黒い蝶リボンをつけて。
シミ一つない麦わら帽子には、黒いリボンと白い大きな花。
髪は一房残して、まとめて帽子の中へ。
帽子をとるとサラ~と流れ落ちるように。
黒に流れるような白模様の帯を締めて。
日傘っと。全体にレースをあしらった白。
バッグも、同じような華やかさ。
和洋折衷の昭和初期ロマン風が、我が家のスタイルなんだ。
ゲタを履いたら。
「行ってきます!」
運転手さんに言った準備時間は、5分オーバーした。
ごめんなさい。
薄暗い峠をいそいで下りて、西側の海へ。
そして海沿いをはしる。
湾になってる東側とちがい、広い日本海をわたった波が、激しく打ち寄せる。
風も強い。
天候が激しくて道が封鎖になるなんて、しょっちゅうだよ。
そう言えば、冬には波の花が舞う。
波の花ってのは?
え~と、海中には植物プランクトンが、小さな植物がいるのね。
それが冬の荒波にもまれて潰されて、ネバネバの液をだす。
それが海水と混じって泡になり、風に舞うの。
全国的には、珍しい冬の風物詩だけど、汚くて臭いだけに思えるよ。
カプチーノみたい、とよく言われるけど、美味しそうに見えないよ。
・・・・・・また、そう言えば、がでた!
それだけ緊張してるのかな。
グネグネの道を猛スピードで進んでるのも、あるかな。
道がグネグネなのは、真っ直ぐ通せなかったから。
鋭くきりたった崖や岩場だらけの海岸線だからだよ。
荒々しい波風に、何万年も削られてきたからだよ。
所々の平地に、家々がぎゅうぎゅうづめになって町を作ってる。
窓からの灯りが目立つようになった。
でも、すぐ抜けて闇にはいる。
もう夜だ。
崖の向こうに、ひときわ明るい場所が見え隠れしてきた。
隣の市の中心部、じゃない。
港があって、停泊するペネトの灯りがみえる。
そして陸には、ペネトに負けないくらい目立つ建物があるの。
高さと幅は60メートル、長さは200メートルはある。
あの灰色の建物がポルタ社本社。
もとはプロウォカトルの整備工場だったのを、売ったの。
今でも、ウイークエンダーたちの整備はあそこでやってる。
裏山には戦闘機やヘリコプターのための空港もある。
きりたった崖をもつ、平らな山の上に。
私が向かうのは、そっち。
空港のターミナルビル。その最上階。
殿様気分カフェ、グロリオススメ。
ラテン語の輝かしい、グロリオサスと、日本語のオススメを合わせた造語だよ。
ポルタ社って、ボルケーナ先輩はいるし、武器は強いし。
私たちへのコネは強いし。
暗号世界の人には怖がられる対象なんだ。
そんなポルタ社を殿様気分で見てもらおう。そうすれば気分よくなってもらえるだろう。と言うのが、あのカフェなの。
華やかに飾られた空間で、美味しいお菓子とお茶、コーヒー。
そして崖の上、ビルの上からポルタ社本社を見下ろす。
ショーステージもある、シャイニー☆シャウツのコンセプトカフェ、コンカフェでもあるの。
良かった。
約束の時間どうりについた。
と思ったら、自動ドアが開いた。
私に関係なく。
「待ってたよ」
そこにいたのは、赤い瞳の女の子。
制服の赤い着物に白い帯をしめて。
左肩に、房に小さな花を並べた藤の花穂を、白く刺繍している。
短く刈りこんだ髪も赤い。
そして、頭からネコの耳がピンと立っている。はずなのに。
「少しだけ、話を聞いてちょうだい」
今日の耳は、ペタンと下りている。
飛行機の羽みたい。
ネコが不機嫌なときに見せる習慣だよ。
手をつかまれた。
薄い皮膚と脂肪の感覚。
それを支える骨と間接は、固い金属の感覚。
見た目どうりじゃない、破壊力を秘めたサイボーグ。
生き物と、この場合ネコと機械が合わさった存在。
真脇 達美さん。
私たちシャイニー☆シャウツのリーダーで、グロリオススメのオーナー。
幼なじみと言っていい、長い付き合いの先輩。
「プロウォカトルの仕事は、ハンターキラーの監督でしょ」
達美さんは、真剣な表情。
「そうですが。
あの、アーリンくんが、どうかしたんですか?」
私たちは近くのベンチに座った。
「今、店にいるの。
とんでもなく落ち込んでる」
そのとき、ハタと気がついた。
長い付き合いになるけど、こんな頼まれ方は始めて。
未知なる状況に、震えが走る。
どドッ、どうか、恐ろしいことが起こりませんように!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
忘却の艦隊
KeyBow
SF
新設された超弩級砲艦を旗艦とし新造艦と老朽艦の入れ替え任務に就いていたが、駐留基地に入るには数が多く、月の1つにて物資と人員の入れ替えを行っていた。
大型輸送艦は工作艦を兼ねた。
総勢250艦の航宙艦は退役艦が110艦、入れ替え用が同数。
残り30艦は増強に伴い新規配備される艦だった。
輸送任務の最先任士官は大佐。
新造砲艦の設計にも関わり、旗艦の引き渡しのついでに他の艦の指揮も執り行っていた。
本来艦隊の指揮は少将以上だが、輸送任務の為、設計に関わった大佐が任命された。
他に星系防衛の指揮官として少将と、退役間近の大将とその副官や副長が視察の為便乗していた。
公安に近い監査だった。
しかし、この2名とその側近はこの艦隊及び駐留艦隊の指揮系統から外れている。
そんな人員の載せ替えが半分ほど行われた時に中緊急警報が鳴り、ライナン星系第3惑星より緊急の救援要請が入る。
機転を利かせ砲艦で敵の大半を仕留めるも、苦し紛れに敵は主系列星を人口ブラックホールにしてしまった。
完全にブラックホールに成長し、その重力から逃れられないようになるまで数分しか猶予が無かった。
意図しない戦闘の影響から士気はだだ下がり。そのブラックホールから逃れる為、禁止されている重力ジャンプを敢行する。
恒星から近い距離では禁止されているし、システム的にも不可だった。
なんとか制限内に解除し、重力ジャンプを敢行した。
しかし、禁止されているその理由通りの状況に陥った。
艦隊ごとセットした座標からズレ、恒星から数光年離れた所にジャンプし【ワープのような架空の移動方法】、再び重力ジャンプ可能な所まで移動するのに33年程掛かる。
そんな中忘れ去られた艦隊が33年の月日の後、本星へと帰還を目指す。
果たして彼らは帰還できるのか?
帰還出来たとして彼らに待ち受ける運命は?

海道一の弓取り~昨日なし明日またしらぬ、人はただ今日のうちこそ命なりけれ~
海野 入鹿
SF
高校2年生の相場源太は暴走した車によって突如として人生に終止符を打たれた、はずだった。
再び目覚めた時、源太はあの桶狭間の戦いで有名な今川義元に転生していた―
これは現代っ子の高校生が突き進む戦国物語。
史実に沿って進みますが、作者の創作なので架空の人物や設定が入っております。
不定期更新です。
SFとなっていますが、歴史物です。
小説家になろうでも掲載しています。
後宮の胡蝶 ~皇帝陛下の秘密の妃~
菱沼あゆ
キャラ文芸
突然の譲位により、若き皇帝となった苑楊は封印されているはずの宮殿で女官らしき娘、洋蘭と出会う。
洋蘭はこの宮殿の牢に住む老人の世話をしているのだと言う。
天女のごとき外見と豊富な知識を持つ洋蘭に心惹かれはじめる苑楊だったが。
洋蘭はまったく思い通りにならないうえに、なにかが怪しい女だった――。
中華後宮ラブコメディ。
異世界起動兵器ゴーレム
ヒカリ
ファンタジー
高校生鬼島良太郎はある日トラックに
撥ねられてしまった。そして良太郎
が目覚めると、そこは異世界だった。
さらに良太郎の肉体は鋼の兵器、
ゴーレムと化していたのだ。良太郎が
目覚めた時、彼の目の前にいたのは
魔術師で2級冒険者のマリーネ。彼女は
未知の世界で右も左も分からない状態
の良太郎と共に冒険者生活を営んで
いく事を決めた。だがこの世界の裏
では凶悪な影が……良太郎の異世界
でのゴーレムライフが始まる……。
ファンタジーバトル作品、開幕!
No One's Glory -もうひとりの物語-
はっくまん2XL
SF
異世界転生も転移もしない異世界物語……(. . `)
よろしくお願い申し上げます
男は過眠症で日々の生活に空白を持っていた。
医師の診断では、睡眠無呼吸から来る睡眠障害とのことであったが、男には疑いがあった。
男は常に、同じ世界、同じ人物の夢を見ていたのだ。それも、非常に生々しく……
手触り感すらあるその世界で、男は別人格として、「採掘師」という仕事を生業としていた。
採掘師とは、遺跡に眠るストレージから、マップや暗号鍵、設計図などの有用な情報を発掘し、マーケットに流す仕事である。
各地に点在する遺跡を巡り、時折マーケットのある都市、集落に訪れる生活の中で、時折感じる自身の中の他者の魂が幻でないと気づいた時、彼らの旅は混迷を増した……
申し訳ございませんm(_ _)m
不定期投稿になります。
本業多忙のため、しばらく連載休止します。

SFサイドメニュー
アポロ
SF
短編SF。かわいくて憎たらしい近未来の物語。
★
少年アンバー・ハルカドットオムは宇宙船飛車八号の船内コロニーに生まれました。その正体は超高度な人工知能を搭載された船の意思により生み出されたスーパーアンドロイドです。我々人類はユートピアを期待しています。彼の影響を認めれば新しい世界を切り開けるかもしれない。認めなければディストピアへ辿り着いてしまうかもしれない。アンバーは、人間の子どもになる夢を見ているそうです。そう思っててもいい?
★
完結後は2024年のnote創作大賞へ。
そのつもりになって見直し出したところいきなり頭を抱えました。
気配はあるプロト版だけれど不完全要素がやや多すぎると猛省中です。
直すとしても手の入れ方に悩む部分多々。
新版は大幅な改変になりそう。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる