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36.突然のロボルケーナ

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「あの、そのよろこびを記さない?」
 しのぶが虹色ノートをさしだしていた。
「お姉ちゃん、これ」
 そうだね。
 完成したことを書かなきゃね。
 それに気づいてアンナと筋金くんも手をはなす。
「それもそうだけど、モデルになった人たちに見せて、それでOKをもらうんでしょ」
 ああ、そうだった。
 私が演じた浜崎 春代さんに、見てもらわないとね。
「ところで、真脇と鷲矢はいつこれを見れるんだ?」
 白部長もうれしそう。
 でも、その指摘にハッとする。
「そうだった。あっ!
 でも、いきなり送るのはないよね」
 アンナの言うとおり。
 真脇 達美さんは私たちシャイニーシャウツのリーダー。
 鷲矢 武さんはピアニスト。
 だけど、今はハンターキラーとして働いてる。
 2人ともポルタ社の戦闘サイボーグだから。
「あっ、ニュース速報でやってる」
 月島さんがスマホで調べてくれた。
「もう終わったみたいだよ」
 そうですか。ならすぐ報告できますね。
「ポルタ社。今日、出撃」
 虹色ノートに書き込む私。
 アンナが検索エンジンに音声入力していた。
「・・・・・・あれ?」
 とまどった声だね。
「ねえ。
 このロボット昨日、朱墨とやらが騒いでたやつなんじゃないの?」
 スマホを見せてきた。
「?ロボルケーナのこと?」
「そう、それ。
 あれって工場に戻されたんじゃないの?
 なんでペネトの乗ってるの?」
 乗ってたら武器管理に違反だよ。
 懲罰ものだよ。


 スマホの中で、今日の狩りが無事に終わったと、臨時ニュースが言っていた。
 夕日に照らされた海。
 全長293メートル。満載排水量60,021トン。
 純白の巨大な船を上空から映した映像だよ。
 空母形式として知られる、広く平らな甲板。
 その甲板をトンネル状に囲う、特長的なブリッチ。
 たしかにペネト。
 私たちのリーダーとピアニストを連れて行った急襲揚陸艦だよ。
『何でしょうか。甲板の後ろに見たことのないロボットが乗っています!』
 緊迫したレポーターさんには悪いけど、私はこういう時の『見たことのない』はあまり信じない。
 改造することはあっても、元となるロボットというのは、そもそも数がないから。
 でもそれは、ペネトの前甲板左に鎮座するそれは、分からなくて当然だと思った。
 同時に、私のついさっきまでの、動画完成の喜びさえ吹き飛ばした。
 心が寒々しくなってくる。

 オレンジ色の日に照らされて。
 赤いドラゴン型の機体。
 純白で何枚もの鳥のような羽根。
 確かにロボルケーナがいた。
 ただし、テントの中のように羽根でしゃがんだ機体をおおう姿じゃない。
 羽根はすべて背中に回り、閉じられている。
 首も背も高く上がり、凛々しい顔を進行方向に向けている。
 装甲板というより、芸術作品としての鑑賞性を求めたようなボディが日の光に生える。
 でも、その左右には、その手に握られていたものが、美しさを吹き飛ばす。
 右手に、小さな筒が円形に並んだもの、明らかにバルカン砲が。
 左手には、上下平行に並ぶ巨大な筒、2連装の大砲だ。
 それが本来のロボルケーナの体形を大きくはみだし、前を向いている。
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