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23.予期せぬ怒り

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「ま、待ってください!」
 突然、男の声が引き裂いた。
 あの、落ち着いていればイケメンとしか言えない、リッチーおじさまが。
「そういう扱いでいいのですか!?
 もっとこう、二つの世界の未来に資するような……」
 あまりのセッパ詰まった様子に、絶句してしまった。
 一方リッチーおじさまも、何も考えずに叫んだのか、絶句している。
「……そうだ。もとはボルケーナ様に忖度し、勝手にロボルケーナの使用を変えた者たちがいた。
 それは上位貴族系と聖職者系だ。その団員をすべて解雇するとか!」
 ……は?
「「そんなことをしたら、騎士団が3分の1になります!」」
 二つの声がハーモニーになった。
 思わず見つめあう、朱墨ちゃんとオズバーン団長が。
「そもそも、僕も上位貴族なのに……」
 オズバーン団長が困っている。
 それを見て、リッキーおじさまは「ああっ」とうめいた。
 深い後悔を感じたのか、頭を抱えてうずくまってしまう。
 なに、どういうこと?
 訳が分からないけど、こっちまで罪悪感に飲み込まれてしまうような、落ち込み方……。
「り、リッチー副団長!」
 悲痛な声が聞こえてきた。
 あの、朱墨パパにどなり付けられていた店員が。
 凍り付いたようなノドを、無理やり使ったようなひび割れた声が。
「よ、よせ!」
 たちまち、ほかのお店の人たちに囲まれる。
 思わず、暴力的なことが起こるんじゃないか、そんな想像に身を震わせる。
「彼らを怒らせてどうする!」
 でも、そんなことはなかった。
 あちらはあちらで、共感がお互いを守っているらしい。
 でも、代わりにさみしさがやってくる。
 私たちって、そんなに孤独なのかな……。
「わかってる。わかってるんです。分かったからぁ!」
 うつむき、固く硬く体をこわばらせ、リッチー副団長がうめいた。
「ボルケーナ様は、生まれはこの宇宙だが、育ったのははるかに高次元の神々の世界。
 そこで教育を受けた本物の女神!」
 そう。あの人の本質はそれ。
 時空をつかさどる女神。
 でも……その先は私でも知っている。
「その神の最終試験は、異なる世界で時を過ごし、学ぶこと。
 し、しかしながら……」
 そういえば、この人はなんでその事を今さら言い始めてるんだろう……。
「ボルケーナ様のお体は、大変目立つ!
 ボルケーニウムのあらゆるエネルギーに反応する性質によって!
 我々はそれにより、事の重大さもわからず、攻撃した!
 我々の世界への、未知の脅威として……」
 まずい! 止めなきゃ!
「あの、ボルケーナ先輩はそのことを許してますよ。
 ほかの神とは性質が違うことは、本人が一番よくわかってるって、言ってましたし」
 でもリッチー副団長は、私の言葉を振り払うように体を左右に振った。
「いや、我々の世界だけじゃない!
 その前も、その次も、幾多の世界で同じことが繰り返されたぁ」
 そして憎しみを込めた目をあげた。
「あんたも!あんたも、あんたの世界もそうだろ!?」
 そういって指さした先には、たくさんの暗号世界の人が。
 指さされた人たちは、誰も平穏ではいられない。
 泣きそうになるか、罪悪感を浮かべてうつむくだけだ。
「結局彼女を受け入れたのは、まったく奇跡の力を使えないこの星だぁ。
 そして、こんな世界を標準だと思うようになったぁ
 ボルケーナ様は、認識が狂ってしまったんだぁ!」
 それを聞いた時、私は全身が震え、火の中に投げ込まれたような熱と、不快感に襲われた。
 朱墨ちゃんのロボルケーナの使用を勝手に変えたのも、機械系装備無視して異能力系ばかり持ってくるのも。
 今更、先輩の気を引きたいからだ。
 私たちのことなんて、ちっとも考えてないんだ!
 強い怒りが、私の右手を振り上げさせる!
 揺れすげて尻もちをついた男の頭に、振り下ろすハンマーになるよう望みながら。
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