ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~

リューガ

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17.全自動こん棒つなぎマシン

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「おい。なんでハイテクビームライフルがサビついて折れかかってるんだよ」
 ……聞こえてくるフキゲン声は止められない。
「そ、それは、ワタクシたちの世界には、こ、これら作り物を整備する能力がないからであります」
 また暗号世界の店員さんが、ハンターキラーに怒られてる。
 ハンターキラーは筋肉質な男の人だ。
 店員さんも決してひ弱じゃないけど、迫力に押されてタジタジ。
「我われは進化の果てに異能力を手にいれ、その過程で物作りの能力を捨てました」
 浮かべるのは、深刻さをごまかすための、笑顔。
「しかしながら、このような遺産でも、研究資料としては価値があるものかと……ね」
 当然、ハンターキラーさんが詰め寄った。
「それ! 買います!」
 そうしたら横から、女の人が割って入った。
 茶色い髪で、大きな3角のケモノ耳と、髪と同じ色の三日月のようなシュッとしたシッポ。
「こういう物には、持ち主の強い想いがこもってるのよ。
 それは呪術には使い道があるから……」
「俺には使い道がなくていいのかよ!」
 あ、あの2人って。
「うちのパパとママです」
 朱墨ちゃんが言いにくそうにつぶやいた。
 そうだ。
 あの男の人がフォクシン・フォクシスの副隊長で、女の人が瑞獣たちを含めた総隊長。
 九尾 大さんと九尾 疾風子さん。
 疾風子はシップウ子じゃない。トシ子と読むの。
 化け狐で、海の向こうに見える山脈の守り神でもあるの。

 ……ええい! あの人たちも連れて行こう!!
 私と朱墨ちゃんは方向転換。
 私はママさんの、朱墨ちゃんはパパさんの手をとって、無理やり走りだす。
「手が空いてる人は、一緒にきなさい!
 そうでない人も、あとでポルタ社の“全自動こん棒修理マシン”を見てください!
 見なさい!!」

――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――◆――

 来た倍以上の時間がかかったけど、テントには入れた。
 目指すはポルタ社の紫のロゴがあるパビリオン。
 ポルタ・プロクルサトル、ラテン語で門の先駆者を意味する2つのP。
 そのPのたて棒をVの字に合わせたロゴマーク。
 目立つ製品は、ドラゴン・マニキュアとドラゴン・ドレス。 
 タイプごとに灰や黒、茶色と緑のマダラに塗られてる。
 ドラゴン・マニキュアは、装甲や体力を増強する機械を服のように着こむ、強化外骨格。
 パワードスーツとも言う。
 ここにあるのは最新型で、マーク5の試作機。
 宇宙服にもなるし、翼がついて空も飛べる。
 ドラゴン・ドレスは人型ロボット。
 高さ3メートルで重さが2トンあって、人が乗りこむ。
 これも空が飛べて、いきなり宇宙へ飛ばされても、へっちゃら。
 さらに、どちらも多彩な装備を運用できる。
 その前にできた人がきが、高性能ぶりを物語る。
 パワードスーツも人型ロボットも、ほかの会社からいろいろでてる。
 けど、ポルタ社のものが最高級品って言われてるの。
 でも私が目指したものは、そんなハンターキラーたちの目を引くものじゃないの。

「見ていただきたいのは、これです」

 自動で動くいくつかの機械をベルトコンベアでつないだもの。
 工場にいくらでも並ぶような、地味な機械。
 まだ試作機だから、使われてる部品も古いもののツギハギ。
 その入り口には、曲がった鉄の棒や、折れた木の棒が、手で持てるコンテナにはいって山積みされている。
「これが、全自動こん棒修理マシン」
 ここまでは、シロドロンド騎士団の目はうつろなまま。
「ボルケーナ先輩が作ったものです」

 そう言ったら、4人は駆けだした。
 目をむいて、マシンをなめるように見てるよ。

 奇怪なものを見た衝撃で、周りの人たちもこっちを向いた。
 私の顔は、ひきつってきた。
(私たち地球人は、こんな人たちに頼らなきゃいけないの? )
 そんな思いは、できるだけ隠して。
「第四次世界大戦の武器、という考えがあります」
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