ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~

リューガ

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13.ちょっとだけ、美味しい思い

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 シャイニー☆シャウツってのは、私たちがやってる地域のクラブ活動のこと。
 主な活動は朱墨ちゃんの言うとおり動画配信。
 ローカルアイドルってやつだよ。
 オリジナルの歌やダンス、ドラマなんかを流してる。
 学校のクラブ活動の一環として認められてるの。
 そもそもやる人が少ないから、魔術学園や小学生、大人たちも交えてね。
 顧問は、安菜のパパ。

 誇り高く、安菜は誘う。
「このあとの公演は、猫たちはお留守番」
 猫たちというのは、シャイニー☆シャウツの一番人気のアイドルたちのことだよ。
「で、うさぎは会議優先で練習できなかったから出番がないの。
 主演はうちにパパだけど、いいかな?」
 そういうとヨレヨレになったブレザーを着た。
 そしてバパッて右肩を脱ぎ、また戻す。
 激しいジャケットプレイだよ。
「良輔・トロワグロさんですか?
 あの人の腕なら、疑う事などありえません! 」
 そう言って2人は、ふたたびがっちりとあく手を交わす。
 ……全くかわいいな。

「お待たせしました。
 イカフライバーガーとポテト。チェリータルトとアイスコーヒー。ブルーベリーバームクーヘンとオレンジジュースでよろしかったですか?」
 私たちのおやつがやって来た。
「「「よろしかったでーす」」」
 私がイカフライバーガーとポテト。
 安菜がイチゴバナナパフェとアイスコーヒー。
 朱墨ちゃんがブルーベリーバームクーヘンとオレンジジュースなの。
 私も料理人の端くれ。
 その味は……。
 さすがにおいしい!
 悔しいけど、おいしい。

「それで、これからどうするの?」
 私は訊いてみた。
「どうするの、というと?」
 朱墨ちゃん、考えていなかったか。
「このままだとトップブランドに怒鳴った。
 「なに考えてるんだ!」ということになるよ。
 仲裁を頼んで正式に抗議するなら、できるけど」
 私の提案に朱墨ちゃんは。
「お断りしてもいいですか?」
 断った。
 それは、なんでかな?
「言いたいことは、自分で言いたいんです。
 他人に頼んでも、私の考えが正確に伝わらなかったら嫌だし」
 誇り高いんだね。
 それでも、私は言うしかない。
「でもね、暗号世界に限らずほかの組織に文句を言うときは、正規のルートで通してほしいの。
 それがルールだよ」
 朱墨ちゃんは、黙って聞いている。
 その眼には、恨めしそうな光が見えて……。
 それでも、やめない。
「その入り口に、私も含めてもいいよ。
 世界が代われば、ルールも違う。
 それがほんのわずかな雰囲気の違いでも、相手の世界では「話を聞く価値なし」とされちゃうかもしれないよ。
 正規ルートに話を通せば、それも調べてもらえるから」
 朱墨ちゃんが顔を伏せた。
 恨みの光が、目から消えたかな?
 だったらいいな。
「か、感動した!」
 ホワット?
 安菜が、拍手とともに叫んだ。
「初めてうさぎが、すごいエリートに見えたよ!」
 ……それはどうも。
 なんとなく、苦笑いがでるね。

 その時、入り口に目が入ったのは、本当に偶然。
 座った席がそこだったからなの。
 今、店に入ってきたのは。
 顔をひきつらせながらも背筋を伸ばした、シロドロンド騎士団だったの。
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