ウイークエンダー・ラビット ~パーフェクト朱墨の山~

リューガ

文字の大きさ
上 下
9 / 101

9.ハテネーゼのお祭りは

しおりを挟む
 地域文化というのかな
 この街、ハテノ市に住む人たちは、日本のほかの人たちとはちょっと違う。
 ハンターキラーに限らない。
 ハテネーゼと呼ばれる人々が、ここで盛り上がっている。

 テントの入り口は、高さ53メートルのウイークエンダーが入れる特殊繊維製のドア。
 それもあるけど、今回は車両用のシャッターで。
 ビニールのすだれをくぐると、ああああっ! 涼しい!
 中はまさに、お祭り広場。
 そして、この街ならではの光景が広がるの。
 まずは屋台。
 ハンターキラーの装備が並んでる。
 地球製なら軍用ドローンとか、銃とか、車とか。
 暗号世界なら、怪獣の体を利用した剣や盾、鎧も多いね。
 これらを目当てに、わざわざ足を延ばしてやってくる人たちもいる。
「せっかく地球にいるんだし」
「思い出づくりだよね」
 楽しそうな話声。
 全くかわいいな……。

 ごついハンターキラーの男女にならんで、紺色の学生服たちがちらほら。
「銃、詳しいね」
 クールビズ姿の大人の男性が、頭に黒い触角をもつ昆虫のような固い肌を持つ異星人に話しかけてる。
「はい! 勉強しました」
 バーストによって、普通の物理事情では起こらないことを起こす異能力者が現れたのは、もう話したよね。
 この町には、そんな異能力者のための学校があるの。
 平均的身長だった男子が突然、上下左右前後に4メートルほど膨れ上がる。
 制服も、それに合わせて膨らんでいく。
「やっぱりこのほうが背が高くても似合うかな」
「うわ。でっかいハンマーだな」
 紺色のブレザー、同じ色にチェックの入ったスラックスかスカート。
 頭を紺色の布でおおう女子もいる。ブルカだよ。
 それは、異能力者の通う学校、魔術学園の制服なの。
 制服のデザインのグレードはハテノ中と大して変わらない気がするのに。
 何となくシュッとしてる気がするのはなぜだろう。
 魔術学園は幼年部から小中学、高等、大学、大学院までそろってる。
 制服を着るのは幼年部から高等部まで。
 バーストから20年以上の間に、そんな学校もできた。
 海外や異星人の入学も多いの。
 そんな彼らの中には、ハンターキラーとして生計を立てている人も多いの。
 彼らもお客として、灰色の制服と一緒になって遊んでる。
 そうだ。安菜のママもそんな魔術学園の生徒だったね。
 能力は安菜に受け継がれなかった。

 まあ、それは置いておいて。
 目指すはクレープ、から揚げ、まるまる焼き、その他もろもろの屋台!
「ねえ、チョコバナナにしない?」
 安菜が誘う。
 懐かしいな。
 小学校低学年のころ、安菜がチョコバナナを食べようとしたとき、(やーい、共食いだ)とからかう同級生がいた。
 安菜は確かにチョコレート色。
 だからって、チョコレートを食べちゃいけないって、おかしい!
 そう思ったから、かばった。
 もともとタフだった安菜が、必要だったとは思えないけどね。
 でも、それがロマンスの始まり。
「それもいいね。あ!
 たこ焼きが2件ある! 食べ比べしよう!」

 ところで君は、ドスの効いたキンキン声というものを聞いたことがあるかな。
「わかるよ。 なんで赤いボディと白いウイングかぐらい」
 その声はお祭りのザワザワを超えて聴こえてきた。
 私の美食欲をなえさせる、怒りと憎しみが込められた声が。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

バグった俺と、依存的な引きこもり少女。 ~幼馴染は俺以外のセカイを知りたがらない~

山須ぶじん
SF
 異性に関心はありながらも初恋がまだという高校二年生の少年、赤土正人(あかつちまさと)。  彼は毎日放課後に、一つ年下の引きこもりな幼馴染、伊武翠華(いぶすいか)という名の少女の家に通っていた。毎日訪れた正人のニオイを、密着し顔を埋めてくんくん嗅ぐという変わったクセのある女の子である。  そんな彼女は中学時代イジメを受けて引きこもりになり、さらには両親にも見捨てられて、今や正人だけが世界のすべて。彼に見捨てられないためなら、「なんでもする」と言ってしまうほどだった。  ある日、正人は来栖(くるす)という名のクラスメイトの女子に、愛の告白をされる。しかし告白するだけして彼女は逃げるように去ってしまい、正人は仕方なく返事を明日にしようと思うのだった。  だが翌日――。来栖は姿を消してしまう。しかも誰も彼女のことを覚えていないのだ。  それはまるで、最初から存在しなかったかのように――。 ※第18回講談社ラノベ文庫新人賞の第2次選考通過、最終選考落選作品。 ※『小説家になろう』『カクヨム』でも掲載しています。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

【なろう440万pv!】船が沈没して大海原に取り残されたオッサンと女子高生の漂流サバイバル&スローライフ

海凪ととかる
SF
離島に向かうフェリーでたまたま一緒になった一人旅のオッサン、岳人《がくと》と帰省途中の女子高生、美岬《みさき》。 二人は船を降りればそれっきりになるはずだった。しかし、運命はそれを許さなかった。  衝突事故により沈没するフェリー。乗員乗客が救命ボートで船から逃げ出す中、衝突の衝撃で海に転落した美岬と、そんな美岬を助けようと海に飛び込んでいた岳人は救命ボートに気づいてもらえず、サメの徘徊する大海原に取り残されてしまう。  絶体絶命のピンチ! しかし岳人はアウトドア業界ではサバイバルマスターの通り名で有名なサバイバルの専門家だった。  ありあわせの材料で筏を作り、漂流物で筏を補強し、雨水を集め、太陽熱で真水を蒸留し、プランクトンでビタミンを補給し、捕まえた魚を保存食に加工し……なんとか生き延びようと創意工夫する岳人と美岬。  大海原の筏というある意味密室空間で共に過ごし、語り合い、力を合わせて極限状態に立ち向かううちに二人の間に特別な感情が芽生え始め……。 はたして二人は絶体絶命のピンチを生き延びて社会復帰することができるのか?  小説家になろうSF(パニック)部門にて400万pv達成、日間/週間/月間1位、四半期2位、年間/累計3位の実績あり。 カクヨムのSF部門においても高評価いただき80万pv達成、最高週間2位、月間3位の実績あり。  

ビキニに恋した男

廣瀬純一
SF
ビキニを着たい男がビキニが似合う女性の体になる話

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

3024年宇宙のスズキ

神谷モロ
SF
 俺の名はイチロー・スズキ。  もちろんベースボールとは無関係な一般人だ。  21世紀に生きていた普通の日本人。  ひょんな事故から冷凍睡眠されていたが1000年後の未来に蘇った現代の浦島太郎である。  今は福祉事業団体フリーボートの社員で、福祉船アマテラスの船長だ。 ※この作品はカクヨムでも掲載しています。

処理中です...