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第3章 二人の冒険

第26話 オークを退治せよ!

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依頼はこんな感じ。



≪モンスターを討伐してきてください。

目標、オーク 3匹


報酬、ポーション(小)2個≫



依頼表を再度確認しながら、木が並び立つ森の中を歩いている。依頼は承けたときにギルドカードに登録され、依頼が完了するまでその依頼をギルドカードで見ることができる。


「オークは豚の化け物だよね」

「そうだ。オーク。木の金棒を持ち歩くモンスター。嗅覚が非常に発達しているが、知能は残念ながら低く、初心者にお勧め。だそうだ」


モンスター図鑑を読み上げていき、オークの特徴を私に知らせる。オークはイメージ通りの二足方向で歩き、むき出しの大きい腹を見せ。腰には薄くボロボロとした布を纏っている。


「オークは主に群れで行動している。知能が低くてもコンビネーションは抜群で繁殖力も高い。持っている金棒もアレで強力だ」

「強力なのは分かるけどさ、毎回強力とか言わないよね」

「じゃあ音で表現するか?」

「強力のままでお願いします」


音で表現されては教え方が下手な人に見えてしまう。所謂いわゆる『バーンとなって、きゅっとしてドカーン!』みたいな事になっているし、ヘンリーが見た目に反して子供っぽい事をしている所が想像つかないものだ。


「話はそれぐらいで終わろう。………モンスターのお出ましだ」


緊張感が含まれた低い声を発する。普段は強気な筈なのに、何故ヘンリーが緊張しているのか。
しかし、空気が変わったのは肌でもわかる。それは………目の前には依頼に書かれていたオークが5体もいるのだ。太い鳴き声を出しながら豚特有の声を発する。
2匹も多くいるオークを見て、ヘンリーは小声で呟く。


「俺が先に出る。お前は出来る限りオークにダメージを与えろ。いいな?」

「了解」


承知すると、一瞬で消えた。
アレ?と思いきや1匹のオークに殴り掛かっていた。オークは仲間が殴られた事に驚愕した様子で、次々とヘンリーに金棒を振り下ろす。
私はヘンリーに当たらぬように、下級魔法を2匹のオークに当てる。オークは低い唸り声をあげながら、私に突進してきた。金棒をかわしつつ、魔法を頭目掛けて打ち付ける。


「キューカ!毒の牙ポイズン!」

「キュ『わかった~』」


私の呼び掛けに答えると、オークに飛び乗り小さな口から鋭い牙を出す。
小さな口でオークの腕にかぶりつく。オークは小さな痛みが走った場所、キューカがいる腕を叩こうとしても、キューカはすぐにかわし、私の肩に乗る。
数分間、オークの反応が何もなく、毒の回りが遅い?と考えている途中……。オークは胸を押さえ始め、呻き声をあげる。仲間の様子がおかしい事に気づいた別のオークは、何度も肩を揺らす。
毒が回り、顔が真っ青になると、白目を向いて倒れた。


(毒怖っ!?回るのは遅かったけど、中々強力だね………)


オークの苦しそうな顔を見て、改めてキューカの存在は異様なのだと悟られる。
ヘンリーはというと、もう1匹のオークを殴り付けているが、仲間が倒されヘンリーの行動を学習し、巨体に似合わぬ動きを見せている。
本当に初心者でも倒せるのかと思わせるオークの動きに、苦戦しているようだ。

助太刀しようとするが、倒しきれていない一匹のオークが私の邪魔をする。


(オークは2匹。これならいける……)


私は目の前にいるオーク目掛けて、今度は中級魔法を至近距離で当てる。中級だけあって、ダメージは大きいがまだ倒れなかった。
オークは耐えたぞと言いたそうな顔で、金棒ではなく素手で私を殴ろうとする。私は後退り、防御魔法を唱える。


炎の壁ファイアウォール!」


炎で出来た壁に包まれた私は、オークの攻撃を受けず、逆にオークがダメージを負った。あまりの熱さに手を引っ込めたオークを見て、ここで魔法を唱える。


神龍の裁きゴッドシリオス・キャノン!」


今日一番の強力な魔法。この呪文は名前にシリオスとある。シリオスは精霊獣でも、この世界では神に近い存在と云われている。
呪文に『シリオス』と付けられた呪文が一番強力と聞き、使ってみた・・・・・

ゴ○ラに近い光線を撃った事で、オークは遠くまで吹き飛び、瀕死どころか死んでしまったのではないかというレベルだ。


(災害レベルだよね……。どうしよう)


苦笑し、ヘンリーの方を向くと、お待ちかねのびっくり仰天といった顔をしている。オークを倒し終えている所を見ると、なんとか依頼は出来たと満足感が溢れる。
それはいいとして、これをどう説明しようか頭の中で整理していると、ヘンリーは強力な呪文ではなく、トンデモナイ事を言った。


「……お前、誰だよ」









「へ?」


私は意味が分からなく、首を傾げた。


「とぼけてるの?瞳だよ、一緒に戦ってたじゃん」


私はなんとか答えを返すと、私の顔をまじまじと見続けている。


「………顔になんか付いてるの……?」

「い、いや。………お前がだった事に驚いてるだけだ。女じゃなかったのか?」

(ん?私がおとこ………男?……………ま、まさか)


私はさっき強力な魔法を使った。それが、どんな意味を出すのか………。
私は胸元を触るが、膨らみがなく、ぺったんこだ。


「今の私さ………。どんな外見してる?」

「簡単に言うと、ちょっと細い外見をしている男だな。まあ、男の娘的な?」

「……………」




これがペナルティ?………最悪じゃないですか!!!

 




ーーーーーーーーーーーーーーーーー
ペナルティ発動しました。
完全に趣味です。すみません。


次回、リューもクエストを受けます。
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