15 / 22
緊急発進! 濃霧の先にあるもの…!?(第二幕)
シーン5
しおりを挟む
「こっ、コイツは…!?」
ぬっとばかりに白い霧の中から現れたのは、その大きさと言いカタチと言い、みずからを鏡に映したかのように酷似した見てくれで、もはや見まがいようのないシロモノであった…!!
「びっ、ビーグルⅤ!? オレとおんなじ機体じゃねえか! 味方機がどうしてっ…」
霧の中にたたずむその姿はまるで幽霊みたいなありさまだ。
それがついにはゾンビさながら、のたくらとぎこちなく動き出すのをこちらは若干引き気味で見やってしまうのだが、よくよく見てみるにつけその左肩にあったマーキングには、ただちにぎょっと左右の目を見開くウルフハウンドだ。
てっきり視界の悪さに混乱した5番隊の僚機かと思いきや、そこにあったのはまったく別の予想だにしない部隊番号だった。
「Ⅶ!? 七番隊だと!! おいおいっ、昨日壊滅したってはなしの部隊じゃねえか! まさか、まんまと敵に拿捕されちまったってのか? このポンコツめ!」
自軍の味方機同士ならいちいちアラームを発することもないのもうなずけるが、それだけにこの状況は厄介だろうと二の足を踏んでしまう。
あちらはただ呆然と立ちすくむか一歩、二歩と微速前進しているだけで、これと何かを仕掛けてくるそぶりもないのもまた不気味だった。
ただのかかしも同然だ。
敵軍の機体だったら迷うことなし即座に撃破していたはずが、利き手側に持たせたヘビイガンを撃つのがままならないほどに今はお互いに接近してしまっている。こちらまで誘爆させられる危険を回避するのであれば、格闘戦で仕留めるしかないとは判断しながら、このきっかけを掴みかねていた。
まるで抵抗する様子がないあちらは見ようによっては白旗を掲げているようにも、あるいは助けを求めているようにすら見える。
「くそったれ! てめえは敵なんだろうが? 味方のツラをしていようが、そうやってだまし討ちしうよとしてやがるのがバレバレなんだよ! 卑怯なくされレジスタンスどもが!!」
相手の正体そのものが不明なのはわかっていたが、いらだちまぎれうなりと共に強く毒づいてしまうオオカミだ。この視界の悪さでは飛び道具は使えないとアーマーに装備していた巨大なマシンガンを投棄する。本来なら背後のラックに固定するのがセオリーだが、目前の敵にスキを見せるマネはできないと判じてのことだ。
それをまた拾い上げて暴発の危険性を無視して引き金を引くよりはいっそ相手の武器をはぎ取ったほうがいいとも考えていた。
同じタイプのアーマーなのだからむしろ合理的だ。
整備担当の機械小僧はきっと嘆くのだろうが…!
派手な音を立てて地面に転がる巨人仕様のハンドガンを心の片隅で意識しながら、視界はずっとみずからの正面に固定したまま離さない。目の前の機体に乗っているのが敵勢力である確証を求めることはもうやめにして、同型機のコクピットめがけて繰り出すのをパンチにするか、さらに打撃力の高い装備品のダガーにするか…! あえて利き手ではない左でダガーの操作レバーに持ち替えようとしたところに、しかしまた新たなる変化が今度はこの右手から現れた!
「なっ、なんだ!? また新手っ、おまけにまたビーグルⅤかよ!! て、てめえは五番隊の機体じゃねえか!! このすっとこどっこいが、めくらだからって、うおっ、なんだ??」
いきなりドタドタと慌てた様子で白い壁から飛び出す同型の機体は、何故かこちら見るなりに猛然とアタックを仕掛けてきた! 肩にはしっかりとⅤ(Ⅴ番隊)のマークがあるのだが、そんなことはお構いなしに衝突覚悟の猛チャージだ。
ヤバいっ…!!
正面に敵を見据えたままで真横からの不意打ち(?)には内心でひやりとしたものが流れたが、幸運にも激突寸前のところで錯乱した5番隊の僚機はその場で体勢を崩してつんのめることとなる。
はじめ唖然と横目で見ながらそれがついさっきおのれが投げ捨てた武器によるものだと瞬時に理解! 耳の中に聞こえるわけのわからない悲鳴かうめきみたいなものに舌打ちしながら無様に手足をバタつかせる相手の機体を利き手で殴り払っていた!!
「うるせえっ、ゴチャゴチャわめいているんじゃねえよっ、これだから育ちの悪い野良のワン公は! てめえがアーマー乗りであるプライドを忘れるんじゃねえっ!! オレは味方なんだから、ちゃんと援護しろ! おいっ!!」
ノイズ混じりの通信からはわけのわからない錯乱状態なパイロットの悲鳴が耳障りだ。
確か五番隊は全員が犬族のパイロットだとは聞いていたが、あまりのふがいなさに舌打ちと毒舌を抑えきれないオオカミのエースパイロットだった。
「ちいいっ、何かに呪われてやがるのか、ここらの犬っころどもはみんな!? くそったれ、収集がつかねえじゃねえかっ…ん!」
ノイズ混じりの通信音から不意にまた別の何かが聞こえてくるのに訝しく耳を澄ますと、それは思いも寄らない大きさで左右の鼓膜を震わせる。
ぎょっとどこか遠くの空を見上げてしまうウルフハウンドだ。
その時、まるで魔物かのような低いうなりが、夜明けを前にした霧の夜空を揺らした…!!
ばっ、バケモノ!? 消え入るような声でガクガクと震える五番隊のパイロットがもう使い物にならないことを理解しながら、それがバケモノではなくて自軍の味方によるものだということをすぐにも察知するウルフハウンドだった。
おかげで舌打ちが止まらない。
「ッ…! 野郎め、今さらのご到着かよ? いけ好かねえふざけたデカブツクマ公め、どのツラ下げてやってきやがった! って、うおおおおおおおおおっ!?」
白い闇を縫っていきなり飛来する、都合三発の灼熱の弾丸にのけぞるオオカミだが、それらがてんで見当違いの地面に大穴をうがつのを驚愕して見入ってしまう。
こんな視界不良の中でなかなかに考えられない援護射撃(?)だ。
どこ狙ってやがるっ!!?
のどが干上がるが、その姿よりもまずはやたらにでかい声であちらはみずからの存在を誇示してくれる。
「うおおザッおおおおザザッおおおおーーーーーーいっ、聞いてるかあザッあっ、オオカミっっ!! ザザック着けろ! さっさとしないとおまえもパザックしちザッうぞっっ!!!」
「なっ、なんだ!? てめえっ、ベアランド!!」
背後からのノイズまじりの怒声に驚きを禁じ得ないオオカミだが、状況が一変したことに脳内のアドレナリンが一気に上昇するのを意識していた。
そして戦況はこの時を境に一気にひっくり返ることになる。
それはもはや呆気のないほどに…!
ぬっとばかりに白い霧の中から現れたのは、その大きさと言いカタチと言い、みずからを鏡に映したかのように酷似した見てくれで、もはや見まがいようのないシロモノであった…!!
「びっ、ビーグルⅤ!? オレとおんなじ機体じゃねえか! 味方機がどうしてっ…」
霧の中にたたずむその姿はまるで幽霊みたいなありさまだ。
それがついにはゾンビさながら、のたくらとぎこちなく動き出すのをこちらは若干引き気味で見やってしまうのだが、よくよく見てみるにつけその左肩にあったマーキングには、ただちにぎょっと左右の目を見開くウルフハウンドだ。
てっきり視界の悪さに混乱した5番隊の僚機かと思いきや、そこにあったのはまったく別の予想だにしない部隊番号だった。
「Ⅶ!? 七番隊だと!! おいおいっ、昨日壊滅したってはなしの部隊じゃねえか! まさか、まんまと敵に拿捕されちまったってのか? このポンコツめ!」
自軍の味方機同士ならいちいちアラームを発することもないのもうなずけるが、それだけにこの状況は厄介だろうと二の足を踏んでしまう。
あちらはただ呆然と立ちすくむか一歩、二歩と微速前進しているだけで、これと何かを仕掛けてくるそぶりもないのもまた不気味だった。
ただのかかしも同然だ。
敵軍の機体だったら迷うことなし即座に撃破していたはずが、利き手側に持たせたヘビイガンを撃つのがままならないほどに今はお互いに接近してしまっている。こちらまで誘爆させられる危険を回避するのであれば、格闘戦で仕留めるしかないとは判断しながら、このきっかけを掴みかねていた。
まるで抵抗する様子がないあちらは見ようによっては白旗を掲げているようにも、あるいは助けを求めているようにすら見える。
「くそったれ! てめえは敵なんだろうが? 味方のツラをしていようが、そうやってだまし討ちしうよとしてやがるのがバレバレなんだよ! 卑怯なくされレジスタンスどもが!!」
相手の正体そのものが不明なのはわかっていたが、いらだちまぎれうなりと共に強く毒づいてしまうオオカミだ。この視界の悪さでは飛び道具は使えないとアーマーに装備していた巨大なマシンガンを投棄する。本来なら背後のラックに固定するのがセオリーだが、目前の敵にスキを見せるマネはできないと判じてのことだ。
それをまた拾い上げて暴発の危険性を無視して引き金を引くよりはいっそ相手の武器をはぎ取ったほうがいいとも考えていた。
同じタイプのアーマーなのだからむしろ合理的だ。
整備担当の機械小僧はきっと嘆くのだろうが…!
派手な音を立てて地面に転がる巨人仕様のハンドガンを心の片隅で意識しながら、視界はずっとみずからの正面に固定したまま離さない。目の前の機体に乗っているのが敵勢力である確証を求めることはもうやめにして、同型機のコクピットめがけて繰り出すのをパンチにするか、さらに打撃力の高い装備品のダガーにするか…! あえて利き手ではない左でダガーの操作レバーに持ち替えようとしたところに、しかしまた新たなる変化が今度はこの右手から現れた!
「なっ、なんだ!? また新手っ、おまけにまたビーグルⅤかよ!! て、てめえは五番隊の機体じゃねえか!! このすっとこどっこいが、めくらだからって、うおっ、なんだ??」
いきなりドタドタと慌てた様子で白い壁から飛び出す同型の機体は、何故かこちら見るなりに猛然とアタックを仕掛けてきた! 肩にはしっかりとⅤ(Ⅴ番隊)のマークがあるのだが、そんなことはお構いなしに衝突覚悟の猛チャージだ。
ヤバいっ…!!
正面に敵を見据えたままで真横からの不意打ち(?)には内心でひやりとしたものが流れたが、幸運にも激突寸前のところで錯乱した5番隊の僚機はその場で体勢を崩してつんのめることとなる。
はじめ唖然と横目で見ながらそれがついさっきおのれが投げ捨てた武器によるものだと瞬時に理解! 耳の中に聞こえるわけのわからない悲鳴かうめきみたいなものに舌打ちしながら無様に手足をバタつかせる相手の機体を利き手で殴り払っていた!!
「うるせえっ、ゴチャゴチャわめいているんじゃねえよっ、これだから育ちの悪い野良のワン公は! てめえがアーマー乗りであるプライドを忘れるんじゃねえっ!! オレは味方なんだから、ちゃんと援護しろ! おいっ!!」
ノイズ混じりの通信からはわけのわからない錯乱状態なパイロットの悲鳴が耳障りだ。
確か五番隊は全員が犬族のパイロットだとは聞いていたが、あまりのふがいなさに舌打ちと毒舌を抑えきれないオオカミのエースパイロットだった。
「ちいいっ、何かに呪われてやがるのか、ここらの犬っころどもはみんな!? くそったれ、収集がつかねえじゃねえかっ…ん!」
ノイズ混じりの通信音から不意にまた別の何かが聞こえてくるのに訝しく耳を澄ますと、それは思いも寄らない大きさで左右の鼓膜を震わせる。
ぎょっとどこか遠くの空を見上げてしまうウルフハウンドだ。
その時、まるで魔物かのような低いうなりが、夜明けを前にした霧の夜空を揺らした…!!
ばっ、バケモノ!? 消え入るような声でガクガクと震える五番隊のパイロットがもう使い物にならないことを理解しながら、それがバケモノではなくて自軍の味方によるものだということをすぐにも察知するウルフハウンドだった。
おかげで舌打ちが止まらない。
「ッ…! 野郎め、今さらのご到着かよ? いけ好かねえふざけたデカブツクマ公め、どのツラ下げてやってきやがった! って、うおおおおおおおおおっ!?」
白い闇を縫っていきなり飛来する、都合三発の灼熱の弾丸にのけぞるオオカミだが、それらがてんで見当違いの地面に大穴をうがつのを驚愕して見入ってしまう。
こんな視界不良の中でなかなかに考えられない援護射撃(?)だ。
どこ狙ってやがるっ!!?
のどが干上がるが、その姿よりもまずはやたらにでかい声であちらはみずからの存在を誇示してくれる。
「うおおザッおおおおザザッおおおおーーーーーーいっ、聞いてるかあザッあっ、オオカミっっ!! ザザック着けろ! さっさとしないとおまえもパザックしちザッうぞっっ!!!」
「なっ、なんだ!? てめえっ、ベアランド!!」
背後からのノイズまじりの怒声に驚きを禁じ得ないオオカミだが、状況が一変したことに脳内のアドレナリンが一気に上昇するのを意識していた。
そして戦況はこの時を境に一気にひっくり返ることになる。
それはもはや呆気のないほどに…!
0
お気に入りに追加
1
あなたにおすすめの小説

【完結】仰る通り、貴方の子ではありません
ユユ
恋愛
辛い悪阻と難産を経て産まれたのは
私に似た待望の男児だった。
なのに認められず、
不貞の濡れ衣を着せられ、
追い出されてしまった。
実家からも勘当され
息子と2人で生きていくことにした。
* 作り話です
* 暇つぶしにどうぞ
* 4万文字未満
* 完結保証付き
* 少し大人表現あり

魅了が解けた貴男から私へ
砂礫レキ
ファンタジー
貴族学園に通う一人の男爵令嬢が第一王子ダレルに魅了の術をかけた。
彼女に操られたダレルは婚約者のコルネリアを憎み罵り続ける。
そして卒業パーティーでとうとう婚約破棄を宣言した。
しかし魅了の術はその場に運良く居た宮廷魔術師に見破られる。
男爵令嬢は処刑されダレルは正気に戻った。
元凶は裁かれコルネリアへの愛を取り戻したダレル。
しかしそんな彼に半年後、今度はコルネリアが婚約破棄を告げた。
三話完結です。
私は心を捨てました 〜「お前なんかどうでもいい」と言ったあなた、どうして今更なのですか?〜
月橋りら
恋愛
私に婚約の打診をしてきたのは、ルイス・フォン・ラグリー侯爵子息。
だが、彼には幼い頃から大切に想う少女がいたーー。
「お前なんかどうでもいい」 そうあなたが言ったから。
私は心を捨てたのに。
あなたはいきなり許しを乞うてきた。
そして優しくしてくるようになった。
ーー私が想いを捨てた後で。
どうして今更なのですかーー。
*この小説はカクヨム様、エブリスタ様でも連載しております。
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ヤンデレエリートの執愛婚で懐妊させられます
沖田弥子
恋愛
職場の後輩に恋人を略奪された澪。終業後に堪えきれず泣いていたところを、営業部のエリート社員、天王寺明夜に見つかってしまう。彼に優しく慰められながら居酒屋で事の顛末を話していたが、なぜか明夜と一夜を過ごすことに――!? 明夜は傷心した自分を慰めてくれただけだ、と考える澪だったが、翌朝「責任をとってほしい」と明夜に迫られ、婚姻届にサインしてしまった。突如始まった新婚生活。明夜は澪の心と身体を幸せで満たしてくれていたが、徐々に明夜のヤンデレな一面が見えてきて――執着強めな旦那様との極上溺愛ラブストーリー!

もう死んでしまった私へ
ツカノ
恋愛
私には前世の記憶がある。
幼い頃に母と死別すれば最愛の妻が短命になった原因だとして父から厭われ、婚約者には初対面から冷遇された挙げ句に彼の最愛の聖女を虐げたと断罪されて塵のように捨てられてしまった彼女の悲しい記憶。それなのに、今世の世界で聖女も元婚約者も存在が煙のように消えているのは、何故なのでしょうか?
今世で幸せに暮らしているのに、聖女のそっくりさんや謎の婚約者候補が現れて大変です!!
ゆるゆる設定です。

のほほん異世界暮らし
みなと劉
ファンタジー
異世界に転生するなんて、夢の中の話だと思っていた。
それが、目を覚ましたら見知らぬ森の中、しかも手元にはなぜかしっかりとした地図と、ちょっとした冒険に必要な道具が揃っていたのだ。

異世界へ五人の落ち人~聖女候補とされてしまいます~
かずきりり
ファンタジー
望んで異世界へと来たわけではない。
望んで召喚などしたわけでもない。
ただ、落ちただけ。
異世界から落ちて来た落ち人。
それは人知を超えた神力を体内に宿し、神からの「贈り人」とされる。
望まれていないけれど、偶々手に入る力を国は欲する。
だからこそ、より強い力を持つ者に聖女という称号を渡すわけだけれど……
中に男が混じっている!?
帰りたいと、それだけを望む者も居る。
護衛騎士という名の監視もつけられて……
でも、私はもう大切な人は作らない。
どうせ、無くしてしまうのだから。
異世界に落ちた五人。
五人が五人共、色々な思わくもあり……
だけれど、私はただ流れに流され……
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる