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緊急発進! 濃霧の先にあるもの…!?(第二幕)
シーン4
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まだ、夜明け前…。
単独で進む先にはこれと障害物のない荒れ果てた平地がひたすらに拓ける。
確か左手も遠くに海岸線を望む立地のここは、じきに己の背後から日の出を見ることになるはずなのだが、そんなものを振り返る余裕は感じられないオオカミのパイロットだ。
みずからが乗り込む大型ロボット兵器を高速で機動させながら警戒区域に入ったことを直感的に理解する。かと言えさして緊張したそぶりもないままに軽口をたたくのはいつものノリで、調子のいいマシンの乗り心地にさらにテンションがハイになるウルフハウンドだった。
「ひゃっほう! マジでご機嫌だぜ!! まるでオレ用にカスタマイズしたみたいな軽快な足さばき、ほんとにてめえの足で地面を走ってるみたいだ! あの小僧め、ウブなツラしてほんとにやるじゃねえか!? こいつは帰ったら祝杯もんだぜっ、あれ、アイツ、酒飲めるのかな??」
歓喜の遠吠えをかましかけたところに、あいにく甲高い機械音が狭いコクピットに鳴り響く。
戦闘区域に入ったことを告げるアラームだが、ずっと前からそれと了解していた新進気鋭のテストパイロットは気にしたそぶりもなしにハイハイと受け流してやる。
「わかってるよ! 見たまんまじゃねえか? このやたらに濃密な真っ白い霧!! うわさの怪現象ってヤツなんだろ。この霧にまぎれて不意打ち食らわしてくるとは言うが、ネタがバレちまってたらどうってことはありゃしねえや。視界が悪いのはどっちも同じで、要はアーマー乗りとしての勘と技術だ! じゃ、いざ参戦♪ おおらっ、期待の新鋭、ウルフハウンドさまのご到着とおまけに記念すべき初陣だぜっ、どっからでもかかってきやがれ!!」
一度はもくもくと立ちこめる濃霧で満たされたフィールドの前で立ち止まりながら、無造作にアーマーの足を進める。ひとたびこの中に入るとカメラからの視界は真っ白い闇ですべてが塗り替えられた。ぬかりなくあたりを見回しながら、威勢がいいばかりではなしにクレバーにこの状況を観察する。
「はん、いくら海岸線が近いとは言え、こんなに都合良く霧が発生するもんかね? ここいらの立地のシミュレーションモデルじゃまずお目見えしないほどの濃霧じゃねえか! ん、こいつは…やれやれだぜ、センサーのたぐいも計測不能ときやがったか! ちっ、マジで普通じゃありゃしねえな? やけに静かだが…」
先発した5番隊がすでに敵と交戦しているはずが、まるでそれらしい気配がないのを訝しく思うオオカミは、慎重にまた一歩、二歩とアーマーの足を進める。
「マジで状況がつかめねえな? 条件は一緒とは言え、うざい霧だぜ。動き回って敵さんとバッティングするのと、待ち構えて返り討ちにするのと、どっちが合理的なんだか…ん!」
不可解な霧の影響かまるでセンサーが反応しない中、不意に正面の真っ白い壁におおきな黒い人影のようなものが映る! 何かしらアーマーの影だとすぐに見抜くものの、こんなに間近になってもまるで反応しないアラームにまずは鋭く舌打ちしてしまうウルフハウンドだ。
「チッ! どんだけ鈍感なんだよ!? あのチビのせいじゃないとは言え、文句のひとつも言ってやりたいところだぜ! おおらっ、てめえもぼさっとしてねえでとっととかかってきやがれっ…ん、なっ?」
べったりと濃い霧をまとった巨体をはっきりと視認するにつけ、その思いも寄らない正体に戸惑いと驚きを隠せない新人パイロットだった。
「こっ、コイツは…!?」
単独で進む先にはこれと障害物のない荒れ果てた平地がひたすらに拓ける。
確か左手も遠くに海岸線を望む立地のここは、じきに己の背後から日の出を見ることになるはずなのだが、そんなものを振り返る余裕は感じられないオオカミのパイロットだ。
みずからが乗り込む大型ロボット兵器を高速で機動させながら警戒区域に入ったことを直感的に理解する。かと言えさして緊張したそぶりもないままに軽口をたたくのはいつものノリで、調子のいいマシンの乗り心地にさらにテンションがハイになるウルフハウンドだった。
「ひゃっほう! マジでご機嫌だぜ!! まるでオレ用にカスタマイズしたみたいな軽快な足さばき、ほんとにてめえの足で地面を走ってるみたいだ! あの小僧め、ウブなツラしてほんとにやるじゃねえか!? こいつは帰ったら祝杯もんだぜっ、あれ、アイツ、酒飲めるのかな??」
歓喜の遠吠えをかましかけたところに、あいにく甲高い機械音が狭いコクピットに鳴り響く。
戦闘区域に入ったことを告げるアラームだが、ずっと前からそれと了解していた新進気鋭のテストパイロットは気にしたそぶりもなしにハイハイと受け流してやる。
「わかってるよ! 見たまんまじゃねえか? このやたらに濃密な真っ白い霧!! うわさの怪現象ってヤツなんだろ。この霧にまぎれて不意打ち食らわしてくるとは言うが、ネタがバレちまってたらどうってことはありゃしねえや。視界が悪いのはどっちも同じで、要はアーマー乗りとしての勘と技術だ! じゃ、いざ参戦♪ おおらっ、期待の新鋭、ウルフハウンドさまのご到着とおまけに記念すべき初陣だぜっ、どっからでもかかってきやがれ!!」
一度はもくもくと立ちこめる濃霧で満たされたフィールドの前で立ち止まりながら、無造作にアーマーの足を進める。ひとたびこの中に入るとカメラからの視界は真っ白い闇ですべてが塗り替えられた。ぬかりなくあたりを見回しながら、威勢がいいばかりではなしにクレバーにこの状況を観察する。
「はん、いくら海岸線が近いとは言え、こんなに都合良く霧が発生するもんかね? ここいらの立地のシミュレーションモデルじゃまずお目見えしないほどの濃霧じゃねえか! ん、こいつは…やれやれだぜ、センサーのたぐいも計測不能ときやがったか! ちっ、マジで普通じゃありゃしねえな? やけに静かだが…」
先発した5番隊がすでに敵と交戦しているはずが、まるでそれらしい気配がないのを訝しく思うオオカミは、慎重にまた一歩、二歩とアーマーの足を進める。
「マジで状況がつかめねえな? 条件は一緒とは言え、うざい霧だぜ。動き回って敵さんとバッティングするのと、待ち構えて返り討ちにするのと、どっちが合理的なんだか…ん!」
不可解な霧の影響かまるでセンサーが反応しない中、不意に正面の真っ白い壁におおきな黒い人影のようなものが映る! 何かしらアーマーの影だとすぐに見抜くものの、こんなに間近になってもまるで反応しないアラームにまずは鋭く舌打ちしてしまうウルフハウンドだ。
「チッ! どんだけ鈍感なんだよ!? あのチビのせいじゃないとは言え、文句のひとつも言ってやりたいところだぜ! おおらっ、てめえもぼさっとしてねえでとっととかかってきやがれっ…ん、なっ?」
べったりと濃い霧をまとった巨体をはっきりと視認するにつけ、その思いも寄らない正体に戸惑いと驚きを隠せない新人パイロットだった。
「こっ、コイツは…!?」
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