ルマニア戦記・『○×△□◇の逆襲!』

おおぬきたつや

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緊急発進! 濃霧の先にあるもの…!?(第二幕)

シーン2

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 時間はさらに過ぎて、翌日、未明…。

 本部棟近辺ではひどくやかましく聞こえるのだろう緊急を告げるサイレンも、基地の外れのここではさして耳障りなほどでもありはしない。
 まだ日の出も前の今ではなおさら人気もなくて、しんと静まりかえった中にやっとゴタゴタとした気配が現れる…!
 予備格納庫の裏口から勢いよく駆け込んでくる若いテストパイロットのいかついスーツ姿を、こちらはじっと仁王立ちして待ち構える小柄なブルドックが渋い声でどやしつけた。

「おおい、おせえぞ! なにしてやがったクマ公よ? てめえの相棒のオオカミ野郎はとっくの昔に出ちまってるんだ!! もうじき先発した本体に追いつく頃だろうに、このままじゃあのでかい口で臆病風に吹かれたとか笑われちまうぞ!?」

「ああっ、わるいわるい! ちょっとした野暮用があってね? 本部のお偉いさんがたにいろいろと掛け合ってたんだ! よっぽど本国からの強権で派遣されてきた俺たちの心証が悪いのか、えらく手こずっちまったけど…」

「あん、まさかまたでもして無理矢理に了承取り付けたとかいうんじゃねえよな? いやいや、うちの基地指令はすこぶるつきに頭がお固い上に全身がアレだろう? それこそ一級の拷問吏ごうもんりでも手を焼くってくらいな…」

 やや怪訝けげんな目つきで見上げるブルに、高くから見下ろす巨漢のクマは苦めた笑いで鷹揚おうようにうなずく。

「はは! まさか、基地司令官どのがだったとはね? 普段から制服が穴ぼこだらけなのがおかしいとは思ってたんだけど、いざ近づいてハグしようにもどこをどう抱きついてやればいいのかさっぱりわからなかったよ! 丸まって完全防御の態勢を取られたらアウトだとわかってたから、ちょっと強硬手段に訴えちゃった♪ ただの犬族の副司令と、ブタだかイノシシだかのゴツい補佐官らしきはキツいハグでしっかりとわかりあってさ!」

「かあっ、全員きれいにのしちまったのか! いやはやこいつは、下手したらものじゃねえのか? てかよ、全身針山の司令官はどうしたんだよ? おまえさん、見たとこ血なんて流してるようには見えねえが…??」

「はっはん、それは内緒だよ♡ ま、この世の中、愛情表見は何もハグだけに限ったことじゃないってことでね! ただし暴力に及んだりしてはいないから、軍法会議もないんじゃないのかな? ふたりだけのってことで、きっと墓場まで持って行ってくれるよ、あの小太りなハリネズミのおやじさん♪ あるいはちょっとしたトラウマとしてもう記憶から抹消してくれてるんじゃないのかな♡」



「…おまえさん、基地の司令官にいったい何をしやがったんだよ?? まあいいや、乗って行くのはほんとにこっちのでいいんだな? もう準備は出来てるから、とっとと乗っかって行っちまいな!! あいにく弟子が出払っちまってるから管制誘導はなしだ。しっかしあいつもどこで何してやがるんだか…」

「ああ、いいんだよ。あいつにもいろいろと手伝ってもらってるから! 今回ちょっとだけ借りることになるけど、一日かそこらはいいだろう? いやあ、機械いじりだけかと思ったらいろいろと使い勝手のいいお弟子さんでほんとに大助かりだよ、ほら、ね?」

「ん? お、コイツは…!」 
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