ルマニア戦記・『○×△□◇の逆襲!』

おおぬきたつや

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緊急発進! 濃霧の先にあるもの…!?(第一幕)

シーン4

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「おお、良くわかってるじゃねえか? 説明の必要がまるでありゃしねえや。そう、機体構造は基本は一緒の前のと新型とで一番違ってるのが吸気口の位置で、廃熱も兼ねた排気はどっちも肩の先端からよ。ただしより大型で取り込み口がでかいコイツは排気もパワフルだから、やりようによってはけっこうな武器にもなるぜ? こいつはある種のみたいなもんなんだが…!」

「へえ、そいつは楽しみだな? あとは…ん、なんか周りが騒がしくなってやしないかい??」

 広い施設の中ではわりかし隅っこに配置されている、いわば窓際みたいな部署だ。
 本部あたりからは、ないしと呼ばれるこの区画は比較的に人気が少なく普段から静かなはずが、いつからかやけに物々しくした気配や物音、おまけにかまびすしいなんてものまでが中に響いてくる…!
 大きく外に開けた格納庫の入り口に目をやると、物音と一緒にでかいアーマー搬送用の牽引トラックが頭から突っ込んでくるのがわかる。若いテストパイロットは目を丸くしてそのさまを見てしまうが、すぐそばでこちらはただちに殺気立つ熟練のブルドックの親方が怒号を発した。トラックの周りに慌ただしく群がるメカニックや施設の軍関係者らしきをまとめてどやしつけるのだった。

「オオラっ、おめえら何してやがるっ! 勝手に被弾した機体をおれっちの格納庫に持ち込むんじゃねえや!! 万が一にもこっちの機体と誘爆させたらどうするつもりだっ!? ダメージコントロールはどこのとんまがやってやがる!!!」


※もろもろの都合で今回は雑なイメージラフです♡

 問答無用で突っ込んでくるトラックの前に小さな身体でドン!と立ちはだかってあたふたしたさまを一喝! 急停止する車両とその周りのメカニックたちもびくりと立ちすくむが、そこからすぐさま慌てふためいた声が上がった。

「おっ、親方! ももっ、申し訳ありませんっ、緊急事態であったためにやむをえずこのようなかたちに! 大変ですっ、巡回任務に当たっていた第七部隊が例の謎の勢力と遭遇、激しい戦闘の末にあえなく壊滅かいめつしたとのことであります!! こちらは唯一ゆいいつ生き残ってきた機体でありまして…!!」

っ? ちっ、またか…! 大事な機体をいくつ無駄にしたら気が済むんだ、どあほうどもが! 隊員の収容は済んでいるのか? とっとと引っ張り出しな!! おいリドル、仕事だ! おめえがこいつの被害手当をしろ! ダメならとっとと外にほっぽり出しな!!」

「はっ、はい! あ、え、じぶんがでありますか? 了解しました!!」

 いきなりのことに浮き足立つ弟子にキツい視線で即座の作業開始を言いつけて、さらに周りのメカニックたちにも容赦なく声を荒げる百戦錬磨の鬼軍曹だ。

「ああん、おめえら何をぼけっと突っ立ってやがる? 他のヤツらは被弾部位のパージなり電源停止作業、パイロットシステム周りの状況確認と現状保全、ドライブレコーダーの回収引き渡し! やることはいくらだってあるだろうっ、とっとと取りかかんな!!」

「へっ、へい!!」

 瞬く間にと混乱した状況をまとめ上げた手練てだれのオヤジのさまに感心することしきりののんきなクマだが、トラックの荷台にくたばる巨大な機体に目を向けて、かすかにこの頭を傾げさせる。

「あらら、これまた派手ハデにやられちまったもんだな! って、あれ? これってのは…ん!」

 バタバタした視界の端で見知った人影がさながら逃げ出していくのも認めて、なおのこと大きな頭をはてなと傾げさせる。

「あれ、なんだ、あのオオカミ? 何をあんなに慌てて…??」

 不可解な同僚のさまにこちらもその後を追っかけようとするのだが、きびすを返しかけたところでおっかないオヤジに呼び止められることとなる。

「おいクマ公! 悪いが手伝ってくんな!! コラッ、逃げるんじゃねえっ、やられちまったパイロットが中でパニックしてて手に負えないらしいから、おめえがハッチをこじ開けて黙らしてくんな! お得意のハグでもパンチでもなんでもいい! ついでにシートから引っ張り出してさっさと医務室なりにしょっぴいてやってくれや!!」

「えっ、なんで俺が? ああ、はいはい…! やんなきゃスパナでどつかれちまうんでしょ? あるいはペンチでアレを引っこ抜かれちまうと! これってけっこうなパワハラだよな??」

 仕方もなしに荷台を見上げるクマだ。
 片やとっとと荷台に上がってコクピット周りにとりついた若手のクマのメカニックにも呼ばれて、半ば嫌々でタラップを上がっていく。
 コクピットハッチの外装がゆがんでハッチが開けられないとうったえるメカニックの言葉も聞き流して素手でこれをこじ開けると、中で叫びを発するこちらはあまり見覚えのないパイロットを無造作な右手のストレートで見事に沈黙させるのだった。
 ついでに横にいた若いクマも沈黙させてしまうが、お構いなしに片手でくたった身体を引っ張り上げて、みずからの肩に担いだままに何食わぬ顔でその場を後にする。
 手持ちぶたさにしながら後からくっついてくる担架には、鬼の形相の熟練ブルドックがとあぐらをかいていた…!

        第一幕・終わり。
                 次回、第二幕に続く…!
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