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緊急発進! 濃霧の先にあるもの…!?(第一幕)
シーン3
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「あっはは♡ その後ろ手に持ってるの、ペンチなのかい? あれ、さっきのもペンチでつねったの?? やけに痛かったけど…! ふふん、でもそんなものごときで引っこ抜けるもんかね? おやっさん、腕っこきのパイロットのとどまるところを知らないあふれんばかりの精力をなめてかかると痛い目見るよ?」
「だまんなデカブツ。おめえにはコイツがお似合いだ。これもある意味、あの弟子が丹精込めて育て上げた娘っ子みたいなもんだしな。どうだ、カワイイだろ?」
言われてふたたびふたりで見上げるに、そのがっちりとした重厚感ありあまる巨躯にまたしても苦笑いとなるテストパイロットだ。そのクセまんざらでもなさげな口ぶりしたのがやはりかなりの好き者だった。
「いやあ、さすがにコイツはちょっといかつすぎるんじゃないのかね? もちろんキライじゃないんだけど♡ にしてもあっちの新型と比べるとほんとに一回り大きいんだ? こうやって並べて見るとはっきりわかるよ。Ⅴ型が軽量小型化された高機動タイプっての、確かにこんだけガタイが違えば納得できるよな! ただしもう一方の悪評も納得がいくってものだけど、いわゆるその、アレが装甲の薄っぺらい走る棺桶だってあたりのね?」
「走る棺桶…か。はん、そいつはさんざんな言われようだな? ま、そうまちがっちゃいねえさ! 見りゃわかるだろ、コイツがこんなにもごつごつと外部装甲重ね着してるのに比べて、あっちは急所の機関部周りすらそいつを取っ払った真っ裸みたいなたいそうお寒い見てくれしてるのがな…! 身軽だからって目の前の敵の攻撃うまくかわしたところで、よそから来た流れ弾の一発ではいさよならだ。直撃くらったらひとたまりもありゃしねぇ! ま、こんな技術屋のぼやきなんか本国には届きゃしないもんだがな」
「届いたところでみんな聞く耳もたないんだろ? おやっさん、あんた察するに実はあの新型が配備されたあたりからこっちに下ってきたってクチなんじゃないのかい?? 腕のいい機械屋ほど融通が利かなかったりするからわからなくはないけど、やっぱりちょっとげんりしちゃうなあ! 急ピッチで量産された新型が主流になってからパイロットの被弾時の生存率がガクンと下がったっての暗に聞かされてる身としては、敵前逃亡でもしてやりたい気分だよ。俺はコレがあるからやらないけど♪ 正直、軽量化とかスピードの向上とか、あんまり興味ないんだよね?」
とかくのんびりしたクマのぶっちゃけ発言の連発だ。
肩をすくめるブルドックは、ほっぺたの垂れた口元ニヤリとさせてしたり顔する。
「そいつは奇遇だな? このおれっちもまったくの同意見よ。しょせんはこらえ性のないわん公どもがのろいだのにぶいだのと文句をつけるだけで、コイツにはどこにも欠陥なんてありゃしねえ。仮におんなじだけの腕前のパイロットが乗ってやりあったら、勝つのは間違いなくコイツなんだからな…! 要は度胸とどれだけ機体特性を理解したアーマーの乗りこなしができるかってもんでよ?」
「まあ、そうだね? あと俺としてはこっちのほうがでかいぶんにコクピットに余裕がありそうだから、そこらへんも魅力的かな。正直むこうのはいざ入るとぎゅうぎゅうのすし詰めみたいになっちゃうんだ。入り口も狭いもんだからケツからバックでむりやり入った時に、居合わせたメカニックに爆笑されたから! あんまりゲラゲラ笑うもんだからトラウマになるくらいにキツいハグをお見舞いしてだまらしちゃったよ♡ あ、そうだ、リドルにも言っておかないと」
「あいつはもうすでにトラウマだろうよ? だったらおとなしくこっちに収まんな! おまえさんみたいなのんびりしたヤツにはうってつけだ。こと格闘戦なら新型と三体一でも互角にやりあえるぜ?」
「へぇ、それって多勢に無勢とかじゃなくて、ゾウさん対アリさんみたいなカンジでかい? なるほどね…ガードアーマーのフル装備は確かに見栄えがするけど、それだけ機敏さは落ちるんだよな。航行速度も航続距離も新型の良くて半分…つくづく機動性を欲しがる犬族向きじゃないや。あれ、あの頭の両脇にくっ付いてるの、エアインテークかい?」
でかい人型兵器のごつごつしたヘッド周りを示唆して言った言葉に、何食わぬさまのブルはぬけぬけとこちらもぶっちゃけた。
「ん、いいや、あいつはただのランチャーポッドだよ。いわゆる指揮官機の専用装備だな! 驚くなかれ、中身もジャンクのゴミ山からまんまと掘り出した実弾で、確か赤色信号弾とグレネードが何発とか言ってたな?」
「ゴミの中から!? あぶないな! そんなヤツ出入り禁止だろう!! まったく…そうか、吸気口は背後にあるんだ? Ⅴ型は左右の脇の下にあるからコクピットの空調がすこぶるいいんだっけ?? その前のまでは夏場は蒸し風呂になるとか言ってたけど、ちょっとマイナスかなあ…! 排気はどっちも両肩から出すんだ?」
「おお、良くわかってるじゃねえか? 説明の必要がまるでありゃしねえや。そう、機体構造は基本は一緒の前のと新型とで一番違ってるのが吸気口の位置で、廃熱も兼ねた排気はどっちも肩の先端からよ。ただしより大型で取り込み口がでかいコイツは排気もパワフルだから、やりようによってはけっこうな武器にもなるぜ? こいつはある種の裏技みたいなもんなんだが…!」
「へえ、そいつは楽しみだな? あとは…ん、なんか周りが騒がしくなってやしないかい??」
「だまんなデカブツ。おめえにはコイツがお似合いだ。これもある意味、あの弟子が丹精込めて育て上げた娘っ子みたいなもんだしな。どうだ、カワイイだろ?」
言われてふたたびふたりで見上げるに、そのがっちりとした重厚感ありあまる巨躯にまたしても苦笑いとなるテストパイロットだ。そのクセまんざらでもなさげな口ぶりしたのがやはりかなりの好き者だった。
「いやあ、さすがにコイツはちょっといかつすぎるんじゃないのかね? もちろんキライじゃないんだけど♡ にしてもあっちの新型と比べるとほんとに一回り大きいんだ? こうやって並べて見るとはっきりわかるよ。Ⅴ型が軽量小型化された高機動タイプっての、確かにこんだけガタイが違えば納得できるよな! ただしもう一方の悪評も納得がいくってものだけど、いわゆるその、アレが装甲の薄っぺらい走る棺桶だってあたりのね?」
「走る棺桶…か。はん、そいつはさんざんな言われようだな? ま、そうまちがっちゃいねえさ! 見りゃわかるだろ、コイツがこんなにもごつごつと外部装甲重ね着してるのに比べて、あっちは急所の機関部周りすらそいつを取っ払った真っ裸みたいなたいそうお寒い見てくれしてるのがな…! 身軽だからって目の前の敵の攻撃うまくかわしたところで、よそから来た流れ弾の一発ではいさよならだ。直撃くらったらひとたまりもありゃしねぇ! ま、こんな技術屋のぼやきなんか本国には届きゃしないもんだがな」
「届いたところでみんな聞く耳もたないんだろ? おやっさん、あんた察するに実はあの新型が配備されたあたりからこっちに下ってきたってクチなんじゃないのかい?? 腕のいい機械屋ほど融通が利かなかったりするからわからなくはないけど、やっぱりちょっとげんりしちゃうなあ! 急ピッチで量産された新型が主流になってからパイロットの被弾時の生存率がガクンと下がったっての暗に聞かされてる身としては、敵前逃亡でもしてやりたい気分だよ。俺はコレがあるからやらないけど♪ 正直、軽量化とかスピードの向上とか、あんまり興味ないんだよね?」
とかくのんびりしたクマのぶっちゃけ発言の連発だ。
肩をすくめるブルドックは、ほっぺたの垂れた口元ニヤリとさせてしたり顔する。
「そいつは奇遇だな? このおれっちもまったくの同意見よ。しょせんはこらえ性のないわん公どもがのろいだのにぶいだのと文句をつけるだけで、コイツにはどこにも欠陥なんてありゃしねえ。仮におんなじだけの腕前のパイロットが乗ってやりあったら、勝つのは間違いなくコイツなんだからな…! 要は度胸とどれだけ機体特性を理解したアーマーの乗りこなしができるかってもんでよ?」
「まあ、そうだね? あと俺としてはこっちのほうがでかいぶんにコクピットに余裕がありそうだから、そこらへんも魅力的かな。正直むこうのはいざ入るとぎゅうぎゅうのすし詰めみたいになっちゃうんだ。入り口も狭いもんだからケツからバックでむりやり入った時に、居合わせたメカニックに爆笑されたから! あんまりゲラゲラ笑うもんだからトラウマになるくらいにキツいハグをお見舞いしてだまらしちゃったよ♡ あ、そうだ、リドルにも言っておかないと」
「あいつはもうすでにトラウマだろうよ? だったらおとなしくこっちに収まんな! おまえさんみたいなのんびりしたヤツにはうってつけだ。こと格闘戦なら新型と三体一でも互角にやりあえるぜ?」
「へぇ、それって多勢に無勢とかじゃなくて、ゾウさん対アリさんみたいなカンジでかい? なるほどね…ガードアーマーのフル装備は確かに見栄えがするけど、それだけ機敏さは落ちるんだよな。航行速度も航続距離も新型の良くて半分…つくづく機動性を欲しがる犬族向きじゃないや。あれ、あの頭の両脇にくっ付いてるの、エアインテークかい?」
でかい人型兵器のごつごつしたヘッド周りを示唆して言った言葉に、何食わぬさまのブルはぬけぬけとこちらもぶっちゃけた。
「ん、いいや、あいつはただのランチャーポッドだよ。いわゆる指揮官機の専用装備だな! 驚くなかれ、中身もジャンクのゴミ山からまんまと掘り出した実弾で、確か赤色信号弾とグレネードが何発とか言ってたな?」
「ゴミの中から!? あぶないな! そんなヤツ出入り禁止だろう!! まったく…そうか、吸気口は背後にあるんだ? Ⅴ型は左右の脇の下にあるからコクピットの空調がすこぶるいいんだっけ?? その前のまでは夏場は蒸し風呂になるとか言ってたけど、ちょっとマイナスかなあ…! 排気はどっちも両肩から出すんだ?」
「おお、良くわかってるじゃねえか? 説明の必要がまるでありゃしねえや。そう、機体構造は基本は一緒の前のと新型とで一番違ってるのが吸気口の位置で、廃熱も兼ねた排気はどっちも肩の先端からよ。ただしより大型で取り込み口がでかいコイツは排気もパワフルだから、やりようによってはけっこうな武器にもなるぜ? こいつはある種の裏技みたいなもんなんだが…!」
「へえ、そいつは楽しみだな? あとは…ん、なんか周りが騒がしくなってやしないかい??」
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