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風が臭う? 不穏の気配…!
シーン3
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「んっ...! まあ、こんなとこでツノつき合わせていてもしょうがねえだろう? それよりもほれ、お呼びが来たぞ? おまえさんがたがいつまでも油売ってるから。えらい焦ってるやがるみたいだが...お、しかもありゃうちの愛弟子だな!」
「あ、チビだろ、あいつ? ほんとだ焦ってる! おーい、そんなに慌ててるとコケるぞ、チビー!!」
「相変わらずヒョロっちいな? マジでコケるんじゃねえのか?? なんであんなに焦ってるんだよ? おいおいっ...!」
ブルのおやじが気がついた時は豆粒みたいだったのが、今は誰だかそれとはっきり視認ができる。
遠く本庁舎のある方面からこっち、おんぼろな建物の壁際を息急き切って駆けってくるのは、ふたりのパイロットたちよりもまだ若いような青年であり、見るからに細身で華奢な男子だった。
熟年の機械工とおなじような全身が緑のオーバーオールの格好なのが、この基地内での役割や立ち位置ももはや明確だ。
それが一気に三人の下まで駆けつけるとただちに直立不動の気をつけ!
ビシッとしたきれいな敬礼をかましてくれる。
まだちょっと息が上がったさまで、おまけ表情もかなりアップアップ気味で緊張した第一声を張り上げる若手の見習いメカニックくんだ。
「はあっ、はあっ、はあっ…! こ、こんなところにいらしたのですか!? 基地中さがしてしまいましたっ、はあっ、ごっ、ご報告申し上げます! ベアランド准尉どのっ、本日12:00をもちまして、准尉どのに実戦配置ならびに戦闘待機命令が…あっ、いや! 戦闘準備の要請が本部より出されております! よってこれより速やかに隊舎に戻られまして、ただちに機体の確認、出撃の準備を整えられますよう、お願い申し上げます!! あとぶしつけながら、准尉どのの機体の整備はこの自分、アーガイル伍長めが一任されております! なにとぞよろしくお願いいたします!!」
「ははっ、そうかい? いや、命令なら命令でいいんだよ! そんな気を使ってくれなくともな? こっちじゃさんざんお客さん扱いされてきたんだから、望むところだ。あとおまえさんもそんな恐縮してくれなくたっていいんだぜ? お互いに一介のパイロットとメカニックじゃないか。コリンスの兄貴呼ばわりでぜんぜんかまわないよ、リドル! そうとも何を隠そう、俺たちおんなじ大型Ⅰ種のクマ族なんだからな♡」
「そそっ、そんな滅相もありません! 自分はただの見習いの身でありますから。それに見てくれもこのさまでありますから…准尉どのとはまるで…」
胸を張ったおおらかな巨漢のクマの物言いに、見るからに物怖じした虚弱グマが言葉を濁してしまいにはうつむき加減となる。最後のほうはまるで聞き取れなかったが、視線を落とした先から思いも寄らない人物に声を掛けられて思わずぎょっとなる青年機械工だ。
「大型1種ってななんだ? まあ、確かにおんなじ大型のクマ族とは思えないくらいにガタイに差があるが、それでもリドルよ、おまえさん機械いじりとしての腕は悪くねえんだぜ。筋がいいのはこのオレのお墨付きよ! もっと胸を張りな。しょせんそこのデカブツと比較すること自体が間違っているんだ」
「おおっ、親方!? いらしたんですか? ちっちゃいからまるで気が付かなかった! まことに失礼しました!!」
「やかましい! 本当に失礼じゃねえか! んなこた周りからチビ助呼ばわりされてるおめえから言われたくはねえっ、小せえのはこのブルドック族のさがであり誇りでもあるのよ! だったらおめえはもっと身体を鍛えてそこのデカぐまの半分でもボリュームをつけなっ、それで晴れて一人前よ!!」
すっかりご機嫌斜めの親方にあたふたする弟子のメカニックだが、それをすぐ真ん前のでかいクマのパイロットさまが明るく笑い飛ばしてくれる。
おまけに太い腕を伸ばして問答無用で華奢な同族の細身を抱え上げていた。
それはいわゆる愛情表現のハグなのらしいが、傍から見るにはまるで手加減のない絞め技にしか見えなかったりする。
「あっはははははは! 半分だったらまだ半人前なんじゃないのかい? まあ確かにガリでチビではあるが、これはこれでかわいげがあるってもんだよ、うん! てかチビ、ちゃんと毎日メシ食ってるのか? モリモリ食ってバリバリ働かねえと将来立派なクマ族にはなれないって、子供の頃に言われてただろ! なあ、チビ~~~!!」
「ああっ、いやっ、イタタタタ! じゅ、じゅじゅっ、准尉どの、ちからが尋常じゃないでありますっ! 両足が地面からすっかり離れてっ…ぐっ、スーツの角が本気でめり込んでいるであります!! うひいいっ…」
「ちっ、おいやめな、でかグマ! おれっちのかわいい弟子が使い物にならなくなっちまうだろう? やいリドル、スパナもってねえのか? そいつでこいつの無駄にでかいオツムを一発どついてやれ!!」
「む、ムリであります!」
必死にもがく若手のメカニックに、それまで傍から冷めたまなざしで見ていたオオカミのパイロットもしょうもなさげにこの大口を開く。
「まったくてめえの虚弱さも目に余るものがあるが、こんなデカブツ相手じゃまともでも手を焼くってもんだよな! おら、だったらオレに貸せよ、スパナ! オレが代わりに殴り倒してやるから!! でないとおまえ、死んじまうだろ?」
「も、持ってないであります!!」
「あっはは! いいんだよ、これで! クマ族ってのは元来みんなで群れてがっちりしたハグをするのが大好きな生き物なんだから♡ 他の種族からはわりかしイヤがられるけど、クマさん同士はこんなの当たり前の日常茶飯事なんだぜ? この俺もちっちゃいころはおやじやおじきからあばらが折れるくらいにきっついのを食らわされていたよ! みんなそうやって強くなっていくんだから、俺たち大型Ⅰ種のくまさんは♪」
「あっ、あばら!? ひえええっ!」
「聞いたことありゃしねえよ! なにが大型1種のクマさんだっ、んなもんもはやただの虐待だろうが? だから話が進まねえからいい加減にやめやがれっ!! たくっ…んで、機体のチェックって、オレらのテスト機はもう届いたのか? 若いあんちゃんよ??」
「あ、チビだろ、あいつ? ほんとだ焦ってる! おーい、そんなに慌ててるとコケるぞ、チビー!!」
「相変わらずヒョロっちいな? マジでコケるんじゃねえのか?? なんであんなに焦ってるんだよ? おいおいっ...!」
ブルのおやじが気がついた時は豆粒みたいだったのが、今は誰だかそれとはっきり視認ができる。
遠く本庁舎のある方面からこっち、おんぼろな建物の壁際を息急き切って駆けってくるのは、ふたりのパイロットたちよりもまだ若いような青年であり、見るからに細身で華奢な男子だった。
熟年の機械工とおなじような全身が緑のオーバーオールの格好なのが、この基地内での役割や立ち位置ももはや明確だ。
それが一気に三人の下まで駆けつけるとただちに直立不動の気をつけ!
ビシッとしたきれいな敬礼をかましてくれる。
まだちょっと息が上がったさまで、おまけ表情もかなりアップアップ気味で緊張した第一声を張り上げる若手の見習いメカニックくんだ。
「はあっ、はあっ、はあっ…! こ、こんなところにいらしたのですか!? 基地中さがしてしまいましたっ、はあっ、ごっ、ご報告申し上げます! ベアランド准尉どのっ、本日12:00をもちまして、准尉どのに実戦配置ならびに戦闘待機命令が…あっ、いや! 戦闘準備の要請が本部より出されております! よってこれより速やかに隊舎に戻られまして、ただちに機体の確認、出撃の準備を整えられますよう、お願い申し上げます!! あとぶしつけながら、准尉どのの機体の整備はこの自分、アーガイル伍長めが一任されております! なにとぞよろしくお願いいたします!!」
「ははっ、そうかい? いや、命令なら命令でいいんだよ! そんな気を使ってくれなくともな? こっちじゃさんざんお客さん扱いされてきたんだから、望むところだ。あとおまえさんもそんな恐縮してくれなくたっていいんだぜ? お互いに一介のパイロットとメカニックじゃないか。コリンスの兄貴呼ばわりでぜんぜんかまわないよ、リドル! そうとも何を隠そう、俺たちおんなじ大型Ⅰ種のクマ族なんだからな♡」
「そそっ、そんな滅相もありません! 自分はただの見習いの身でありますから。それに見てくれもこのさまでありますから…准尉どのとはまるで…」
胸を張ったおおらかな巨漢のクマの物言いに、見るからに物怖じした虚弱グマが言葉を濁してしまいにはうつむき加減となる。最後のほうはまるで聞き取れなかったが、視線を落とした先から思いも寄らない人物に声を掛けられて思わずぎょっとなる青年機械工だ。
「大型1種ってななんだ? まあ、確かにおんなじ大型のクマ族とは思えないくらいにガタイに差があるが、それでもリドルよ、おまえさん機械いじりとしての腕は悪くねえんだぜ。筋がいいのはこのオレのお墨付きよ! もっと胸を張りな。しょせんそこのデカブツと比較すること自体が間違っているんだ」
「おおっ、親方!? いらしたんですか? ちっちゃいからまるで気が付かなかった! まことに失礼しました!!」
「やかましい! 本当に失礼じゃねえか! んなこた周りからチビ助呼ばわりされてるおめえから言われたくはねえっ、小せえのはこのブルドック族のさがであり誇りでもあるのよ! だったらおめえはもっと身体を鍛えてそこのデカぐまの半分でもボリュームをつけなっ、それで晴れて一人前よ!!」
すっかりご機嫌斜めの親方にあたふたする弟子のメカニックだが、それをすぐ真ん前のでかいクマのパイロットさまが明るく笑い飛ばしてくれる。
おまけに太い腕を伸ばして問答無用で華奢な同族の細身を抱え上げていた。
それはいわゆる愛情表現のハグなのらしいが、傍から見るにはまるで手加減のない絞め技にしか見えなかったりする。
「あっはははははは! 半分だったらまだ半人前なんじゃないのかい? まあ確かにガリでチビではあるが、これはこれでかわいげがあるってもんだよ、うん! てかチビ、ちゃんと毎日メシ食ってるのか? モリモリ食ってバリバリ働かねえと将来立派なクマ族にはなれないって、子供の頃に言われてただろ! なあ、チビ~~~!!」
「ああっ、いやっ、イタタタタ! じゅ、じゅじゅっ、准尉どの、ちからが尋常じゃないでありますっ! 両足が地面からすっかり離れてっ…ぐっ、スーツの角が本気でめり込んでいるであります!! うひいいっ…」
「ちっ、おいやめな、でかグマ! おれっちのかわいい弟子が使い物にならなくなっちまうだろう? やいリドル、スパナもってねえのか? そいつでこいつの無駄にでかいオツムを一発どついてやれ!!」
「む、ムリであります!」
必死にもがく若手のメカニックに、それまで傍から冷めたまなざしで見ていたオオカミのパイロットもしょうもなさげにこの大口を開く。
「まったくてめえの虚弱さも目に余るものがあるが、こんなデカブツ相手じゃまともでも手を焼くってもんだよな! おら、だったらオレに貸せよ、スパナ! オレが代わりに殴り倒してやるから!! でないとおまえ、死んじまうだろ?」
「も、持ってないであります!!」
「あっはは! いいんだよ、これで! クマ族ってのは元来みんなで群れてがっちりしたハグをするのが大好きな生き物なんだから♡ 他の種族からはわりかしイヤがられるけど、クマさん同士はこんなの当たり前の日常茶飯事なんだぜ? この俺もちっちゃいころはおやじやおじきからあばらが折れるくらいにきっついのを食らわされていたよ! みんなそうやって強くなっていくんだから、俺たち大型Ⅰ種のくまさんは♪」
「あっ、あばら!? ひえええっ!」
「聞いたことありゃしねえよ! なにが大型1種のクマさんだっ、んなもんもはやただの虐待だろうが? だから話が進まねえからいい加減にやめやがれっ!! たくっ…んで、機体のチェックって、オレらのテスト機はもう届いたのか? 若いあんちゃんよ??」
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