情弱

ぽやしみ仙人

文字の大きさ
上 下
2 / 2

後編

しおりを挟む


『正直何を訴えようが、何を信じてどんな思想を持っていても自由だ。けどな、間違った情報の拡散だけは許さん。誤った情報が拡散されることによって人の命が失われることだってある』

『それなんだよな。というか、知事が来るなって言っているのに、現地に出向く偽善は馬鹿なんか? お前らの貧相な物資を運ぶ愚かな行いが、大規模な支援物資を送る邪魔にしかならんってなんでわからんのかね。あと、現地視察だとか抜かして邪魔にしかしねえ議員。こんなのが国会議員とか世も末だろ』

『一つ良いことを教えてやろう。――馬鹿に何を言ったところで馬鹿はそもそも話を聞いていない』

『ああ、そういえばそうだったわ……』

『というか、日本人って地理激弱すぎんか。能登と金沢なんて同じ県とはいえ地図見りゃ結構離れているってなんでわからんの』

『そりゃ自分たちに関係がないからだろ。関東――というか東京を一歩も出ずに生活が完結するわけだし、地理を知らないところで不都合はない。それに分からなければスマホでパパッと調べれば事が済む便利な時代なのも関係しているだろうな』

『便利なところに住んでいると、修学旅行以外で県外に行く機会も無いってよく聞く話だしな』

『そういう引きこもりのために修学旅行ってのが存在しているんだろ。自分の住んでいる都道府県以外にこんなところがあるって自分の目で見させるのが最適だしな』

『百聞は一見に如かずってやつか』

『お前、カラスなのによく人間の慣用句を知っているよな』

『近所のガキが最近こればっかり言っててよ』

『なるほどな、そういうことか』

『ともかく』

 そう鳴きつつ、カラスがゴミ袋を突いて中身を起用に嘴で取り出す。

『ここの住民共も馬鹿だよな。俺達が毎朝こうやって餌を漁っていても追い出すだけで他の対策を一切しない』

『人間が馬鹿なお陰で俺達は今日も飯にありつけると。ほんと、人間様々だな』

『ば、馬鹿お前! それは食い物じゃねえ!』

 一羽のカラスが鋭く鳴くが時既に遅し。
 もう一羽のカラスがゴミ袋を加え、それを飲み込んでしまった。
 翼をバサバサ慌ただしく羽ばたかせるが事態の解決には至らない。
 やがて、周囲が騒がしくなったからか近所の住人が箒を片手にカラスを追い払う。
 こうして何でも無い毎日が繰り返されていく。




しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではPixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

遠吠え

ひまわりまま
現代文学
愛情という名の束縛から逃れられない心の詩

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

父の遺したもの

ゆる弥
現代文学
父が遺してくれたもの。それに気がついた私は……

短編集 ~レトロ喫茶 GRAVITY~

高橋晴之介(たかはしせいのすけ)
現代文学
優しいSNS【GRAVITY】から生まれた心温まる空間。 SNS上の交流やちょっとした会話から、謎の男『ミドル』と『マスター』が 毒を吐いたり、優しくしたり…… 宇宙一尖った日常会話をお楽しみください。 次の主人公はあなたかもしれない

MPを補給できる短編小説カフェ 文学少女御用達

健野屋文乃(たけのやふみの)
現代文学
迷宮の図書館 空色の短編集です♪ 最大5億MP(マジックポイント)お得な短編小説です! きっと・・・ MP(マジックポイント)足りてますか? MPが補給できる短編小説揃えています(⁎˃ᴗ˂⁎)

サンタクロースが寝ている間にやってくる、本当の理由

フルーツパフェ
大衆娯楽
 クリスマスイブの聖夜、子供達が寝静まった頃。  トナカイに牽かせたそりと共に、サンタクロースは町中の子供達の家を訪れる。  いかなる家庭の子供も平等に、そしてプレゼントを無償で渡すこの老人はしかしなぜ、子供達が寝静まった頃に現れるのだろうか。  考えてみれば、サンタクロースが何者かを説明できる大人はどれだけいるだろう。  赤い服に白髭、トナカイのそり――知っていることと言えば、せいぜいその程度の外見的特徴だろう。  言い換えればそれに当てはまる存在は全て、サンタクロースということになる。  たとえ、その心の奥底に邪心を孕んでいたとしても。

処理中です...