過去は輝く。けど未来は未だに見えない。

ぽやしみ仙人

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第一章

私たちの今は停滞か衰退かわからない。#02

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「…………」

「…………」

 しばし私たちの間に沈黙が流れる。
 けれど、それはいつものことで別に不快でもなんでもない。
 リーダーとは親友とか友人と呼べるほどの関係ではなく、逆に不仲かと問われても特にそういうわけでもない。
 仕事だけの関係性、ビジネスパートナー――その言葉がしっくりと来る。

「そういえば他のメンバーはどうなん? みんな生きてる、大丈夫?」

「カラカナ……。それはちょっと扱いが雑すぎない?」

「いや、だってメンバーのSNSは一日五回くらい周回してチェックしてるけど、ぶっちゃけあれってマネージャーとかスタッフでも更新できるわけだし……。もし誰かが死んでても生きてるように見せかけることも可能じゃん。だから生きてるかなーって」

「相変わらず発想が病気ね、カラカナって……。作家として見習いたいぐらい」

 ……彼女が引いているのは気のせいということにしておこう。
 それよりもメンバーの生存確認をしなくてはならない。

「……豊栄十海は生存中っと」

「…………」

 なんだろう、気のせいか無言の圧を感じる。
 声に出さないようにすればよかったのかしらん。

「博士――由比湯花ゆいゆばなは今朝もニュースに出てたから生存でヨシ!」

「あの娘も最近よく見るわよね。それこそ情報番組からクイズ番組まで色々と」

 博士こと由比湯花はグループ内でも群を抜いて博識だ。
 実際、高校は超がつく進学校を卒業しているし、毎日忙しいだろうに難関である某国立の大学まで通っている。
 それもあって情報番組からクイズ番組まである程度知識が必要な番組に引っ張りだこだ。
 コメントも的を射ているしとてもわかりやすいと巷では評判になっている。
 正直、あれだけ頭脳明晰なのにになんでアイドルをやっているのか謎だしグループの七不思議の一つでもある。

「対して森小路の奴は大丈夫なのか……。あいつ、大学落ちたら引退させられるんだろ?」

「桃葉さん、お馬鹿だけど真面目で、めちゃくちゃ演技が上手いから本当にもったいないわね」

 森小路桃葉もりしょうじももははメンバー最年少の現役受験生で一時的に休業中である。
 なんでも両親からの命令らしく、現役で大学に合格しないと芸能界を引退させられるとよく笑いながら話していた。
 マジで学力的にヤバいらしく、休業に入る前もちょっとした時間があれば勉強をしていたイメージがある。
 しかも彼女は私たちが中心としているアイドル活動と言うよりも、声優としてもオファーが非常に多く、演技も素晴らしいと定評があり、高校生ながら私たちより多忙な日々を過ごしていた。
 ただでさえ危ない学力が更に危険になり、このままでは仕事が続けられなくなる――それが故に休業という選択をしたのだろう。

「もしあいつが引退したらキャスト交代――なんて噂があるけど本当なのかね……」

 私たちはそれぞれ声優としてグループの『キャラクター』を演じている。
 わかりやすく言うならばバーチャルユーチューバーみたいなものだろうか。
 それぞれのメンバーに二次元のキャラクターが割り当てられ、モーションキャプチャーを使用してダンスだったり曲を歌うバーチャルアイドルというスタイルを取っている。
 ただそれ以外のライブであったりテレビ出演なんかは『キャラクター』ではなく『リアルメンバー』、声優として三次元で活動をしている。
 けれど、声優アイドルといってもアニメの出演なんかは皆無で、どうしてもアイドル寄りの活動が多い。
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