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しおりを挟む「――まさか、一番回答が多かったのはダントツで四番の『故障が比較的多い運転士』だったなんて、僕、いえ私はまったく予想外でしたよ。匿名で誰がどのように答えたのか特定出来ないようにしたのが功を奏したようですね」
「そんなのは言い掛かりだ! それはあくまでも仮定の話でしかねえだろがよ!」
怒りを我慢できなかったのか、前列に座っていた副所長が立ち上がりそう反論する。
それは完全に想定内だったのか、四街道は余裕綽々といった感じに。
「ええ、確かにこれは仮定の話です。けれど、誰がどう答えたかわからない以上、誰しもが思っている心理なはずです。誰だって怖い運転士さんから怒られたくはありませんからね。だから、自然に楽な方へ、楽な方へと進んでいってしまうのです」
「…………」
「故障が多い人――真っ先に挙げられるのは実籾です。車両故障の裏にどんな背景が、事情があろうとも実籾が壊してしまえば『また実籾がバスを壊した』と笑って済ませることが出来ます。それが出来るのであれば絶対そっちの方がいいですよね?」
「…………」
反論は――出ない。
例えば同じアンケートであれ、もし自分の名前を記入する形式であれば、恐らく結果は変わっていたのだろう。
いくらアンケートと言えどどこで誰がみているかはわからない。
ひょっとしたら何かの拍子に誰かや管理職がそれを見てしまい、自身の評価を下げられてしまうことだって絶対に無いとは言い切れない。
人は他人の目を気にする生き物だ。
誰だって建前と本音を持ち合わせておりそれらは違う。
似て非なるものだ。
けれど、そういう名前がバレるリスクがなければ、本心を書きやすくなる。
自分に少し正直になれるはずだ。
だから、四街道は自分の狙い通りの結果になるよう意図的にアンケートを匿名にしたのだろう。
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