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第四章 異世界を自由に静かに……生きたい
No.8
しおりを挟む次の日の朝は、奏歌が朝一でお城に転移してしまった。
夜遅くには帰るらしい。ご飯は晩餐会に出なきゃならないとかでいらないと……。一緒に食べれない、ちと寂しい。
まあ、そんなんで三日いることにしたわけです。
明日はゆっくりして、明後日朝一で出発の予定です。
急ぐ旅でもないですし?
なので、今日はいろんな店を冷やかす。
防具屋、武器屋はあまり変わらないな。
木、銅、青銅、鉄、鋼、銀、金……ファンタジーなミスリルやアダマンタイトなどはあまり見ない。
というか『ミスリル』はあるらしいんだけど、基本的には王族とかしか持てないくらい高いらしい。
私がやっていたゲームなんかだと銀の剣、銀の槍なんかが強めだったし……。
アダマンタイトやヒヒイロカネ?とかは、この世界では全く話をきかない。
前にロドリヌスに一番硬い金属って何かをきいたことがある。
なんでも『黒金』という金属があるらしい。
そういえば、ギルドカードも黒金のSSランクがあったな。あ、ロドリヌスのランクじゃん。
でも、金が最高なんじゃないの?
「金が上じゃないの?」
「価値なら上だ。だが、強いのは黒金だな。ただなあ、扱えるのが……ドワーフくらいしかいねえ。」
「ドワーフって、ピアノ作りに関わった?」
「そうだ。」
「ふーん。」
という会話で終わった覚えがある。
確かに見たことがないしね。
ロドリヌスとミリオンは、ミスリルの剣を持っている。まあ、ミリオンは王族だし、ロドリヌスは王から贈られたらしいが。
なんでもミスリルは、魔力と相性がいいんだとかで、魔法剣士には鬼に金棒らしいんだ。
ハリーやハロルド、ラナンは鋼の剣と銀の短剣を持っている。
銀は闇属性避けになるらしいんだ。
聖水につけると、一定時間光属性を纏うというからファンタジーだね。
でもだから、高価なんだとか。
魔神の短剣は、銀色だけど……何でできてるか不明。
だって鑑定でも出ないんだもんよ。
まあ、強いからいいんだけどね。
そんなことを考えながらロドリヌスに抱っこされ通りを行く。
すると、どっからか怒鳴り声がしてきた。
「かえせよっ!」
「これは、俺が預かるさっ。」
「かえせっ!俺が稼いだ金だろっ!母さんの薬代だ、かえせっ!」
「うるせーっ!どーせ、死んじまう奴に使う必要ねーだろっ!」
「なんだとっ!お前のせいだろっ!」
「はっ、俺のせいじゃねーさ。そのガキを産んだせいだろう?
もともと、よえー体のくせに産む方が悪いんだっ。稼げなくなるから、おろせって言ったのになあ?」
「うるさいっ!ぜんぶ、お前が悪いくせにっ!ガッ!」
「黙りやがれ!だれに向かって口聞いてやがる!父親に向かっていう言葉かっ!」
「だれがっ!お前なんて、父親なんかじゃねーや!」
「はっ、残念だがお前には俺の血が流れてんだよ、だから、お前には優しくしてやっただろ?まあ、そいつは俺の子じゃねーけどなっ!
そうだな、だいぶ育ってきたし……売るか?」
「ふざけんなっ!」
「このガキ、何しやがるっ!」
「に、にーちゃ……。」
「にげろっ!ニナ!」
随分ぶっそうじゃないかな?
路地からするのでそちらに向かうことにした。
早足で、路地裏に滑り込むとぐちゃぐちゃに蹴られ続けている男の子と泣いて動けなくなってる女の子がいた。
蹴っているのは、デカイ男だ。
ぐったりと動けない男の子にもう一度蹴りを入れようとした瞬間、私は転移して、バリアを張った。
ガキョンっとへんな音がして、男の足がブラブラしている。
「ぐきゃあっ!いてえ、いてえー!」
どうやらバリアを力の限り蹴って、自分の足を折ってしまったようだ。
というか、自分の足を折るほどの力で子供を蹴ろうとしたなんて!
許せない!
「このクソガキがあっ!」
ゲシッ!
男が真っ赤になって手を振り上げた瞬間、ロドリヌスに思いっきり蹴られた。
「ショウ、大丈夫か?」
「もちろん。」
まあ、たぶん殴りつけられてもバリアで今度は腕を折るんじゃないかな?
私は子供二人をバリア内に保護したまま、ロドリヌスにお願いする。
「ロド、そのお馬鹿さんからその皮袋を受け取って。たぶん、この子のお金がはいってるんじゃないかな?あと、逃げないように拘束しておいてくれる?
私は、子供を虐待する奴は絶対に許せないんだ。
いまは、この子を治すから。」
「……わかった。」
男をロドリヌスにまかせ、私は癒しの魔法を使う。
「に、にーちゃ。えっ、うー。」
「大丈夫。私が絶対に助けるよ。
光よ、癒せ。キュア!」
男の子が光に包まれると、逆再生を見るように傷が癒えていく。
そう、ハロルドの時にはできなかった(想像できなかったから)癒し方。
なくなった血は戻らない。
大人ならいい。体力もある冒険者や兵士なら。
でも、子供は血を流しすぎたら簡単に死んでしまう。
大人が庇護すべき存在なのだから。
だから、考えた。
そう、全てを戻す事で失った血も元に戻して癒す魔法。
言葉はヒールでもいいんだけど。
言葉くらいは上級魔法にしておけと言われた。
奏歌と私にとって、呪文は呪文とならない。ただの想像のキーワード的なものだから。
そもそも、この世界では『想像力』が魔法を生み出すわけだしね。
車でいうなら『想像力』は車種で『魔力』はエネルギー(ガソリン)と『ランク』はエンジンの馬力かな?
だから、上級魔法の『キュア』もいろんな治し方がある。
奏歌もまた不思議な癒しだしね。基本、『癒しの歌』だから。
どうやら、こちらの女の子も殴られた痕があるのでこちらはヒールで癒した。
「お、俺……。」
「もう、どこも痛くない?」
「て、天使様⁉︎」
だれがじゃ……。頭でも打ったか?
「頭も打ったのかな?痛いところない?」
「て、天使、様……俺は死んだのか?」
「いや、死んでないし。天国じゃないし……ほら、妹ちゃんも無事だよ。」
「にーちゃ。」
「ニナ!お前も殺されたのかっ!」
「だから、死んでないって!」
思わず怒鳴ってしまった。
「……しんでない?」
「そう、死んでない。」
「でも、俺……ボロクソ……あれ?痛くない。え?なんで?だって……。」
「にーちゃ、ねーたんが治ちた。」
「え、聖女のお力?」
「ちがう!ただの癒し魔法だよ。」
「…助かったの?」
「うん。悪い奴はあそこ。で、どうしたい?二度とこんなことをしようとしないようにお灸をすえるか、王都に連行して、犯罪奴隷にするかだね?
どーしたい?」
「殺してやりたい!」
「んー、殺したらダメだよ。一応、あれでも人間だしね。
うんじゃあ、二度と悪いこと考えないようにして、王都に連行しようか……。王都からここまで無事には戻ってこれないだろうし。」
だってねえ、Aランク以上じゃないとここまでの道のりの魔獣退治は難しいよ?
まして、一人じゃねー。
「俺たちのとこに戻ってこないなら、任せる。
でも、いいの?」
「うん。任せて?一度やってみたいことがあったんだー。前に読んだファンタジーにあったの!
サドっ気はないけど……虐待男には死にたいって思うくらいのことしてもいいよね?」
にっこり微笑んだのに、ハロルドに怖かったと言われた。
……解せぬ。
「ちなみにどうしたいんだ?」
と聞かれたので、前に読んだ本のお仕置き方を言ってみた。
『死ぬほどの痛み伴うように手足を折って、癒しで元に戻して、また折って治すを繰り返すだけの簡単なお仕事』ですと。
そのおっさんを含めて、三人とも顔が青いけど、大丈夫?
「代わりに俺がやっておくから。」
とハロルドとラナンがそいつを連れて行ってしまった。
でも、二人とも青い顔のままだ。
ロドリヌスは笑ってるのに。
なんでだ?
首をかしげる私にロドリヌスが『気にするな』と頭を撫でた。
この後、私は二人のお母さんを見舞った。
私は癒しの魔法で彼女を癒した。
ただ、たぶんだけど……彼女がかかっていたのは……栄養失調とその……梅毒なんじゃないかな……。
治ったけど。
話を聞くとあの男に無理やり春を売らされていたらしい。
やっぱり、あの方法でお仕置きした方がいいんじゃないの?
あっ、でも同じ病気に罹ってる可能性あるかなあ。
なら、これ以上誰かに移さないように……去勢してもいいんじゃないかな?
世のため人のためにも。
って言ったらロドリヌスとハロルドが真っ青になっていた。
ラナンは笑っていたけどね!
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