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第三章 異世界を満喫する

No.2

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三人で外にでる(すでにシャルは短剣の中)とロドリヌスたちは既に待機……あやつらは、何故こうも過保護なのか。
いつからまっていたのか……アイドルの出待ちでもあるまいに。
そもそもラナンがいるし、私らも決して弱くはないというのに。

「おはよう。」
「おう、おはよう。」
「挨拶は済んだのか?」
「ん、まあ。」

そもそも宿屋なので、濃厚な挨拶はする気はない。抱きしめられて焦ったくらい。
でも、ただ黙ってでる気はないってくらいの関係だったはずだけど。女将さんは良い人で、私たちをかなり気にかけていてくれたみたいで……。
出ていくのは少しだけ寂しい気もした。

「じゃあ、行こう。」

と、またロドリヌスに抱っこされたんですけど?
いや……本当にこれじゃ親子にしか見えないが、それでいいのか?
あんなに嫌がって嫌がらせしたくせに。
まあ、私はもう絶対に言わないけどさ、親子に思われることは私的には良いけど。ロドリヌスはいいのか?
でも、墓穴を掘りそうなんで聞いたりなんかしないぞ。

「はあ、甘いよね。まあ、ママは体力低いから安心だけどね。」
「ふふふ、そうよね。ソカもしましょうか?役得になるし?」
「やだ、やめてよ。そもそもこの世界では『成人大人』なんでしょ?
恥ずかしいだけじゃん。」
「ふふ、大人には見えないけどね?」
「えー?マジで嫌になっちゃうなあ。」
「ふふふ。」

しっかし、このメンバーって……割と最強だよね?
そんなメンバーで街を歩いて目立たないわけもなく、多少の好奇の目に晒されているんだけど……今までもだった?

「ねえ、すんごく視線感じるんだけど?なんで?」
「まあ、お前らのせいだろうなあ。」
「はあ?ロドさんたちの所為じゃないの?」
「まあ、少しはそれもあるが……、お前らの偉業が知れ渡ったんだろう?」
「偉業?は?」
「偉業だろ?兵士や冒険者を癒し、力を与え、あまつさえブラックドラゴを倒したんだぞ?」
「まあ、皆んな神聖視するわよねえ。」

んー、言葉で聞くと凄いことをしてしまったらしい。
でも、実際には大したことをしてないんだけどなあ。

「大したことだからな?」
「声出てた?」
「いや、顔に書いてある。」
「ショウは、意外に顔に出るからねえ。ソカの方が意外と出ないかな?」

……娘に負けてしまった……。

「まあ、顔に出やすいのは昔からだもんね。」

ソカに呆れられるって。もう、母の威厳はこの世界に来てから地に堕ちている。……え?前の世界からじゃないよね?聞きたいけど、怖くて聞けない私なのです。

「ただねえ。」
「ああ、いい視線ばかりじゃ。」
「ないわね。」

確かに嫌だなって思う感じも混ざっている。
まあ、好意ばかりじゃないのはしょうがないね。
疑心や妬み、あとは助けられた人と助けられなかった人の……そんな気持ちもあるだろう。
人は優しい生き物ではないから。
うん、よし。スルーするしかないだろう。それが一番だ。






程なくして、家につく。
やはり、でかいなあ。裏庭が森みたいになってるし。
正面もねえ。馬車使わないのに馬車が入れるロータリー状になってるし。
なんでかなあ。将来的に持つのかな?
しかし走り込みに使えそうだ。
体力向上のためにも始めようかな?
しっかし、こんな広いと管理するの大変じゃないかなあ。
本当は家庭菜園くらいは作りたいのだけど、作れるかなあ。
なんか、ロドリヌスに言ったら本格的な農園を作りそうで未だに言ってない。
うん、そうだ。おいおい、やろう。

「では、お姫様方どうぞ?」
「あたいもかい?」
「……一応?」
「なんだい、そりゃ。まあ、姫様って柄じゃないがな!」

あはははとラナンが豪快に笑う。
いや、私たちも姫ではない。秘めではあるが!なんて……しょうもないことを頭の中で考えているうちに、中に入り部屋に連れていかれた。
そこに降ろされて整理ができたら降りてこいと言われた。

荷物の整理をしたら、ご飯作りである!
整理といっても、カバンを置いてティアを……てぃあ!
え?どこ?

『カバンの中だよ?』
「え!ずっと?」
『うん、寝たら落ちたの。でも、気持ちよくて寝ちゃったの。』
「じゃ、お腹すいてない?」
『うん、空いてる?かも。』

よいしょと、カバンからティアを引っ張り出した。
……静かすぎて忘れていた。
って……あれ?ぐわあ。重い!
押しつぶされそうになって、身体強化の魔法をかけてティアの下から這い出た。完全に体重は負けている。

「ティア、また大きくなってない?」

出したはいいけど、私と変わらない大きさ。う、幅も負けてる。

『たくさん眠ったから?かも。』
「でも、この中って時間が……。」

ゆっくり流れるんじゃないの?
とりあえず、ミルクを空間収納マジックボックスから出して魔力を注いで渡す。
一気飲みされた。

『ママ、もう一杯ほしい。』
「わかった。」

もう一度、魔力を注いで渡すと一気に飲んで一息つく。

『おいしかった、ママ。』

と手を伸ばしてきたが。

「……もう。私じゃ、抱っこできない。」

身体強化すれば出来るが、手が回らないだろう。 
ティアは、ふむと考え込む。
少し間があって名案とばかりに一言。

『今度はティアがママを乗せるの。』
「え?」

いやいや、無理でしょう。というか、伝説のドラゴンを乗り物代わりになんてできないよ!
目立つどころの騒ぎではない。


「おーい?」
「え?」
「どうゆうこと?」

私が遅すぎて、ソカとロドリヌスが迎えに来たらしい。

「遅いから迎えに来たんだが……。」
「ティア?デカくない?」
「うん。その、すっかり忘れてたらカバンの中に落ちちゃったみたいで。……引っ張り出したら……。」
「育ってたってか……。」
「うん。」
「んー、この速度で育つとそのうち家の中じゃ……。」
「だよね……。」

ドラゴンって、成長こんなに早いの?
大人になったらどのくらい大きくなるわけ?
やっぱり、王立の図書館行かなきゃいけないのかなあ。

……王族はミリオン以外、もう関わりたくないんだけどな……。









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