上 下
75 / 124
第二章 異世界というものは

No.48

しおりを挟む
 

「……フヒッ、ヒ……。」

はあ、苦しかった。
笑った笑った。
ひとしきり大笑いしたあと、ようやくヒーヒーと落ち着いてきた。

「はあ、ごめんなさい。大笑いしてしまって。」
「いいえ、腹を立てられていなくて、少しホッといたしました。
まあ……だからといって、あの脳筋の粗相がなかったことにはなりませんがな。」

やめてください。
まだ、笑いの発作がやばいんですからっ!
次に王様に会ったとき、『脳筋王』しか浮かばなくなるじゃありませんか。
綺麗なカップ(さすが、最高セレブ高そうです!)にお茶を注がれて前にさりげなく年の少しいったメイドさんが置いてくれた。

「ありがとうございます。」

と奏歌はカップを手にする前にスマホをかざしていた。
なぜ?
今更、インスタはやらないよね?
キョトンとした顔で奏歌を見ると、なぜか残念な子を見る目で見られた。
ピコンと自分のスマホの音が頭に響く。どーやら、音消しをしてあったんだけど神様ストーカー仕上げのスマホは、頭に着信音がするようだ。
ポケットからスマホを取り出すしてみはると案の定、奏歌からメッセージが届いていた。

『あのさ、どんなに信用してる人でもさ。お茶を用意したのは別の人じゃない?少しは警戒心を持とうよ。そのためのツールがあるんだからさ。』

あれ?奏歌の方が保護者化していない?
私、すでに母親失格?
娘の方が危機管理能力育っているようです……。
確かに、用意してる人は雇われてる人だから、本当に信頼できるかのかわからない。

……でも、さあ。

雇ってるのが、ミリオンのおかあさんじゃないの?
ましてや、宰相様だってねえ……。
そこまで、疑うことが私にはまだできない。
むむむむ……と変な顔をしてしまった。
また、メッセージが届く。
『別に王妃様とかを疑うんじゃなくて、ただ雇われてる人の心は別だから……警戒は必要ってことだよ。だってさ、王妃様や宰相様だって狙われたりするもんじゃない?ましてや、王妃様は一人じゃないんだし?
……ちなみに、鑑定結果は[飲むな]ってさ。』
ゲッ。

「え?」
「ん?どうした?」
「ううん、なんでもない。」

ねね、どうゆうこと?どうゆうこと?どーゆーことさっ!
すると、またメッセージが!
それも二人に同時にらしい。
つまりは神様ストーカーからかな?

『昭子ちゃん、奏歌ちゃん。こんばんは。
あのね、面倒そうだからね?そのスマホにお互い手にするとテレパシーで繋がるようにしたよ!
すごい?すごいよね!
パチパチパチ……。
これで何があっても二人が繋がれるよ!ね?だからね、もっと活用して!
byストーカぢゃないからっ!神様』

ほー。あたまで、話をしてみる。
[聞こえる?]
[うん、マジで神の力すごい!]
[ウンウン、でも、それはあとでね。でお茶を鑑定したの?]
[うん。なんかねえ?嫌な感じがしたから!
したらね?
媚薬入りなってるんだよ?
でもさ、鑑定できるって知られない方がいいんでしょ?]
[……うん。お茶、全部に?]
[ううん、私のとママのだけなの。なんでかね?]
[了解。のまないよ。]
[だね!]

「お茶はいかがですか?」

とメイド?さんが言う。
んー、私もよくわからないけど、メイド自らがお茶を勧めたりするのかな?

「今は、喉乾いてないんで大丈夫です。」
「そうですか。」

あとの問題はこの二人も知ってるのか?
それともメイドが勝手に、もしくは誰かに命令されてやっているのかどうか?

しかし、子供に媚薬飲ましてどーすんだよっ!!!

「ショウ、顔が変になってるぞ?」
「……元からですよ?」

ロドリヌスとミリオンだけなら言えるのに。

「ん、ショウはこのお茶があまり好きじゃないんだよ。
私もこれはいいです。」

にっこりと笑みを浮かべて断る奏歌は、なんか急激に大人になっている気がする。
逆に、私が子供っぽく…………。
いや、元からなのかもしれない……な。
うん……認めたくないが。

「まあ、じゃあ果実水がいいかしらね?」

と王妃様がニコニコと違う飲み物を用意するように言う。

「ですが、王妃様?
このお茶はとても高級なものでございますよ。
ぜひ、御二方には一口だけでも味わっていただきたいですわ。
とてもではございませんが、普段は下々の方は決して口にできないものでございますしょう?」
「……ドレイヤ。口が過ぎるぞ?
ショウ様もソカ様も苦手だと言っておるではないか。
なぜ、そこまで無理を進める?
そもそも何故、お前が給仕をしているなかね?
メイド長のレリアはどうしたね?今日は粗相があってはならぬからと、給仕全てをレリアに頼んだはずぞ?」
「その、あの……レリア様は急用がありまして……その。」

んー。頭悪すぎじゃないかな?
この人。
そもそも、偉い人からの頼まれた仕事をドタキャンなんてするもの?それも『長』である人が!
すごーく、自分を怪しんでくれって言ってるように聞こえますよね?
第一、要らないって言ったお茶を一口だけでもとか、下々云々は見下して見ているってことだよね?
つまりは、卑下していると。

……仕方ない。奏歌にばかり頼っていてはね。
スマホ鑑定してみますか。
まあ、奏歌もしているだろうが。

三人を写してみる。

ーールテリシア
ーー聖光陽国  第一王妃
ーー320歳
ーー善人(怒ると怖い)

ーースレイラス
ーー聖光陽国 宰相
ーー推定1500歳
ーー大賢者の資格を持つ者
ーー常識なる善人(生き字引)

ーードレイヤ
ーー聖光陽国 第二王妃の従姉妹
ーー56歳
ーー嫉妬と欲にかられた者

……スマホを見て奏歌と目を通わせる。
お互い手にしているため、テレパシーで話し出す。

[ねえ、色々とツッコミどころ満載だけどさ。でも年が見た目とあんまり変わらないってことは、あのメイドは魔力値は低いってこと?]
[多分ね。でもさ、王妃様と宰相様が善人でよかったね!それに宰相様と王妃様の見た目から……二人とも魔力値高いよね?]
[うん。]

「ショウ、もういいか?」

頭を撫でながら、ロドリヌスに言われた。
鑑定したのがわかったのかな?
スマホが魔道具的なことを知ってるもんね。

「……エレノア、ドレイヤを捕らえろ!」

怒気を孕んだ静かな宰相様の声が響く。

「はっ。」

扉のところに静かに控えていたエレノアさんが、そのメイドをすぐに捕縛した。

なんで急に捕物?

見ると宰相様が何かの石を手にして、お茶を見つめていた。

「お前の言い方が気になってね?鑑定をさせてもらったよ。
なぜ、御二人のお茶に『薬』が入っているのかね?」
「……知りません。」

そんなわけないだろうが!と言いたいけど、証拠はないもんね。

「そんなわけあるか!」

宰相様おじいちゃんが一喝する。
宰相様おじいちゃんはかなり激おこだ。

「この方達は、国賓だと言ったはずだ。
故に信頼の置けるレリアに頼んだのだというのに。レリアがお前に頼むとはあるえない。レリアに何をした?
そもそもドレイヤ……。
この儂が何も知らないと思っているのか?
流石に此度は、第二王妃の力も及ばぬと思え!」

立ち上がりメイドを睨みつける宰相様おじいちゃんは、ちょっと怖いですね。

「わ、私は何も!ほんとうです。ただ……頼まれただけです。」
「誰に?」
「言えば、殺されます!」

まるで茶番劇のようだ。
媚びるドレイヤに皆が呆れているのがわかる。

「……見苦しいわねえ。誰が命令したとかはどうでもいいわ。
……頭悪すぎよお?
でもねえ?二人に何かしようとしたのは事実よね?
ふふふ。」
「ヒィッ!」

ドレイヤがミリオンの殺気をもろに受けて、ガタガタと震え出す。
……恐怖の大魔王降臨です(ガクブル)。
そして、背中ごしでも感じる殺気が漏れてきてますよ?ロドリヌスさん(さらにガクブル)。

「まあ、いい。城で捌けず、城から出て行くなら……覚悟するんだな?
お前は、勇者を二人敵にまわしているんだから。」

さらにガタガタと怯え出すドレイヤ。
うーん。
薬盛られかけたとはいえ、ちと気の毒に思う。媚薬でしょう?
ちとエッチい感じになる程度ではないのかな?

しかし、さらに追い討ちがかかった。

「いや?英雄もだな。」

いつの間にか案内されたらしく、扉からハリーが入ってきた。
後ろからは苦笑いのラナンもいた。

「さあ、行きましょうか?ドレイヤ。たぶん、貴女の安全な場所は牢の中だけでしょうねえ。」

真っ青に血の気をなくし、ふらふらとドレイヤは立ち上がる。
するといきなり、エレノアの腕を振り切り何かを私の方へ投げた!

「え?」

と思う間も無く、それは私の元に届く寸前に銀の塊に阻まれた。
 投げられたものは、黒い玉だったらしい。
大きな銀の塊は鋭い口で、黒い玉を咥えガキンっと噛み砕いた。
すると、中から『黒いモヤ』が出てきてドレイヤに絡みつく。

「ギャアアアアアアアア!」

と物凄い叫び声をあげて、ドレイヤが霧散した。
そう、霧散したのだ一瞬で!
人が!

『……失敗した。』

黒いモヤがそう呟いて、かき消えたのだった。

たぶん、時間にしてそれほど長い時間ではなかった。
そう、それはまさに一瞬の出来事だった。

わたし達は、ただ呆然としたのだった。








 


しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

鑑定能力で恩を返す

KBT
ファンタジー
 どこにでもいる普通のサラリーマンの蔵田悟。 彼ははある日、上司の悪態を吐きながら深酒をし、目が覚めると見知らぬ世界にいた。 そこは剣と魔法、人間、獣人、亜人、魔物が跋扈する異世界フォートルードだった。  この世界には稀に異世界から《迷い人》が転移しており、悟もその1人だった。  帰る方法もなく、途方に暮れていた悟だったが、通りすがりの商人ロンメルに命を救われる。  そして稀少な能力である鑑定能力が自身にある事がわかり、ブロディア王国の公都ハメルンの裏通りにあるロンメルの店で働かせてもらう事になった。  そして、ロンメルから店の番頭を任された悟は《サト》と名前を変え、命の恩人であるロンメルへの恩返しのため、商店を大きくしようと鑑定能力を駆使して、海千山千の商人達や荒くれ者の冒険者達を相手に日夜奮闘するのだった。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

他国から来た王妃ですが、冷遇? 私にとっては厚遇すぎます!

七辻ゆゆ
ファンタジー
人質同然でやってきたというのに、出されるご飯は母国より美味しいし、嫌味な上司もいないから掃除洗濯毎日楽しいのですが!?

目が覚めたら誰もいねええ!?残された第四王子の俺は処刑エンドをひっくり返し、内政無双で成り上がる。戻って来てももう遅いよ?

うみ
ファンタジー
『イル・モーロ・スフォルツァ。喜べ、一番の愚息であるお前が今日から王になるのだ』 隣国から帰国した翌日、玉座にふざけたことが書かれた手紙が置いてあった。 王宮はもぬけの殻で、王族連中はこぞって逃げ出していたのだ! 残された俺の元には唯一の護衛である騎士と侍女しかいなかった。 重税につぐ重税で国家は荒廃し、農民は何度も反乱を起こしているという最悪の状況だった。 更に王都に伯爵率いる反乱軍が迫って来ており、自分が残された王族としてスケープゴートにされたのだと知る。 王宮から脱出した俺は伯爵を打ち倒し、荒廃しきった国を最強国にまで導くことを誓う。 いずれ逃げ出した王族たちに痛撃を食らわせることを心に秘めながら。

無能なので辞めさせていただきます!

サカキ カリイ
ファンタジー
ブラック商業ギルドにて、休みなく働き詰めだった自分。 マウントとる新人が入って来て、馬鹿にされだした。 えっ上司まで新人に同調してこちらに辞めろだって? 残業は無能の証拠、職務に時間が長くかかる分、 無駄に残業代払わせてるからお前を辞めさせたいって? はいはいわかりました。 辞めますよ。 退職後、困ったんですかね?さあ、知りませんねえ。 自分無能なんで、なんにもわかりませんから。 カクヨム、なろうにも同内容のものを時差投稿しております。

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

晴れて国外追放にされたので魅了を解除してあげてから出て行きました [完]

ラララキヲ
ファンタジー
卒業式にて婚約者の王子に婚約破棄され義妹を殺そうとしたとして国外追放にされた公爵令嬢のリネットは一人残された国境にて微笑む。 「さようなら、私が産まれた国。  私を自由にしてくれたお礼に『魅了』が今後この国には効かないようにしてあげるね」 リネットが居なくなった国でリネットを追い出した者たちは国王の前に頭を垂れる── ◇婚約破棄の“後”の話です。 ◇転生チート。 ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げてます。 ◇人によっては最後「胸糞」らしいです。ごめんね;^^ ◇なので感想欄閉じます(笑)

外れスキル「トレース」が、修行をしたら壊れ性能になった~あれもこれもコピーし俺を閉じ込め高見の見物をしている奴を殴り飛ばす~

うみ
ファンタジー
 港で荷物の上げ下ろしをしたり冒険者稼業をして暮らしていたウィレムは、女冒険者の前でいい顔をできなかった仲間の男に嫉妬され突き飛ばされる。  落とし穴に落ちたかと思ったら、彼は見たことのない小屋に転移していた。  そこはとんでもない場所で、強力なモンスターがひしめく魔窟の真っただ中だったのだ。 幸い修行をする時間があったウィレムはそこで出会った火の玉と共に厳しい修行をする。  その結果たった一つの動作をコピーするだけだった外れスキル「トレース」が、とんでもないスキルに変貌したのだった。  どんな動作でも記憶し、実行できるように進化したトレーススキルは、他のスキルの必殺技でさえ記憶し実行することができてしまう。  彼はあれもこれもコピーし、迫りくるモンスターを全て打ち倒していく。  自分をここに送った首謀者を殴り飛ばすと心の中に秘めながら。    脱出して街に戻り、待っている妹と郊外に一軒家を買う。  ささやかな夢を目標にウィレムは進む。   ※以前書いた作品のスキル設定を使った作品となります。内容は全くの別物となっております。

処理中です...