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第二章 異世界というものは
No.48
しおりを挟む「……フヒッ、ヒ……。」
はあ、苦しかった。
笑った笑った。
ひとしきり大笑いしたあと、ようやくヒーヒーと落ち着いてきた。
「はあ、ごめんなさい。大笑いしてしまって。」
「いいえ、腹を立てられていなくて、少しホッといたしました。
まあ……だからといって、あの脳筋の粗相がなかったことにはなりませんがな。」
やめてください。
まだ、笑いの発作がやばいんですからっ!
次に王様に会ったとき、『脳筋王』しか浮かばなくなるじゃありませんか。
綺麗なカップ(さすが、最高セレブ高そうです!)にお茶を注がれて前にさりげなく年の少しいったメイドさんが置いてくれた。
「ありがとうございます。」
と奏歌はカップを手にする前にスマホをかざしていた。
なぜ?
今更、インスタはやらないよね?
キョトンとした顔で奏歌を見ると、なぜか残念な子を見る目で見られた。
ピコンと自分のスマホの音が頭に響く。どーやら、音消しをしてあったんだけど神様仕上げのスマホは、頭に着信音がするようだ。
ポケットからスマホを取り出すしてみはると案の定、奏歌からメッセージが届いていた。
『あのさ、どんなに信用してる人でもさ。お茶を用意したのは別の人じゃない?少しは警戒心を持とうよ。そのためのツールがあるんだからさ。』
あれ?奏歌の方が保護者化していない?
私、すでに母親失格?
娘の方が危機管理能力育っているようです……。
確かに、用意してる人は雇われてる人だから、本当に信頼できるかのかわからない。
……でも、さあ。
雇ってるのが、ミリオンのおかあさんじゃないの?
ましてや、宰相様だってねえ……。
そこまで、疑うことが私にはまだできない。
むむむむ……と変な顔をしてしまった。
また、メッセージが届く。
『別に王妃様とかを疑うんじゃなくて、ただ雇われてる人の心は別だから……警戒は必要ってことだよ。だってさ、王妃様や宰相様だって狙われたりするもんじゃない?ましてや、王妃様は一人じゃないんだし?
……ちなみに、鑑定結果は[飲むな]ってさ。』
ゲッ。
「え?」
「ん?どうした?」
「ううん、なんでもない。」
ねね、どうゆうこと?どうゆうこと?どーゆーことさっ!
すると、またメッセージが!
それも二人に同時にらしい。
つまりは神様からかな?
『昭子ちゃん、奏歌ちゃん。こんばんは。
あのね、面倒そうだからね?そのスマホにお互い手にするとテレパシーで繋がるようにしたよ!
すごい?すごいよね!
パチパチパチ……。
これで何があっても二人が繋がれるよ!ね?だからね、もっと活用して!
byストーカぢゃないからっ!神様』
ほー。あたまで、話をしてみる。
[聞こえる?]
[うん、マジで神の力すごい!]
[ウンウン、でも、それはあとでね。でお茶を鑑定したの?]
[うん。なんかねえ?嫌な感じがしたから!
したらね?
媚薬入りなってるんだよ?
でもさ、鑑定できるって知られない方がいいんでしょ?]
[……うん。お茶、全部に?]
[ううん、私のとママのだけなの。なんでかね?]
[了解。のまないよ。]
[だね!]
「お茶はいかがですか?」
とメイド?さんが言う。
んー、私もよくわからないけど、メイド自らがお茶を勧めたりするのかな?
「今は、喉乾いてないんで大丈夫です。」
「そうですか。」
あとの問題はこの二人も知ってるのか?
それともこのメイドが勝手に、もしくは誰かに命令されてやっているのかどうか?
しかし、子供に媚薬飲ましてどーすんだよっ!!!
「ショウ、顔が変になってるぞ?」
「……元からですよ?」
ロドリヌスとミリオンだけなら言えるのに。
「ん、ショウはこのお茶があまり好きじゃないんだよ。
私もこれはいいです。」
にっこりと笑みを浮かべて断る奏歌は、なんか急激に大人になっている気がする。
逆に、私が子供っぽく…………。
いや、元からなのかもしれない……な。
うん……認めたくないが。
「まあ、じゃあ果実水がいいかしらね?」
と王妃様がニコニコと違う飲み物を用意するように言う。
「ですが、王妃様?
このお茶はとても高級なものでございますよ。
ぜひ、御二方には一口だけでも味わっていただきたいですわ。
とてもではございませんが、普段は下々の方は決して口にできないものでございますしょう?」
「……ドレイヤ。口が過ぎるぞ?
ショウ様もソカ様も苦手だと言っておるではないか。
なぜ、そこまで無理を進める?
そもそも何故、お前が給仕をしているなかね?
メイド長のレリアはどうしたね?今日は粗相があってはならぬからと、給仕全てをレリアに頼んだはずぞ?」
「その、あの……レリア様は急用がありまして……その。」
んー。頭悪すぎじゃないかな?
この人。
そもそも、偉い人からの頼まれた仕事をドタキャンなんてするもの?それも『長』である人が!
すごーく、自分を怪しんでくれって言ってるように聞こえますよね?
第一、要らないって言ったお茶を一口だけでもとか、下々云々は見下して見ているってことだよね?
つまりは、卑下していると。
……仕方ない。奏歌にばかり頼っていてはね。
スマホ鑑定してみますか。
まあ、奏歌もしているだろうが。
三人を写してみる。
ーールテリシア
ーー聖光陽国 第一王妃
ーー320歳
ーー善人(怒ると怖い)
ーースレイラス
ーー聖光陽国 宰相
ーー推定1500歳
ーー大賢者の資格を持つ者
ーー常識なる善人(生き字引)
ーードレイヤ
ーー聖光陽国 第二王妃の従姉妹
ーー56歳
ーー嫉妬と欲にかられた者
……スマホを見て奏歌と目を通わせる。
お互い手にしているため、テレパシーで話し出す。
[ねえ、色々とツッコミどころ満載だけどさ。でも年が見た目とあんまり変わらないってことは、あのメイドは魔力値は低いってこと?]
[多分ね。でもさ、王妃様と宰相様が善人でよかったね!それに宰相様と王妃様の見た目から……二人とも魔力値高いよね?]
[うん。]
「ショウ、もういいか?」
頭を撫でながら、ロドリヌスに言われた。
鑑定したのがわかったのかな?
スマホが魔道具的なことを知ってるもんね。
「……エレノア、ドレイヤを捕らえろ!」
怒気を孕んだ静かな宰相様の声が響く。
「はっ。」
扉のところに静かに控えていたエレノアさんが、そのメイドをすぐに捕縛した。
なんで急に捕物?
見ると宰相様が何かの石を手にして、お茶を見つめていた。
「お前の言い方が気になってね?鑑定をさせてもらったよ。
なぜ、御二人のお茶に『薬』が入っているのかね?」
「……知りません。」
そんなわけないだろうが!と言いたいけど、証拠はないもんね。
「そんなわけあるか!」
と宰相様が一喝する。
宰相様はかなり激おこだ。
「この方達は、国賓だと言ったはずだ。
故に信頼の置けるレリアに頼んだのだというのに。レリアがお前に頼むとはあるえない。レリアに何をした?
そもそもドレイヤ……。
この儂が何も知らないと思っているのか?
流石に此度は、第二王妃の力も及ばぬと思え!」
立ち上がりメイドを睨みつける宰相様は、ちょっと怖いですね。
「わ、私は何も!ほんとうです。ただ……頼まれただけです。」
「誰に?」
「言えば、殺されます!」
まるで茶番劇のようだ。
媚びるドレイヤに皆が呆れているのがわかる。
「……見苦しいわねえ。誰が命令したとかはどうでもいいわ。
……頭悪すぎよお?
でもねえ?二人に何かしようとしたのは事実よね?
ふふふ。」
「ヒィッ!」
ドレイヤがミリオンの殺気をもろに受けて、ガタガタと震え出す。
……恐怖の大魔王降臨です(ガクブル)。
そして、背中ごしでも感じる殺気が漏れてきてますよ?ロドリヌスさん(さらにガクブル)。
「まあ、いい。城で捌けず、城から出て行くなら……覚悟するんだな?
お前は、勇者を二人敵にまわしているんだから。」
さらにガタガタと怯え出すドレイヤ。
うーん。
薬盛られかけたとはいえ、ちと気の毒に思う。媚薬でしょう?
ちとエッチい感じになる程度ではないのかな?
しかし、さらに追い討ちがかかった。
「いや?英雄もだな。」
いつの間にか案内されたらしく、扉からハリーが入ってきた。
後ろからは苦笑いのラナンもいた。
「さあ、行きましょうか?ドレイヤ。たぶん、貴女の安全な場所は牢の中だけでしょうねえ。」
真っ青に血の気をなくし、ふらふらとドレイヤは立ち上がる。
するといきなり、エレノアの腕を振り切り何かを私の方へ投げた!
「え?」
と思う間も無く、それは私の元に届く寸前に銀の塊に阻まれた。
投げられたものは、黒い玉だったらしい。
大きな銀の塊は鋭い口で、黒い玉を咥えガキンっと噛み砕いた。
すると、中から『黒いモヤ』が出てきてドレイヤに絡みつく。
「ギャアアアアアアアア!」
と物凄い叫び声をあげて、ドレイヤが霧散した。
そう、霧散したのだ一瞬で!
人が!
『……失敗した。』
黒いモヤがそう呟いて、かき消えたのだった。
たぶん、時間にしてそれほど長い時間ではなかった。
そう、それはまさに一瞬の出来事だった。
わたし達は、ただ呆然としたのだった。
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