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第二章 異世界というものは

No.39

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「ロドさん、あれなあに?」
「ん?ああ、ポカトリスだな。」

なんじゃそりゃ。この世界、微妙に似た名前なんだけど、『ぽかとりす』に似たものはない。
まん丸で真っ黒な塊。でも、なんか幸せな予感がするよ。

「あれはなあ……海で取れるらしいんだが……『美味い』という評判で入ったらしいんだが、売れんらしい。まあ、仕入れたのは最近なんだがな。
腐りにくいし、食べたら美味いと行商人に勧められたらしいが……調理法を聞き忘れたらしい。」

調理法……それはまた、絶対に必要なことを聞き忘れたねえ。
というか……ロドリヌスって、割と色々と詳しいなあ。
城で引きこもっていたとは思えない。
ミリオンは、元々王子だったこともあって、国のことなら『おまかせ♡』って感じだったけどね。

「ふーん。おじさん、これ触っていい?」
「ん?ああ、かまわんよ。……なんで仕入れちまったかなあ……。」

おじさんは肩を落としてため息をついた。
そんなに売れないのか。
手にとって、匂いを嗅ぐ。
あっ!
こ、これはっ!
欲しかったやつじゃない?ねえ?
そう……海苔!海苔だよ!たぶん。
いわゆる岩海苔を団子に固めた感じ?
一個買ってみようかな?だって、でっかいんだもん。

「おじさん、これ一個いくら?」
「は?か、買うのか?」
「うん。」
「もしかして、調理方法を知ってるのか?」
「ううん?でも、試してみたいかな?って。」
「……そうか。」

がっくりとうなだれてしまった。
そんなに困ってるんだね。

「も、もしだ、食べ方がわかったら教えてくれるってなら、10クルーでいいよ。」

え。ラッキー!

「え!本当?じゃ、失敗したら困るから二つください。」
「ほいよ。背中のバックでいいかい?」
「うん、ギルドカードでいい?」
「かまわんよ。ちょっとまってな。」
「はい。」

奥から青い玉を持ってきた。

「うちは、あんまりギルドカードの支払いが少ないんで、奥に置いてあんだよ。」

ピッとかざすと残りの表示がえらい金額になっていた。
……あれ?
見間違え?

「たぶん、今回の遠征分も入ったんだろ?」
「でも、すごいよ?」
「………嬢ちゃん、裏道に一人では行くなよ?」

とお店のおじさんにまで心配されてしまった。
それほど、額がえらいことに。
とても口に出せないよ!

「まあ、まだロド様の資産には追いついてないから大丈夫よ。」

え?ロドリヌスって、どんだけ金持ちなんだ。

「あれ?じゃあ、ママ。二人分合わせたら……カフェできない?」
「できそう……。」

でもなあ、まだまだ『冒険』したいなあ。
というか、誰にも負けないくらい強くなりたいし。
別の国にも行ってみたいなあ。
あっ、奴隷なしの国にね。
怖いから。

「カフェは、趣味と実益を兼ねて始めたいから、もうすこしねえ。」
「そうだよね!まだ、この国に定住するかも決めてないしね!」
「うん。」

「「エッ!」」

え?いや、なんで二人ともびっくり顔?
普通に、ずっといるとは限んないじゃん?

「まままて、まて。」

いや、そんな慌てる必要なくない?

「い、一緒に暮らすと……。」
「それは誤解を招くんじゃない?下宿だよね?下宿ってことは仮の家じゃん。」

ずっと、下宿はしないよね?

「だよね?ママといつかカフェやろうか?ってなったんだよね。
だから、いつかは出てくでしょう。みんなだって、そうなんじゃないかな?」
「まあ、当分は居るけどね。
何せ……この世界どころか、この国もよく知らないし。
ただ、やっぱり嫌なことばかりあればねえ?
別のとこもいっかなあ?
な ん て ?」

ふふふ、これは言わば脅しのようなものかもしれない。
ロドリヌスとミリオンの恋心?を利用するという、少々罪悪感はわくが……遠回しに(なっていないかもしれないけど。)あんまり、王族てっぺんが五月蝿いなら、この国から出て行くぞって言ってるのだ。
だって、権力者に囲われたりは嫌だもんね。
せっかく、強くなったんだもの。私らは自由に生きたい。
まあ、今は自由というか、不便というか……だけどね。
そんな不確かな未来より、私は早く帰って『海苔』ぽいコイツをなんとかしてみたい。

「だが、なあ……俺が守るからじゃ駄目なのか?」

ロドリヌスがそう言いながら、また私を抱き上げる。
なんで、そう抱っこしたがるかな?
私の頭は『海苔』に気にとられているのでそのまま抱っこされても、気にならなかった。

「んー、そもそもずっと守られるのもね?」

と奏歌とミリオン、私を抱っこしたロドリヌスが話をまだしている間……私は新たな食材に頭がいっぱいであった。
だって、海苔だよ!海苔!
あんなに欲しかった海苔!
これが、興奮せずにいられるかってんだい!
なあ、はっつぁんよ!
……誰だよ、はっつぁんて。
はあ、海苔ですよ。
海苔段々食べたいなあ。
美味しいよねー。海苔の下に昆布の佃煮もよいしー、海苔……どーやったら海苔として使えるかなあ。
の~~~り~~~と醤油があれば、ご飯がお い し い!

パコンッ。
と私の頭で軽く音がした。
どうやら、奏歌に叩かれたらしい。

「もう!ママはっ!話をしてるんだから、ちゃんと参加してよ!」
「まったく……よ。あなたたちのことなのに。」
「ニマニマしてさ。もう。」
「えー、だってさ。『いつかは』の話をずっとしてても平行線でしょう?私はめんどくさいのが、なければいいなって、くらいだよ。
でも、まあ、いつかは出てくよ。それは確実。
でも、当分はいるし。それが一か月なのか?はたまた、何十年後かはわからないけどねー。まあ、何もなければね?って感じ?
もう、そんな非産出的な話ばっかじゃなくて!美味しいものさーがーそーよー!」

と私がお店を指さすと、やれやれって感じでロドリヌスが私を抱いたままで歩きだす。

「……まあ、そうね。まだ、来ない未来を話してもね。」
「だな。だが、焦っちまったよ。」
「ふふふ。ロド様もあの子にかかると形無しよねー。」
「まあな。惚れた弱みって奴だな。……まあ、そんなことも初めてだからな。なかなか悪くはないさ。」
「そうね。あたしもそう思うわ。」

ぶつぶつと二人がまだ何か言ってましたが、キーコーエーナーイ。


ーーーーーーーーーーーーー

「送ってくれてありがとう。」
「ありがとうございます。」
「おう。また、な。」
「……ギルドでね!」
「おう。」
「じゃ、ゆっくり休んでね。」
「はーい。おやすみー。」

あれから、買い物をたっぷりして夕ご飯を一緒にと言われ、まあいっかと一緒に食べてきました。
あっ、結局ティアのこと言い忘れた。
明日でいっか。
たぶん、また、絶対に……ここまで迎えに来るよねえ?
と奏歌と笑いながら、お風呂を浴びて(浸かりたい……)、クリーンしてから寝ました。

明日も朝一からお弁当作るぞー!
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