65 / 124
第二章 異世界というものは
No.39
しおりを挟む「ロドさん、あれなあに?」
「ん?ああ、ポカトリスだな。」
なんじゃそりゃ。この世界、微妙に似た名前なんだけど、『ぽかとりす』に似たものはない。
まん丸で真っ黒な塊。でも、なんか幸せな予感がするよ。
「あれはなあ……海で取れるらしいんだが……『美味い』という評判で入ったらしいんだが、売れんらしい。まあ、仕入れたのは最近なんだがな。
腐りにくいし、食べたら美味いと行商人に勧められたらしいが……調理法を聞き忘れたらしい。」
調理法……それはまた、絶対に必要なことを聞き忘れたねえ。
というか……ロドリヌスって、割と色々と詳しいなあ。
城で引きこもっていたとは思えない。
ミリオンは、元々王子だったこともあって、国のことなら『おまかせ♡』って感じだったけどね。
「ふーん。おじさん、これ触っていい?」
「ん?ああ、かまわんよ。……なんで仕入れちまったかなあ……。」
おじさんは肩を落としてため息をついた。
そんなに売れないのか。
手にとって、匂いを嗅ぐ。
あっ!
こ、これはっ!
欲しかったやつじゃない?ねえ?
そう……海苔!海苔だよ!たぶん。
いわゆる岩海苔を団子に固めた感じ?
一個買ってみようかな?だって、でっかいんだもん。
「おじさん、これ一個いくら?」
「は?か、買うのか?」
「うん。」
「もしかして、調理方法を知ってるのか?」
「ううん?でも、試してみたいかな?って。」
「……そうか。」
がっくりとうなだれてしまった。
そんなに困ってるんだね。
「も、もしだ、食べ方がわかったら教えてくれるってなら、10クルーでいいよ。」
え。ラッキー!
「え!本当?じゃ、失敗したら困るから二つください。」
「ほいよ。背中のバックでいいかい?」
「うん、ギルドカードでいい?」
「かまわんよ。ちょっとまってな。」
「はい。」
奥から青い玉を持ってきた。
「うちは、あんまりギルドカードの支払いが少ないんで、奥に置いてあんだよ。」
ピッとかざすと残りの表示がえらい金額になっていた。
……あれ?
見間違え?
「たぶん、今回の遠征分も入ったんだろ?」
「でも、すごいよ?」
「………嬢ちゃん、裏道に一人では行くなよ?」
とお店のおじさんにまで心配されてしまった。
それほど、額がえらいことに。
とても口に出せないよ!
「まあ、まだロド様の資産には追いついてないから大丈夫よ。」
え?ロドリヌスって、どんだけ金持ちなんだ。
「あれ?じゃあ、ママ。二人分合わせたら……カフェできない?」
「できそう……。」
でもなあ、まだまだ『冒険』したいなあ。
というか、誰にも負けないくらい強くなりたいし。
別の国にも行ってみたいなあ。
あっ、奴隷なしの国にね。
怖いから。
「カフェは、趣味と実益を兼ねて始めたいから、もうすこしねえ。」
「そうだよね!まだ、この国に定住するかも決めてないしね!」
「うん。」
「「エッ!」」
え?いや、なんで二人ともびっくり顔?
普通に、ずっといるとは限んないじゃん?
「まままて、まて。」
いや、そんな慌てる必要なくない?
「い、一緒に暮らすと……。」
「それは誤解を招くんじゃない?下宿だよね?下宿ってことは仮の家じゃん。」
ずっと、下宿はしないよね?
「だよね?ママといつかカフェやろうか?ってなったんだよね。
だから、いつかは出てくでしょう。みんなだって、そうなんじゃないかな?」
「まあ、当分は居るけどね。
何せ……この世界どころか、この国もよく知らないし。
ただ、やっぱり嫌なことばかりあればねえ?
別のとこもいっかなあ?
な ん て ?」
ふふふ、これは言わば脅しのようなものかもしれない。
ロドリヌスとミリオンの恋心?を利用するという、少々罪悪感はわくが……遠回しに(なっていないかもしれないけど。)あんまり、王族が五月蝿いなら、この国から出て行くぞって言ってるのだ。
だって、権力者に囲われたりは嫌だもんね。
せっかく、強くなったんだもの。私らは自由に生きたい。
まあ、今は自由というか、不便というか……だけどね。
そんな不確かな未来より、私は早く帰って『海苔』ぽいコイツをなんとかしてみたい。
「だが、なあ……俺が守るからじゃ駄目なのか?」
ロドリヌスがそう言いながら、また私を抱き上げる。
なんで、そう抱っこしたがるかな?
私の頭は『海苔』に気にとられているのでそのまま抱っこされても、気にならなかった。
「んー、そもそもずっと守られるのもね?」
と奏歌とミリオン、私を抱っこしたロドリヌスが話をまだしている間……私は新たな食材に頭がいっぱいであった。
だって、海苔だよ!海苔!
あんなに欲しかった海苔!
これが、興奮せずにいられるかってんだい!
なあ、はっつぁんよ!
……誰だよ、はっつぁんて。
はあ、海苔ですよ。
海苔段々食べたいなあ。
美味しいよねー。海苔の下に昆布の佃煮もよいしー、海苔……どーやったら海苔として使えるかなあ。
の~~~り~~~と醤油があれば、ご飯がお い し い!
パコンッ。
と私の頭で軽く音がした。
どうやら、奏歌に叩かれたらしい。
「もう!ママはっ!話をしてるんだから、ちゃんと参加してよ!」
「まったく……よ。あなたたちのことなのに。」
「ニマニマしてさ。もう。」
「えー、だってさ。『いつかは』の話をずっとしてても平行線でしょう?私はめんどくさいのが、なければいいなって、くらいだよ。
でも、まあ、いつかは出てくよ。それは確実。
でも、当分はいるし。それが一か月なのか?はたまた、何十年後かはわからないけどねー。まあ、何もなければね?って感じ?
もう、そんな非産出的な話ばっかじゃなくて!美味しいものさーがーそーよー!」
と私がお店を指さすと、やれやれって感じでロドリヌスが私を抱いたままで歩きだす。
「……まあ、そうね。まだ、来ない未来を話してもね。」
「だな。だが、焦っちまったよ。」
「ふふふ。ロド様もあの子にかかると形無しよねー。」
「まあな。惚れた弱みって奴だな。……まあ、そんなことも初めてだからな。なかなか悪くはないさ。」
「そうね。あたしもそう思うわ。」
ぶつぶつと二人がまだ何か言ってましたが、キーコーエーナーイ。
ーーーーーーーーーーーーー
「送ってくれてありがとう。」
「ありがとうございます。」
「おう。また、明日な。」
「……ギルドでね!」
「おう。」
「じゃ、ゆっくり休んでね。」
「はーい。おやすみー。」
あれから、買い物をたっぷりして夕ご飯を一緒にと言われ、まあいっかと一緒に食べてきました。
あっ、結局ティアのこと言い忘れた。
明日でいっか。
たぶん、また、絶対に……ここまで迎えに来るよねえ?
と奏歌と笑いながら、お風呂を浴びて(浸かりたい……)、クリーンしてから寝ました。
明日も朝一からお弁当作るぞー!
0
お気に入りに追加
1,411
あなたにおすすめの小説
貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた
佐藤醤油
ファンタジー
貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。
僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。
魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。
言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。
この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。
小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。
------------------------------------------------------------------
お知らせ
「転生者はめぐりあう」 始めました。
------------------------------------------------------------------
注意
作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。
感想は受け付けていません。
誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。
(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」
音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。
本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。
しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。
*6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。
あの、神様、普通の家庭に転生させてって言いましたよね?なんか、森にいるんですけど.......。
▽空
ファンタジー
テンプレのトラックバーンで転生したよ......
どうしようΣ( ̄□ ̄;)
とりあえず、今世を楽しんでやる~!!!!!!!!!
R指定は念のためです。
マイペースに更新していきます。
ちっちゃくなった俺の異世界攻略
鮨海
ファンタジー
あるとき神の采配により異世界へ行くことを決意した高校生の大輝は……ちっちゃくなってしまっていた!
精霊と神様からの贈り物、そして大輝の力が試される異世界の大冒険?が幕を開ける!
魔境に捨てられたけどめげずに生きていきます
ツバキ
ファンタジー
貴族の子供として産まれた主人公、五歳の時の魔力属性検査で魔力属性が無属性だと判明したそれを知った父親は主人公を魔境へ捨ててしまう
どんどん更新していきます。
ちょっと、恨み描写などがあるので、R15にしました。
45歳のおっさん、異世界召喚に巻き込まれる
よっしぃ
ファンタジー
2月26日から29日現在まで4日間、アルファポリスのファンタジー部門1位達成!感謝です!
小説家になろうでも10位獲得しました!
そして、カクヨムでもランクイン中です!
●●●●●●●●●●●●●●●●●●●●
スキルを強奪する為に異世界召喚を実行した欲望まみれの権力者から逃げるおっさん。
いつものように電車通勤をしていたわけだが、気が付けばまさかの異世界召喚に巻き込まれる。
欲望者から逃げ切って反撃をするか、隠れて地味に暮らすか・・・・
●●●●●●●●●●●●●●●
小説家になろうで執筆中の作品です。
アルファポリス、、カクヨムでも公開中です。
現在見直し作業中です。
変換ミス、打ちミス等が多い作品です。申し訳ありません。
貞操逆転世界の温泉で、三助やることに成りました
峯松めだか(旧かぐつち)
ファンタジー
貞操逆転で1/100な異世界に迷い込みました
不意に迷い込んだ貞操逆転世界、男女比は1/100、色々違うけど、それなりに楽しくやらせていただきます。
カクヨムで11万文字ほど書けたので、こちらにも置かせていただきます。
ストック切れるまでは毎日投稿予定です
ジャンルは割と謎、現実では無いから異世界だけど、剣と魔法では無いし、現代と言うにも若干微妙、恋愛と言うには雑音多め? デストピア文学ぽくも見えるしと言う感じに、ラブコメっぽいという事で良いですか?
世界最強の強くてニューゲーム
ゼクト
ファンタジー
とある男はあるゲームが大好きだった。
そんな男が、画面に映し出された確認ボタンの内容を一切見ないで、始めてしまったことによって始まる、1つの物語…
ある事情から世界で一番このゲームをやりこんでいる男による、その世界での最強物語、ゲームとの違いも感じる中で彼はいったい何を目指すのだろうか?
R15は保険
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる